腐敗と高官の粛清で遠のいた台湾有事

台湾有事は腐敗と高官の粛清で遠のいた…「台湾の孔明」が語る2024年の中国軍事
文春オンライン
24/2/9(金) 17:12配信

 中国海警局の艦船が今年1月、尖閣諸島周辺を飛行する自衛隊機に対して、退去を求める警告を複数回おこなっていたことがわかった。これは習近平政権の強硬な対外姿勢を反映したものとされ、日本では中国に対する警戒感が改めて高まっている。

 いっぽう、中国のより強い軍事的脅威にさらされているのが台湾(中華民国)だ。だが、中華圏の軍事の伝統を引き継ぐ台湾では、「敵」の情勢を徹底して分析することで自国を守らんとする、三国志さながらの「軍師」たちも活動している──。約1年前、私はそんな一人に話を聞いた。

 空港をミサイルで破壊して…「台湾の孔明」が語る中国の侵攻シナリオと実際の可能性 

 記事に登場した人物は、人民解放軍研究を専門とする軍事学者で、しばしば台湾の国防白書の顧問委員にも名を連ねる淡江大学国際事務與戦略研究所助教の林穎佑(Ying Yu, Lin)氏だ。今年1月、台湾総統選の取材のために現地を訪れた私は、彼に改めて現在の軍事情勢を尋ねてみることにした。

中国、ミサイルに水を注入?
──仮に人民解放軍が台湾を攻撃する場合、最も大きな鍵になる兵器がミサイルです。しかし、今年1月上旬、中国の戦略ミサイル部隊の運用について興味深い報道がありました。米国情報機関関係者の分析によると、燃料の代わりに水がミサイルに注入されていた事態があったといいます。

林 この報道については、個人的にはちょっと話が誇張されているような印象を受けています。ただ、ここで重要なのは「ミサイルに水注入」というインパクトの強いエピソードそれ自体よりも、ロケット軍の内部で燃料の転売などの行為がおこなわれていたとみられることです。

──中国のロケット軍は、汚職によって正常に機能していなかった可能性がある。

林 はい。ちなみに中国における戦略ミサイル部隊はもともと「第二砲兵部隊」と呼ばれてきましたが、習近平政権下の軍改革で2015年12月31日に「ロケット軍」(火箭軍)と改称され、人員や予算が大幅に強化されました。

 ところが2022年8月、中国が台湾海峡に向けて(アメリカのペロシ下院議長の訪台に抗議して)大規模なミサイル演習をおこなった際、人民解放軍側は16発の発射を予定していたとみられるにもかかわらず、台湾側では11発の発射しか確認できなかった。つまり、発射予定のミサイルの3分の1は機能しなかったようなのです。

 理由は軍の腐敗と、ミサイルの「稼働率」の低さでした。もちろん、習近平はこの失敗を重く受け止めたと考えられます。思うようにミサイルを飛ばせないならば、台湾併合なんてできませんからね。ゆえに進められたのが、軍の腐敗の摘発と責任者の交代です。

中国ロケット軍で大粛清が発生
──そういえば、ミサイル演習が「失敗」した翌年となる昨年7月、中国ではロケット軍の司令官が就任からわずか1年半で交代する異例の人事が発表されていますね。

林 そうです。前任のロケット軍司令だった李玉超、副司令の劉光斌らはいずれも腐敗を理由に解任されたとされており、さらには過去に副司令を務めた張振中が失脚、呉国華が「病死」しています。呉国華の死は実際は自殺だったとメディアでは報じられていますね。

──すさまじい大粛清ですね……。

林 ええ。しかし、その後の新人事にも問題がありそうなのです。李玉超に代わり司令官になった王厚斌は、海軍の人事畑の出身。過去に実戦部隊を指揮した経験はおそらくなく、核兵器や原子力潜水艦に関連する部署にもいなかったとみられる人物です。

 また、ロケット軍上層部は司令官と同時に政治委員も交代したのですが、こちらで新たに抜擢されたのは、空軍出身の徐西盛でした。彼はもともと福州の基地にいた人物で、かつての「上司の上司」にあたる許其亮(2007~2012年に空軍司令官)は、福建省勤務時代の習近平と一緒に軍の仕事をした経験があります。すなわち、王厚斌にせよ徐西盛にせよ、戦略ミサイルのプロパーではないにもかかわらず、習近平が個人的に信頼する人物を要職につけた形です。

──企業に置き換えると、営業生え抜きの管理職をお家騒動で大量にクビにしたあとで、社長が自分に懐いている人事部の部長を営業本部長に充てるような形ですね。

林 「先求紅,再求専」(政治的正しさを専門性に優先させる)という人事です。現在の人民解放軍のロケット軍は、第二次大戦初期のソ連や、文化大革命直後の中越戦争(1979年)での中国の軍隊とやや近い構図がある。つまり、経験豊かな将校を大粛清したことで、パフォーマンスが大きく落ちていると思われます。

電撃解任された国防部長の素顔
──昨年10月には、国家側の軍事のトップである李尚福国防部長(防衛大臣に相当)も、就任からわずか7カ月で解任されています。これは中国の軍事戦略にどう影響しそうですか?

