9月3日
4時30分起床。5時30分行動開始。昨晩は星が綺麗に見えたので本日の晴天を期待したが、これから向かう穂高岳方面はガスがかかっている。ただ、後ろを振り向いて槍ヶ岳を見ると青空が広がっているので、ガスが晴れることを期待して歩き始めた。
6:08中岳(標高3084m)。視界は十分にあるが、ガスで景色は全く見えない。
7:01南岳(標高3033m)。やっとガスが晴れて景色が見えるようになってきた。ここまでガスで景色が見えなかったため、やたらとハイペースになったが、肝心の大キレット通過前にあまりペースを上げすぎてバテてしまってはせっかくの大キレットが楽しめなくなる。この先はゆっくり景色を楽しみながら歩こう。
前方に大キレットと、北穂が見えてきた。それにしても大キレットから北穂への登り返しは標高差がある上に急登でいかにもきつそうだ。

大キレットを前に南岳小屋で一休み。小屋には大キレットに関するなにやら注意書きがある。さすがに内容までは覚えていないがこの先は危ないから心していけみたいな内容だった気がする。
さーて、それじゃお手並み拝見で大キレットに突撃。特に緊張を要するっていうような所ではないが、とにかくガレ場で足元が悪い。うっかりしているとすぐに落石を起こしてしまう。それなりに登山者もいるので注意して歩かないとえらことになりそうだ。
大キレットでは「長谷川ピーク」や「飛騨泣き」の通過を楽しみにしていたのだか、結局「ここがそうだ」って確信が持てないまま通過してしまった。次はきちんと確認しながら通過することにう。

さて、いよいよ北穂高小屋までの登りにさしかかった。小屋を見上げるとあまりの登り返しにうんざりしてくるので上を見ないようにして登り始めたが、小屋までは辛かったーーー。
9:50北穂高小屋。小屋のテラスで大休止。軽くお腹に食べ物を入れてエネルギー補給。ここでやはり単独で縦走されていたA氏と仲良くなり、穂高岳山荘まで同行することになった。単独で山を歩いているとこういうことがよくある。
12:14涸沢岳(標高3103m)。初対面とはいえ同じ趣味を持つ者同士、歩きながら話が弾み、ここまでとはうってかわってあっと言う間に穂高岳山荘12:45着。早々にテント設営。私で本日2張り目
A氏はここからザイテンを下り、今日は涸沢ヒュッテ泊まりで明日横尾経由で下山の予定。まだ時間もあるし、せっかくだから奥穂高岳まで往復してきますということで、その間、A氏のザックを預かって私はテントでお昼寝タイム。奥穂から戻ってきたA氏とは、またいつか再会できることを願いつつ握手で分かれた。
夜、星が美しく輝いている。ここまで2日間とも快晴に恵まれたが、この分だと明日の天気も何とかなりそうだ。
9月4日
今日は朝から快晴。足元は一面の雲海。3日連続の晴天に感謝しつつ5:00行動開始。ここから先は去年一度歩いているので天気さえ良ければ楽しく岩場を通過できるだろう。
奥穂高岳(標高3190m)からふり返ると昨日歩いた縦走路の先に北アルプスのシンボル、槍ヶ岳がそびえている。うーーんいい眺めだ。


ここから先は慎重に行かないと。あせってへまをすれば簡単にあの世にいける。一週間前にもこの先で一人滑落して亡くなった方がいるようだ。
まずは最初の難所馬の背を通過。二度目でしかも前回よりも場数は踏んでいるはずなのに、なんかぎこちない感じがする。ある程度経験を積んだことで「怖さ」ということがわかってきたのかもしれない。
続いてロバの耳を通過し、ジャンダルムへ。奥穂側を直登している登山者がいる。まねして直登にチャレンジしようと思ったが、失敗=遭難ではシャレにならないので、ここは素直に西穂側の正規ルートより山頂へ登る。
山頂で先ほどの登山者B氏と会い、お互いに写真を取り合ってここから先何となく一緒に行動することになった。

相変わらずの岩場のアップダウンがひたすら続くが、適度に緊張を強いられてなんでもないところを歩いているよりもよっぽど楽しい。やっぱり岩場は面白い。
途中、「落石のおそれ有り、触るな」とペイントされている大岩があった。触るなといわれてももろにルート上。B氏と顔を見合わせながら、おそるおそる通過した。
この大岩の前だったか後ろだったか記憶が曖昧だが、ルート上のクラックにひとつかみの花束が差し込まれているところがあった。どうも先週滑落死亡事故が起こった現場がここらしい。遭難者の冥福を祈りつつ、先へ進む。
7:35天狗のコル。天狗の頭を過ぎ逆層のスラブを通過すると難所はほぼ終わり。間ノ岳に8:28着。

後は西穂山荘まで淡々と歩くのみ。写真を撮るというB氏と分かれて先行するが、このあたりから西穂→奥穂方向の縦走パーティとすれ違うようになってきた。
ほとんどのパーティがガイド登山らしく、ハーネスにヘルメットの出で立ちで、アンザイレン(K君へ:お互いにロープで結びあった状態)した状態で縦走している。
いままでは、難所で慣れない人とパーティを組むときはアンザイレンして滑落に備えるってなんの疑問も持たずに思いこんでいたが、この日にふと思ったのが「いくらプロのガイドでも自分とほぼ同じ体重の人間が予告なくいきなり滑落したとして、はたして支えきれるのか?」ってこと。
この時は「絶対無理」って思った。かえって道連れを増やすだけだと。後で師匠に聞いたらやっぱり無理だって。客に安心感を持たせる効果を狙ってのことらい。
西穂高岳(標高2909m)9:13。ここで信じられないパーティと出会った。この時間から奥穂方面へ向かおうとしている。しかも西穂から奥穂方面への最初の鎖場ですでにまともに降りられなくて、リーダーから「右足こっち。左足はここ」なんて指示をされてる始末。メンバーはリーダーの男性以外は全員おばさん!
これは無謀だろう。いくらなんでも。時間も時間だし、間ノ岳あたりで引き返すつもりなのだとは思ったがそれにしても・・・・・・。
去年は西穂独標あたりから足が痙攣し始め、それこそ這うようにして西穂山荘にたどり着いたが、今回足は絶好調。3日目で疲労もだいぶ溜まっていると思っていたが、かえって体が慣れて調子がいいようだ。
独標あたりから雲行きが怪しくなってきた。遠くで雷鳴も聞こえる。こりゃヤバイってことで西穂山荘までペースを上げて先を急ぐ。途中で雷鳥夫婦のお出迎え。

11:06西穂山荘。なんとか天気もここまで持った。山荘でしばらく休んでからロープウェー目指してラストスパート。ここは一度2月に歩いたことがあるが、その時よりも歩きにくい。あらためてよく踏まれた雪道の歩きやすさが実感できた。
ロープウェーは観光客で満員。二晩も風呂に入っていないデカイザックを担いだ汗臭い中年男のそばに来た人はさぞ迷惑だったことだろう。