【コラム】NATO、スウェーデンの加盟でバルト海まで対ロシア包囲網構築
中央日報/中央日報日本語版2024.03.13 12:03

スウェーデンのクリステンション首相が7日、米ワシントンDCで北大西洋条約機構(NATO)加盟書類をブリンケン米国務長官に手渡した。これによりスウェーデンはフィンランドに続きNATO32番目の加盟国となった。続けて11日にはベルギーのブリュッセルにあるNATO本部にスウェーデンの国旗が掲揚された。スウェーデンのNATO加盟は約200年にわたりスウェーデンが堅持してきた核心安全保障政策である「中立路線」の放棄を意味する。それだけ歴史的事件だ。

スウェーデンはスイスやオーストリアのような永世中立国ではない。永世中立国というのは他国の戦争に参加しない義務を負担する一方、他国によって独立と領土保存が「条約によって」保障された国を意味する。スウェーデンは条約によって中立が保障された国ではない。スウェーデンの中立はスウェーデン自らが明らかにした中立路線だ。すなわち、スウェーデンは軍事同盟に加担し戦時に望まない戦争に引きずり込まれるのを避けるために「戦時中立に向けた平時非同盟」を原則とする実利的な安全保障政策でこれまで中立路線を標榜してきた。戦争や冷戦時代の東西理念対立でどちら側にも加担しておらず、そのおかげで2度の世界大戦の惨禍を避けることができた。

◇ロシアの脅威にさらされたスウェーデン

スウェーデンが中立路線を取った最も大きな背景は、強大国の間に置かれた地政学的立地だ。その中でもロシアはスウェーデンと地理的に近くにある最も脅威となる強大国だ。スウェーデン領土であるゴットランド島はロシアのバルト艦隊司令部があるロシアの飛び地カリーニングラードからわずか350キロメートルしか離れていない近距離だ。

ロシアの存在によるスウェーデンとフィンランドの潜在的な安全保障不安は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に現実的な脅威となった。両国はこれに対する迅速な対応としてNATO軍事同盟への加入という確実な「安全保障保険」を選択した。NATO加盟前にもスウェーデンはNATO加盟国の軍隊と合同軍事演習をするなど緊密な軍事協力関係を維持してきた。

NATO関係者らはスウェーデンを「影のメンバー」と呼ぶほどだった。スウェーデン国民も戦争が勃発すれば加盟国ではなくてもNATOの兵力がスウェーデンを支援するだろうという信頼に一寸の疑いもないほどだった。したがってNATOに加盟しても軍事協力関係に大きな変化は予想されないが、集団安全保障体制であるNATO加盟を契機に、スウェーデンは有事の際にNATOから軍事的支援を受ける権利を法的に保証される点は明らかに変わることだ。

今後のカギは果たしてスウェーデンが自国領土に外国軍の駐留や核兵器配備まで許容するかどうかだ。これはスウェーデンとしては極めて敏感な問題のため、すでに内部で警戒と懸念の声が出ている。もしスウェーデンに外国軍の配置や核兵器配備がなされれば、ロシアにとっては耐え難い安全保障への脅威になるだろう。

NATOは第2次世界大戦後に、ソ連に対抗するため米国・英国・フランスを中心に作った軍事同盟だ。NATOは1949年の創設当時12の加盟国で始めたが、1991年のソ連崩壊を契機に旧ソ連の衛星国が大挙加盟し30カ国に拡大した。NATOの地理的範囲も次第に東進し、ロシアと国境を接する構図になった。2年前にウクライナを侵攻したロシアの名分の一つもNATOの東進への対応だった。スウェーデンとフィンランドのNATO加盟によりバルト海はもう「NATOの湖」になった。地中海に続きバルト海までロシアを囲むNATOの包囲網が構築されたという評価が出ている。

◇NATO加盟国、国防費増額ラッシュ

ロシアのウクライナ侵攻により安全保障に対する警戒心が高まった欧州のNATO加盟国は自国の国防費増額に先を争って乗り出している。NATOによると、昨年国防費が国内総生産(GDP)の2%を超える加盟国は11カ国だったが、今年は18カ国に増えた。ドイツのピストリウス国防相は最近行われたミュンヘン安全保障会議で、ドイツは国防費をGDPの2%を超え3.0~3.5%まで増額する計画であることを明らかにした。さらにドイツでは独自の核武装の必要性まで提起されている。

このようにロシアのウクライナ侵攻がもたらした結果はNATOのロシア包囲網拡大と欧州諸国の警戒心急増にともなう国防費増額として現れた。トランプ前米大統領がこれまで強く要求してきた欧州諸国の国防費増額は逆説的にもロシアのウクライナ侵攻一発で解決される様相だ。結局プーチン大統領は戦後に不利な損益計算書を手にすることになるだろう。

NATOの東進でロシアが孤立することが世界平和に向け望ましいのかに対しては意見が入り乱れている。一部ではNATOとロシアが不可侵条約を結び、現在の境界線からこれ以上東進しないことが世界平和に向け必要なことではないかとの主張も出ている。

グリペン戦闘機、早期警報統制機、最先端中小型潜水艦を生産する世界的な防衛産業事業者のサーブを保有するスウェーデンのNATO加盟は欧州の軍事力強化に確実に寄与するだろう。スウェーデンは2度の米朝首脳会談を仲介するなど伝統的に国際紛争仲裁で先に立ってきた国だ。スウェーデンのNATO加盟がNATOの軍事力増強にとどまらず、NATOとロシアの間の平和仲裁の役割にまでつながればという望みだ。

◇韓米同盟に自強力も育てなくては

米国はウクライナに対する支援を通じてウクライナがロシアに対抗できるよう支援すべきというのが基本の立場だ。
しかし米国は一方的にすべての負担を抱え込むことは望まない。最小限今回の戦争の直接的当事者に当たる欧州が米国よりも多くの費用を負担しなければならないという立場だ。もしトランプ前大統領が11月の米国大統領選挙で勝利すれば、こうした声がさらに強くなるだろうということは火を見るより明らかだ。

米国が「世界の警察」役割を放棄して米国の利益を優先に考えるという「米国優先主義(アメリカファースト)」が大勢になって久しい。米国優先主義は韓半島(朝鮮半島)の状況にも決して肯定的ではない。北朝鮮が露骨に核兵器使用の威嚇と恐喝を日常的に行っている。北朝鮮の脅威には血盟である米国との同盟強化で対処し、別の一方では米国の自国優先主義にも賢く対処する案を準備する必要がある。国際政治という冷酷な現実の中で生き残りに向けては韓米同盟の強化と同時に、核を持っている北朝鮮に対応できるそれなりの自強力も強化しなければならない。韓国の外交安全保障当局の精巧な戦略と対策が切実な時点だ。

李汀圭(イ・ジョンギュ)/元駐スウェーデン韓国大使

(引用終わり)
「米国優先主義(アメリカファースト)」など些末な問題だ。
日本はNATOと組むべきだ。