林 中国の国防部長は指揮権がなく、軍事外交を担う担当者です。なので李尚福の解任それ自体について、たとえば台湾に対する方針転換などの影響は考えにくい。

 ちなみに、2023年6月にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議で実際に李尚福と接した人の話では、彼は覇気のあるタイプではなく、中国の軍人にはめずらしい人物だったようです。航空宇宙分野の研究者出身で、学究肌だったんですよ。外国の記者の質問にもあまり答えられていなかったようです。

 彼の解任については、派閥の要素が絡む政治的背景もいろいろ伝えられていますが、確たる証拠がないので私はなんとも言えません。ただ、李尚福の解任後に任命された董軍という人物は、注目すべきです。

──経歴を見ると、董軍は海軍出身なのですね。

林 はい。中国とロシアは2015年に合同海上演習をおこなっているのですが、董軍はこの演習の中国側責任者だった人物で、ロシアと密接に交流した経歴があるんです。また、2020年に中国はパキスタンとの間では初となる合同海上演習をおこなっていて、董軍はこちらでも責任者を務めていました。加えて2021年まで、彼は米中間の戦区レベル対話にも関わっていた可能性が高い。

──ロシアもアメリカも知る海軍大将(中国での呼称は上将)ということですね。

林 軍事外交を担う人物としては、董軍のほうが李尚福よりも適性があります。また、人民解放軍の軍隊としてのありかたは、もともとソ連の影響が強いですから、ロシアに強い董軍は重要なのです。ウクライナ戦争の戦況も、人民解放軍にとっては重要な関心事ですからね。

バイデン政権を刺激できない中国
──人事の話をうかがっていても、中国はまだ「台湾有事」を戦う体制ではないように感じます。

林 そう思いますよ。1年前にもお話しした通り、中国は2016年以来の軍制改革の途上にありますし、人事上のごたごたもありますからね。

 今回の総統選挙で頼清徳が勝った場合(注.取材は選挙前におこなった)も、中国は台湾に向けて大規模なミサイル演習などは行わない可能性が高いでしょう。今年4月以降に一定の演習は予定されていそうですが、こちらも必ずしも大規模なものにはならないと予想しています。

──理由は、前回の軍事演習での課題がまだ解決していないからですか。

林 それに加えて、11月にはアメリカ大統領選があります。いま、中国が派手な軍事演習をおこなうと、バイデン政権による何らかの厳しい対応を招く可能性が高い。バイデンとしては、いま中国の挑発を静観すれば、アメリカ国内で民主党が弱腰であるという世論が出てしまい、選挙戦で不利になります。なので、強い対応を取らざるを得ない。中国もそれは望みませんので、いまは無理押しをする時期ではないと判断すると考えられます。

◇◇◆◆◇◇

 近年、日本では台湾有事に関連する言説がかまびすしい。だが、2022年8月に中国が台湾近海で大規模なミサイル演習を行った事実と、昨年夏以降に一部の軍高官の失脚を含めた盛んな人事異動がおこなわれている事実は、それぞれ別個のニュースとして報じられがちである。

 ただ、台湾側の「軍師」である林穎佑氏は、この二つの事件を結びつけて分析する立場だ。

 彼の話を簡単にまとめれば、2015年からロケット軍に力を入れてきた人民解放軍は、2022年8月に台湾を恫喝するためにその実力を示そうとしたものの、蓋を開けてみれば大量の問題点が露呈。そこで大量の責任者を処分したのはいいが、後任人事では戦略ミサイル分野の専門性がない軍人を登用しており、すぐには戦える状態にない。しかも国際情勢も、中国が軽挙妄動を行いにくい状況になっている。

 もちろん、習近平が判断力を失えば、いかに無理のある状況でも軍事行動は起きる。だが、やはり全体的な趨勢としては、2024年の「台湾有事」の危険性は数年前よりも一層低下したと考えていいだろう。

