【コラム】NATO最前線で見た韓半島…同盟の重要性を思い出すべき=韓国
中央日報/中央日報日本語版2024.01.09 14:07

裂けた地殻が衝突する断層帯は地政学にも存在する。断層帯には緊張と紛争がいつも発生する。戦争勃発以降、2回目の冬を迎えるウクライナの北部にバルト3国(エストニア・ラトビア・リトアニア)からフィンランドにつながる欧州の地政学的断層が存在する。米国と欧州の集団防衛体である北大西洋条約機構(NATO)の最前線だ。

ユーラシア大陸の反対側、北東アジアの地政学的断層帯上に置かれた韓半島(朝鮮半島)もまるで宿命のように同じ挑戦・悩みと向かい合っている。

筆者は昨年10月ノルディック・ベネルクスセンター長として韓国外交部と在韓バルト3国大使館の協力を受けて北欧とバルト3国を訪問した。冬が早く訪れるバルト海の風は古風な中世の面影を残すエストニアの首都タリンの旧都心を吹き飛ばしてしまうのではないかと思うほどに強かった。フィンランド湾の波は白い歯をむき出しにしながら海岸に打ち寄せる。バルト3国の安保環境も厳しい。バルト海に面した3カ国は東に自然的国境がなく、総人口が700万にもならない。領土も戦争初期にロシアが占領したウクライナのそれよりも小さい。旧ソ連に合併されて地図上から消えたり現れたりを繰り返した辛い歴史も共有している。ウクライナ戦争を見つめるこれら小国の懸念は歴史的既視感をそのまま反映している。軍事的強大国であり核武装国のロシアがウクライナからこの地域に再び目を転じることがあればバルト3国は自分たちの力だけで自分たちのことを守るのは難しい。だが、やっとの思いで手に入れた自由と独立と主権を守らなくてはならないという意志は揺るぎない。同盟は選択ではなく必須となる。

◇「NATOの湖」になったバルト海

バルト3国の共通の最優先課題は安保の確証だ。過去にはドイツ・スウェーデン・ロシアなど強盛な周辺国の影響力下にあった。特に長い間ドイツ影響圏内にありながら蓄積された歴史的反感も小さくない。だが、その反感はソ連時期の間にむしろ「半減」した。どちらのほうがより必要なパートナーなのかに対する優先順位は時間の経過とともに明確になった。ロシアの脅威に対する憂慮はドイツをより近いパートナーにした。ベルリンの壁が崩壊し、ソ連が解体された1990年代初期、バルト3国の財務長官は一斉にドイツに向かった。すでにその時期、欧州の金融と産業はドイツの主導権下にあった。

だが、それよりも地政学的最前線でバルト3国が最も必要とするのは米国との同盟だ。まだ実質的な軍事的動員力が経済力に達していないドイツでも、行動よりも言葉のほうが先で予測が難しいフランスに頼るよりも米国との安保同盟、特に米軍の駐留が自分たちの安保と経済を保障することができる最善の方策になる。バルト海の周囲は以前までは中立国とNATO加盟国、そしてロシアの一部領土で構成されていた。今やバルト海はフィンランドとスウェーデンを合わせるNATO国家に囲まれた「NATOの湖」という別称を持ようになった。その中にロシアの1945年戦利品「カリニングラード」が核とミサイルで武装された小さな島のように残っていて、冷戦がまだ終わっていないことを思い出させる。

◇弱小国はバランサーになりにくい

「今でも不安を感じますか」。バルト3国の安保関連機関を訪問して投じた質問に対する回答は揺るぎなかった。「NATOがあるから大丈夫でしょう。われわれはウクライナのようにはなりません。絶対にそうならないでしょう」。そして問い返す。「韓国はどうですか。米国の拡大抑止は信じる価値はありますか。韓日米共助は大丈夫ですか」。質問は互いに繰り返された。別々になると死に、一つになってこそ生き残るという以前からの言葉は今も有効だ。

欧州で中立の時代は暮れつつある。バルト3国は1990年代中盤、中立は危険で受け入れられないということを認識した。フィンランドはウクライナ戦争以降、安全保障アイデンティティを再確立して75年間の中立を断念してNATO加盟国になり、ロシアとの1340kmに達する国境でNATOの拡張が現実となった。中立国だったスウェーデンもNATO加入を終えている。スイスとオーストリアは中立を維持してはいるが、価値の側面で明確に西側立場であることを示している。

冷戦時代、共産と西側陣営の間でバランス外交を繰り広げていると見られていたフィンランドの立場は何だったのだろうか。「バランス? 弱小国はバランサーにはなれません。われわれがやっていたのは生存外交です」。帰ってきた言葉は冷静だった。だが、その生存外交は結果的に地域内のバランスを取る変数になり得ていた。自由民主主義政治体制を守るというフィンランドの信念はダビテが巨人との戦争を躊躇しないほど揺るぎないものだった。人口550万人のフィンランドは現在、北欧・バルト国家のうち最も強力な軍事および民間防御力を保有している。