安田 峰俊

(引用終わり)
日本が危機になるとしたら、国際的に孤立する時だけだ。
日米戦争で日本が負けたのは、日英同盟を無力化されたためだ。
米国は英国から覇権を奪うために目障りな日英同盟を破棄させた。

どうせ米国と戦うのなら、英国との協力関係を維持すべきであった。
米国の策略に載せられた段階で既に敗れていた。日本も英国もだ。

それを援用するのなら、日米同盟、日英同盟は中露にとって天敵である。
NATOもだ。
プーチンのウクライナ侵攻が失敗したのもNATOという世界最大の軍事組織が上手く機能したからだ。
モスクワ侵攻こそ行えないが、ウクライナ軍を支えるには十分である。

今、日本軍が千島樺太カムチャツカ半島方面に派兵した場合、今の中露に十分な対抗手段がない。
オホーツク海の原潜艦隊や重爆撃機は日米に蹴散らされるだけだ。
露西亜に不利なのは、人口も軍需産業も欧州側にあるからだ。
だから、対NATO戦略が問題になる。
あくまでロシアが米国と対立するというのなら、北太平洋だけでなく日本海、オホーツク海も失う。
平時ならともかく戦時には日米の標的、訓練目標になるだけだ。

現在の人民解放軍は、第二次大戦初期のソ連や、文化大革命直後の中越戦争(1979年)での人民解放軍とやや近い。はっきり言えば弱い。

今の人民解放軍は台湾周辺にミサイルを撃ち込むぐらいはできるが、台湾島を制圧する力はない。
何といっても場所が悪い。
台湾海峡、バシー海峡は日本の海上交通の最終コーナーだ。
そんなところで軍事行動を起こされたらさっさと出張ってくる。
これは余り指摘されていないことだが、日米は東シナ海・黄海で中共の海上輸送を止められる。
それも北京天津青島上海などの中共の大都市が全て網羅される。

例えるなら、渤海・黄海・東シナ海を東京湾とするなら、房総半島(千葉県)が朝鮮半島、京浜地域が支那沿岸というところか。
渤海・黄海・東シナ海を扼するのが済州島、九州島、南西諸島群だ。
九州島、南西諸島には和製沿岸防衛連隊や400発のトマホークミサイルを搭載した日本艦隊、さらにほぼ同数のトマホークミサイルを搭載した米第七艦隊の巡洋艦・駆逐艦が展開する。

台湾有事となれば、日米政府は、黄海を海上封鎖すればいいだけのことだ。
実際に臨検する必要もない。日米政府が臨検宣言を下すだけで、中共の海上輸送は止まる。
少なくとも船舶保険、貿易保険の保険料が高騰するか、そもそも引き受け手がいなくなる。
台湾海峡封鎖への対抗策だから、黄海封鎖を止めてもらいたければ、台湾から手を引かせるまで。
つまり、台湾侵攻は最初から躓く。
さらにサイバー攻撃で中共国内の電力網、通信網、交通網を叩けば十分だろう。

中華人民共和国を経済的に追い込むことこそ、台湾・沖縄有事を阻止する最良の手段。経済破綻こそ、軍事力・継戦能力の低下・国内の不穏分子の跳梁跋扈を呼び起こすことができる。我々が人的犠牲を最小限にできる非常に効果的な攻撃方法。既に、西側社会による攻撃で、中華人民共和国の経済状況は数年前と反転している。たとえ、暴発したとしても、金がなければ、戦闘の継続は不能となる。ただでされ、国内に大量の兵器を抱えており、メンテナンスにも、異常に金をかけないといけない状態。一般の人民だけではなく、軍人や公務員に払う給料すらなくなっている現状で、暴発すら困難になりつつある。今のうちに、日本の国防力を向上させ、中華人民共和国とのデカップリングを進めて、経済的にさらに追い込まないといけない。

嘗てABCD経済包囲網の中で「ジリ貧になるよりドカ貧」を選んだ国がありましたが。


国共内戦時のエピソードって実に豊富で、最後は「亡國發財」とか言って、国民党軍は旧日本軍から鹵獲した兵器やアメリカ軍からの軍需物資を平気で八路軍に横流ししつつ戦闘には負けるけど師団長は私腹を肥やして儲かるというめちゃくちゃな話が結構あったらしい。

今の中国大陸の人民解放軍も文官も汚職は相当酷いので習近平政権は能力よりも自分への忠誠心重視で福建省閥が幅を利かせているので
もし金門島を政治的に攻略して人民解放軍が進駐してもまあ現地では色々あるだろうとは思います。
厦門も金門島も福建省人ですから。
それどころか福建省も台湾も閩南語系方言で親戚その他結び付きは深い所で
それでいて今の習近平政権というのは基本は福建省閥政権なので習近平政権の意図を超越して何が起こるか見当もつきません。
まあなかなかガチの激戦とかかなり起こりにくいでしょう。

先日台湾有事における日米共同作戦の敵性国家として中国を明記したことを防衛省が公表したことに対して中共が未だ沈黙を守っているのが腑に落ちない。

どんな些細なことでもギャー、ギャー騒ぎ立てる外交部の報道官が口をつぐんでいるのが不思議だ。今秋の米大統領選でトランプの再選の可能性が俄に高まってきたゆえ何か思惑でもあるのか?

もしバイデンが再選を望むなら国民の対中感情をくすぐる上で、台湾政策法よりも厳格な国権を発動して中国を締め上げるべきではないのか

と言いつつやはり内政問題に重きをおくのか?ただ一つ言えるのはたとえ中国国内経済が混乱しょうが低迷しよが習近平の腹一つだということ。自分の偉業、功績のためなら農村戸籍出身の若者の命などなんとも思わないはずだ。因みに日米共同作戦は数種の作戦行動が策定されているはずで、25年の演習ではその中の欺瞞作戦のお披露目か?

とにかく台湾とその周辺が平和でありますように。台湾周辺海域はシーレーンでこのエリアの平和と安全は日本や国際社会の平和と安全に大きな関係があります。

台湾には何としても生き残りアジアの民主主義の防波堤としての役割を担ってほしい。
バナナを買うとか、台湾企業の日本への移転を手伝うとかはやって欲しいです。

専門性がない軍人を登用したから、すぐには戦える状態にないかもしれないが…
その様な素人指揮官が上に居ると、無駄な衝突も起きるかも知れない。
警戒は必要。

記事中に出てくるようなレベルの高いアナリストがいるのは羨ましいね。
日本にもいるのだろうがシンクタンクなどに隠れてしまって、世論形成機能がいまいちな印象がある。

西太后と乾隆帝の頤和園みたいな放漫財政でも清帝国は日本と戦った。戦はそんな単純な話ではない。

第一、中国と日本の経済規模は3∶1。ネズミが多少喰った処でびくともしないよ。

常に軍拡と警戒を

逆の見方も存在するのは確か。つまり

『内なる不平不満を外へ発散』

というのは、古来より独裁国家の歩んで来た道でもある。
この場合、不平不満=経済問題を始めとる内政問題。
外への発散とは言うまでもなく台湾侵攻。

つまり習近平がいつその気になっても………

ナニが言いたいかと言えば、単純明快

 【 油断大敵 】

╮⁠(⁠╯⁠_⁠╰⁠)⁠╭╮⁠(⁠╯⁠_⁠╰⁠)⁠╭╮⁠(⁠╯⁠_⁠╰⁠)⁠╭

>淡江大学国際事務與戦略研究所助教の林穎佑

淡江大学は世界大学ランキングでは1000+位以後
狭い台湾ででも20位以後
一介普通の大学の助教って、台湾の孔明になれるの?
孔明を軽々しく使わないでほしい。

淡江大学、私大では一番難しいらしいですよ。でも、台湾は全体に日本以上に国立大学に人材が寄ってるので、よく評価しても、こっちでいうMARCHくらいの感じっぽいです。




>日本では中国に対する警戒感があらためて高まっている。
→ 警戒感はもちろんだが、近年は敵意の高まりが激しいと思う。

人類に腐敗が無いって事は無い。
特に、漢民族は確率が高いと歴史が証明されている。

腐敗は酷い。
金銭欲、権力欲、性欲この3つの欲が蔓延し腐敗が横行。

ウクライナ侵攻が無ければ危なかったかもしれないな。

トランプ政権復活したら
どうなるだろうか?