◇トランプ登場時は国際秩序に危機も

「規則による国際秩序が崩壊して、西側が弱まるのは大きな危機です」。ラトビアのエギルス・レヴィッツ前大統領はティーカップを下ろしながら低めの声でこのように第一声を発した。レヴィッツ氏は2004年から2019年まで欧州司法裁判官を歴任し、昨年夏に大統領を退任した後もラトビア国際法特別代表を務めている。元老政治家であり法曹人である彼の目には力の政治に帰還していくグローバル地政学がさらなる危機として近づく。国際秩序のルールが崩壊した場合、最も大きな被害を受けることになるのは地政学的断層帯に位置する弱小国だ。価値と原則は強大国の専有物ではなく、むしろこれらの国々とってもっとさらに切実な生存の手段になる。

「もし米国でトランプ大統領のような指導者が再び登場すれば、本当に危機が来るかもしれません」。2023年NATO首脳会議を主管したリトアニアで会った複数の専門家は強い危機感を表した。米国が孤立主義に進み、各自生き残りの国際秩序が繰り広げられるなら、欧州とNATOの凝集力は弱まり、中国とロシアは相対的に西側の分裂という政治的目標を簡単に達成して影響力を大きくするかもしれないという懸念がより鮮明になっている。

台湾と国交を正常化して中国との外交的関係を断絶してから、リトアニアは執拗な中国の報復に直面している。経済的依存は相対的に小さかったが、中国はリトアニアが関連したほぼすべてのグローバルビジネスにブレーキをかけている。だが、リトアニアはウクライナ戦でロシア側に立った中国をパートナーとして受け入れたいとは思っておらず、そのリスクを甘受して対決の最前線に立っている。米国と西側が不安定になればそれだけ難しい状況に置かれるだろう。その懸念は韓国と日本も共有している。2024年ユーラシア地政学の二つの最前線に投じられた最大の脅威はプーチンか、トランプか。どちらも選べない質問が投じられる。

◇グローバル安保談論の形成に積極的に乗り出してこそ

バルト3国、そしてフィンランドより韓国ははるかに規模が大きな国だ。経済力にしろ軍事力にしろ、国際社会でより多くの役割を果たすことができる行為者だ。だが、中国・ロシア・北朝鮮を同時に相手にしなければならない地政学的構図と重さは欧州地政学の最前線に置かれた上記の国々と大きく違わない。「韓国がわれわれとより多くの対話をするよう望みます。われわれは共有できる議題が多くあります」。出張中に会ったバルト3国の政策決定者や専門家は口をそろえる。韓国の防衛産業に対しても大きな関心を向けている。「バルチック安保会議」や「リガ・カンファレンス」のようなこの地域の安保多国間対話機構にも韓国はもっと視線を転じる必要がある。日本は既にかなり深く関与してきた。

ウクライナ戦争は韓国がこれまで注視できなかった新たな軍事、経済安保の場を開いた。ウクライナ、イスラエル、そして北東アジアでの同時多発的葛藤と地政学と地形学、技術競争が複雑に絡み合った新たな国際秩序は一つの危機がある地域だけに限らず、互いに関連していることを示している。不確実性が急速に拡散している国際秩序で相手の善意に対する漠然とした期待とロマンチックな予測は禁物だ。辛い歴史は繰り返されやすく、希望混じりの期待が実現することはほぼない。それが地政学の宿命だ。

中立の時代は過ぎつつある。同盟の強化を外交の中心軸に据えて周辺国と何重もの二者間、多国間関係を張り巡らせて交渉力を高めなければならない。グローバル安保とルール形成の談論にももっと積極的に介入しなければならない。それでこそ韓半島問題の解決策に対してもより多くの支持を引き出すことができる。同じような安保地形に囲まれているNATOの最前線から韓国を見つめる。韓国が冷厳な北東アジア地政学で生き残るためには韓半島を抜け出した、もっと広い視野からグローバル安保行為者にならなければならない。今やわれわれはそのような力量を備えており、そのような時期が来てもいる。

イ・ジェスン/高麗(コリョ)大学国際学部教授、イルミン国際関係研究院長

(引用終わり)
確かにトランプが当選すると、日韓ともに米軍との同盟費用(用心棒代)の増額を要求される。
これには、日韓共同して対抗する必要が生ずるだろう。韓国も、今からその時に備えて置くべきだ。

韓国が日本国を敵視していては、戦略どころではない。
韓国には日本の盾として役立ってもらわないとね。