知合いの中国の知識人の方は軍の肩書(位)はおカネで買うのは昔からです、と言っておられました。

そして、一人っ子政策で自分の命が1番大事な気持ち、仕事が無く腹を満たす為に人民軍に入隊。ですから、祖国統一でバックに米国が付いている台湾進攻なんて、実際に勃発してイザ、バン!バン!、ドッカーン!となったら逃げ出す兵が多いはず、との事。大爆笑

自分の知合いの弟も、解放軍にどーしてもと誘われ、除隊後の就職も保証されたので2年間だけ入隊してましたよ。

まあ、日本人だろうが、中国人だろうが、戦争は嫌ですよ。
腐敗と高官の粛清で遠のいた台湾有事

台湾有事は腐敗と高官の粛清で遠のいた…「台湾の孔明」が語る2024年の中国軍事
文春オンライン
24/2/9(金) 17:12配信

 中国海警局の艦船が今年1月、尖閣諸島周辺を飛行する自衛隊機に対して、退去を求める警告を複数回おこなっていたことがわかった。これは習近平政権の強硬な対外姿勢を反映したものとされ、日本では中国に対する警戒感が改めて高まっている。

 いっぽう、中国のより強い軍事的脅威にさらされているのが台湾(中華民国)だ。だが、中華圏の軍事の伝統を引き継ぐ台湾では、「敵」の情勢を徹底して分析することで自国を守らんとする、三国志さながらの「軍師」たちも活動している──。約1年前、私はそんな一人に話を聞いた。

 空港をミサイルで破壊して…「台湾の孔明」が語る中国の侵攻シナリオと実際の可能性 

 記事に登場した人物は、人民解放軍研究を専門とする軍事学者で、しばしば台湾の国防白書の顧問委員にも名を連ねる淡江大学国際事務與戦略研究所助教の林穎佑(Ying Yu, Lin)氏だ。今年1月、台湾総統選の取材のために現地を訪れた私は、彼に改めて現在の軍事情勢を尋ねてみることにした。

中国、ミサイルに水を注入?
──仮に人民解放軍が台湾を攻撃する場合、最も大きな鍵になる兵器がミサイルです。しかし、今年1月上旬、中国の戦略ミサイル部隊の運用について興味深い報道がありました。米国情報機関関係者の分析によると、燃料の代わりに水がミサイルに注入されていた事態があったといいます。

林 この報道については、個人的にはちょっと話が誇張されているような印象を受けています。ただ、ここで重要なのは「ミサイルに水注入」というインパクトの強いエピソードそれ自体よりも、ロケット軍の内部で燃料の転売などの行為がおこなわれていたとみられることです。

──中国のロケット軍は、汚職によって正常に機能していなかった可能性がある。

林 はい。ちなみに中国における戦略ミサイル部隊はもともと「第二砲兵部隊」と呼ばれてきましたが、習近平政権下の軍改革で2015年12月31日に「ロケット軍」(火箭軍)と改称され、人員や予算が大幅に強化されました。

 ところが2022年8月、中国が台湾海峡に向けて(アメリカのペロシ下院議長の訪台に抗議して)大規模なミサイル演習をおこなった際、人民解放軍側は16発の発射を予定していたとみられるにもかかわらず、台湾側では11発の発射しか確認できなかった。つまり、発射予定のミサイルの3分の1は機能しなかったようなのです。

 理由は軍の腐敗と、ミサイルの「稼働率」の低さでした。もちろん、習近平はこの失敗を重く受け止めたと考えられます。思うようにミサイルを飛ばせないならば、台湾併合なんてできませんからね。ゆえに進められたのが、軍の腐敗の摘発と責任者の交代です。

中国ロケット軍で大粛清が発生
──そういえば、ミサイル演習が「失敗」した翌年となる昨年7月、中国ではロケット軍の司令官が就任からわずか1年半で交代する異例の人事が発表されていますね。

林 そうです。前任のロケット軍司令だった李玉超、副司令の劉光斌らはいずれも腐敗を理由に解任されたとされており、さらには過去に副司令を務めた張振中が失脚、呉国華が「病死」しています。呉国華の死は実際は自殺だったとメディアでは報じられていますね。

──すさまじい大粛清ですね……。

林 ええ。しかし、その後の新人事にも問題がありそうなのです。李玉超に代わり司令官になった王厚斌は、海軍の人事畑の出身。過去に実戦部隊を指揮した経験はおそらくなく、核兵器や原子力潜水艦に関連する部署にもいなかったとみられる人物です。

 また、ロケット軍上層部は司令官と同時に政治委員も交代したのですが、こちらで新たに抜擢されたのは、空軍出身の徐西盛でした。彼はもともと福州の基地にいた人物で、かつての「上司の上司」にあたる許其亮(2007~2012年に空軍司令官)は、福建省勤務時代の習近平と一緒に軍の仕事をした経験があります。すなわち、王厚斌にせよ徐西盛にせよ、戦略ミサイルのプロパーではないにもかかわらず、習近平が個人的に信頼する人物を要職につけた形です。

──企業に置き換えると、営業生え抜きの管理職をお家騒動で大量にクビにしたあとで、社長が自分に懐いている人事部の部長を営業本部長に充てるような形ですね。

林 「先求紅,再求専」(政治的正しさを専門性に優先させる)という人事です。現在の人民解放軍のロケット軍は、第二次大戦初期のソ連や、文化大革命直後の中越戦争(1979年)での中国の軍隊とやや近い構図がある。つまり、経験豊かな将校を大粛清したことで、パフォーマンスが大きく落ちていると思われます。

電撃解任された国防部長の素顔
──昨年10月には、国家側の軍事のトップである李尚福国防部長(防衛大臣に相当)も、就任からわずか7カ月で解任されています。これは中国の軍事戦略にどう影響しそうですか?

林 中国の国防部長は指揮権がなく、軍事外交を担う担当者です。なので李尚福の解任それ自体について、たとえば台湾に対する方針転換などの影響は考えにくい。

 ちなみに、2023年6月にシンガポールで開催されたアジア安全保障会議で実際に李尚福と接した人の話では、彼は覇気のあるタイプではなく、中国の軍人にはめずらしい人物だったようです。航空宇宙分野の研究者出身で、学究肌だったんですよ。外国の記者の質問にもあまり答えられていなかったようです。

 彼の解任については、派閥の要素が絡む政治的背景もいろいろ伝えられていますが、確たる証拠がないので私はなんとも言えません。ただ、李尚福の解任後に任命された董軍という人物は、注目すべきです。

──経歴を見ると、董軍は海軍出身なのですね。

林 はい。中国とロシアは2015年に合同海上演習をおこなっているのですが、董軍はこの演習の中国側責任者だった人物で、ロシアと密接に交流した経歴があるんです。また、2020年に中国はパキスタンとの間では初となる合同海上演習をおこなっていて、董軍はこちらでも責任者を務めていました。加えて2021年まで、彼は米中間の戦区レベル対話にも関わっていた可能性が高い。

──ロシアもアメリカも知る海軍大将(中国での呼称は上将)ということですね。

林 軍事外交を担う人物としては、董軍のほうが李尚福よりも適性があります。また、人民解放軍の軍隊としてのありかたは、もともとソ連の影響が強いですから、ロシアに強い董軍は重要なのです。ウクライナ戦争の戦況も、人民解放軍にとっては重要な関心事ですからね。

バイデン政権を刺激できない中国
──人事の話をうかがっていても、中国はまだ「台湾有事」を戦う体制ではないように感じます。

林 そう思いますよ。1年前にもお話しした通り、中国は2016年以来の軍制改革の途上にありますし、人事上のごたごたもありますからね。

 今回の総統選挙で頼清徳が勝った場合(注.取材は選挙前におこなった)も、中国は台湾に向けて大規模なミサイル演習などは行わない可能性が高いでしょう。今年4月以降に一定の演習は予定されていそうですが、こちらも必ずしも大規模なものにはならないと予想しています。

──理由は、前回の軍事演習での課題がまだ解決していないからですか。

林 それに加えて、11月にはアメリカ大統領選があります。いま、中国が派手な軍事演習をおこなうと、バイデン政権による何らかの厳しい対応を招く可能性が高い。バイデンとしては、いま中国の挑発を静観すれば、アメリカ国内で民主党が弱腰であるという世論が出てしまい、選挙戦で不利になります。なので、強い対応を取らざるを得ない。中国もそれは望みませんので、いまは無理押しをする時期ではないと判断すると考えられます。

◇◇◆◆◇◇

 近年、日本では台湾有事に関連する言説がかまびすしい。だが、2022年8月に中国が台湾近海で大規模なミサイル演習を行った事実と、昨年夏以降に一部の軍高官の失脚を含めた盛んな人事異動がおこなわれている事実は、それぞれ別個のニュースとして報じられがちである。

 ただ、台湾側の「軍師」である林穎佑氏は、この二つの事件を結びつけて分析する立場だ。

 彼の話を簡単にまとめれば、2015年からロケット軍に力を入れてきた人民解放軍は、2022年8月に台湾を恫喝するためにその実力を示そうとしたものの、蓋を開けてみれば大量の問題点が露呈。そこで大量の責任者を処分したのはいいが、後任人事では戦略ミサイル分野の専門性がない軍人を登用しており、すぐには戦える状態にない。しかも国際情勢も、中国が軽挙妄動を行いにくい状況になっている。

 もちろん、習近平が判断力を失えば、いかに無理のある状況でも軍事行動は起きる。だが、やはり全体的な趨勢としては、2024年の「台湾有事」の危険性は数年前よりも一層低下したと考えていいだろう。

安田 峰俊

(引用終わり)
日本が危機になるとしたら、国際的に孤立する時だけだ。
日米戦争で日本が負けたのは、日英同盟を無力化されたためだ。
米国は英国から覇権を奪うために目障りな日英同盟を破棄させた。

どうせ米国と戦うのなら、英国との協力関係を維持すべきであった。
米国の策略に載せられた段階で既に敗れていた。日本も英国もだ。

それを援用するのなら、日米同盟、日英同盟は中露にとって天敵である。
NATOもだ。
プーチンのウクライナ侵攻が失敗したのもNATOという世界最大の軍事組織が上手く機能したからだ。
モスクワ侵攻こそ行えないが、ウクライナ軍を支えるには十分である。

今、日本軍が千島樺太カムチャツカ半島方面に派兵した場合、今の中露に十分な対抗手段がない。
オホーツク海の原潜艦隊や重爆撃機は日米に蹴散らされるだけだ。
露西亜に不利なのは、人口も軍需産業も欧州側にあるからだ。
だから、対NATO戦略が問題になる。
あくまでロシアが米国と対立するというのなら、北太平洋だけでなく日本海、オホーツク海も失う。
平時ならともかく戦時には日米の標的、訓練目標になるだけだ。

現在の人民解放軍は、第二次大戦初期のソ連や、文化大革命直後の中越戦争(1979年)での人民解放軍とやや近い。はっきり言えば弱い。

今の人民解放軍は台湾周辺にミサイルを撃ち込むぐらいはできるが、台湾島を制圧する力はない。
何といっても場所が悪い。
台湾海峡、バシー海峡は日本の海上交通の最終コーナーだ。
そんなところで軍事行動を起こされたらさっさと出張ってくる。
これは余り指摘されていないことだが、日米は東シナ海・黄海で中共の海上輸送を止められる。
それも北京天津青島上海などの中共の大都市が全て網羅される。

例えるなら、渤海・黄海・東シナ海を東京湾とするなら、房総半島(千葉県)が朝鮮半島、京浜地域が支那沿岸というところか。
渤海・黄海・東シナ海を扼するのが済州島、九州島、南西諸島群だ。
九州島、南西諸島には和製沿岸防衛連隊や400発のトマホークミサイルを搭載した日本艦隊、さらにほぼ同数のトマホークミサイルを搭載した米第七艦隊の巡洋艦・駆逐艦が展開する。

台湾有事となれば、日米政府は、黄海を海上封鎖すればいいだけのことだ。
実際に臨検する必要もない。日米政府が臨検宣言を下すだけで、中共の海上輸送は止まる。
少なくとも船舶保険、貿易保険の保険料が高騰するか、そもそも引き受け手がいなくなる。
台湾海峡封鎖への対抗策だから、黄海封鎖を止めてもらいたければ、台湾から手を引かせるまで。
つまり、台湾侵攻は最初から躓く。
さらにサイバー攻撃で中共国内の電力網、通信網、交通網を叩けば十分だろう。

中華人民共和国を経済的に追い込むことこそ、台湾・沖縄有事を阻止する最良の手段。経済破綻こそ、軍事力・継戦能力の低下・国内の不穏分子の跳梁跋扈を呼び起こすことができる。我々が人的犠牲を最小限にできる非常に効果的な攻撃方法。既に、西側社会による攻撃で、中華人民共和国の経済状況は数年前と反転している。たとえ、暴発したとしても、金がなければ、戦闘の継続は不能となる。ただでされ、国内に大量の兵器を抱えており、メンテナンスにも、異常に金をかけないといけない状態。一般の人民だけではなく、軍人や公務員に払う給料すらなくなっている現状で、暴発すら困難になりつつある。今のうちに、日本の国防力を向上させ、中華人民共和国とのデカップリングを進めて、経済的にさらに追い込まないといけない。

嘗てABCD経済包囲網の中で「ジリ貧になるよりドカ貧」を選んだ国がありましたが。


国共内戦時のエピソードって実に豊富で、最後は「亡國發財」とか言って、国民党軍は旧日本軍から鹵獲した兵器やアメリカ軍からの軍需物資を平気で八路軍に横流ししつつ戦闘には負けるけど師団長は私腹を肥やして儲かるというめちゃくちゃな話が結構あったらしい。

今の中国大陸の人民解放軍も文官も汚職は相当酷いので習近平政権は能力よりも自分への忠誠心重視で福建省閥が幅を利かせているので
もし金門島を政治的に攻略して人民解放軍が進駐してもまあ現地では色々あるだろうとは思います。
厦門も金門島も福建省人ですから。
それどころか福建省も台湾も閩南語系方言で親戚その他結び付きは深い所で
それでいて今の習近平政権というのは基本は福建省閥政権なので習近平政権の意図を超越して何が起こるか見当もつきません。
まあなかなかガチの激戦とかかなり起こりにくいでしょう。

先日台湾有事における日米共同作戦の敵性国家として中国を明記したことを防衛省が公表したことに対して中共が未だ沈黙を守っているのが腑に落ちない。

どんな些細なことでもギャー、ギャー騒ぎ立てる外交部の報道官が口をつぐんでいるのが不思議だ。今秋の米大統領選でトランプの再選の可能性が俄に高まってきたゆえ何か思惑でもあるのか?

もしバイデンが再選を望むなら国民の対中感情をくすぐる上で、台湾政策法よりも厳格な国権を発動して中国を締め上げるべきではないのか

と言いつつやはり内政問題に重きをおくのか?ただ一つ言えるのはたとえ中国国内経済が混乱しょうが低迷しよが習近平の腹一つだということ。自分の偉業、功績のためなら農村戸籍出身の若者の命などなんとも思わないはずだ。因みに日米共同作戦は数種の作戦行動が策定されているはずで、25年の演習ではその中の欺瞞作戦のお披露目か?

とにかく台湾とその周辺が平和でありますように。台湾周辺海域はシーレーンでこのエリアの平和と安全は日本や国際社会の平和と安全に大きな関係があります。

台湾には何としても生き残りアジアの民主主義の防波堤としての役割を担ってほしい。
バナナを買うとか、台湾企業の日本への移転を手伝うとかはやって欲しいです。

専門性がない軍人を登用したから、すぐには戦える状態にないかもしれないが…
その様な素人指揮官が上に居ると、無駄な衝突も起きるかも知れない。
警戒は必要。

記事中に出てくるようなレベルの高いアナリストがいるのは羨ましいね。
日本にもいるのだろうがシンクタンクなどに隠れてしまって、世論形成機能がいまいちな印象がある。

西太后と乾隆帝の頤和園みたいな放漫財政でも清帝国は日本と戦った。戦はそんな単純な話ではない。

第一、中国と日本の経済規模は3∶1。ネズミが多少喰った処でびくともしないよ。

常に軍拡と警戒を

逆の見方も存在するのは確か。つまり

『内なる不平不満を外へ発散』

というのは、古来より独裁国家の歩んで来た道でもある。
この場合、不平不満=経済問題を始めとる内政問題。
外への発散とは言うまでもなく台湾侵攻。

つまり習近平がいつその気になっても………

ナニが言いたいかと言えば、単純明快

 【 油断大敵 】

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>淡江大学国際事務與戦略研究所助教の林穎佑

淡江大学は世界大学ランキングでは1000+位以後
狭い台湾ででも20位以後
一介普通の大学の助教って、台湾の孔明になれるの?
孔明を軽々しく使わないでほしい。

淡江大学、私大では一番難しいらしいですよ。でも、台湾は全体に日本以上に国立大学に人材が寄ってるので、よく評価しても、こっちでいうMARCHくらいの感じっぽいです。




>日本では中国に対する警戒感があらためて高まっている。
→ 警戒感はもちろんだが、近年は敵意の高まりが激しいと思う。

人類に腐敗が無いって事は無い。
特に、漢民族は確率が高いと歴史が証明されている。

腐敗は酷い。
金銭欲、権力欲、性欲この3つの欲が蔓延し腐敗が横行。

ウクライナ侵攻が無ければ危なかったかもしれないな。

トランプ政権復活したら
どうなるだろうか?

知合いの中国の知識人の方は軍の肩書(位)はおカネで買うのは昔からです、と言っておられました。

そして、一人っ子政策で自分の命が1番大事な気持ち、仕事が無く腹を満たす為に人民軍に入隊。ですから、祖国統一でバックに米国が付いている台湾進攻なんて、実際に勃発してイザ、バン!バン!、ドッカーン!となったら逃げ出す兵が多いはず、との事。大爆笑

自分の知合いの弟も、解放軍にどーしてもと誘われ、除隊後の就職も保証されたので2年間だけ入隊してましたよ。

まあ、日本人だろうが、中国人だろうが、戦争は嫌ですよ。