~品質管理は、場所が変わっても“やるべきこと”は同じだった~
現場品質と万博運営を「品質」の物差しで測ってみたら
40年間の製造現場での経験を経て、私は昨年、大阪万博のパビリオン「ブルーオーシャンドーム」の館長という大役を仰せつかりました。 一見、製造業(モノ)とイベント運営(サービス)は対極にあるように見えますが、実際に最前線に立ってみると、そこには驚くほど共通する「品質の本質」がありました。
今回は、私が現場でまとめた「製造業 vs 万博運営」の比較分析をご紹介します。
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ものづくりで大切な品質とは
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お客様が求める品質とは |
ブルーオーシャンドーム(パビリオン運営)の品質とは |
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5S 不良が少ない 規格に合っている 美味しい 顧客満足 歩留まりが良い 無駄がない 効率が良い 付加価値 労働災害ゼロ |
価格が安い 体に良い 高栄養 低カロリー 美味しい 無添加 高品質 (人の体質や志向によって大きく変化する価値観) |
5S 美しい コンセプトがある 待ち時間が短い 待ち時間の快適性 顧客満足(おもてなし) 涼しい 安心安全 災害事故ゼロ 喜び感謝を伝える 心のこもった対応 心を感じてもらう 対応の早さ 緊急対応力 情報提供 入館者数 |
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品質を支えるサービスとは
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お客様が求めるサービス |
パビリオンでのサービス |
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丁寧な商品の説明 商品を使いやすくするアイテム
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店がきれい レジに並ぶ時間が短い 商品の選択が容易 価格表示が見やすい 表示が解りやすい |
清掃が行き届いている 丁寧な説明 VIP対応 スタッフの対応力 情報提供 雨の日の対応 転倒や熱中症など事故対応 |
1. 「安全」という土台:対象が変わっても管理は同じ
製造現場での最優先事項は「労働災害ゼロ」です。一方で、万博運営では「雑踏事故・災害事故ゼロ」が絶対条件となります。 守るべき対象が「従業員」から「来場者」に変わっても、リスクを予測し、未然に防ぐ「予兆管理」の重要性は全く同じでした。
2. 「品質」の定義:スペックから満足度へ
- 製造業: 図面や規格(スペック)通りに作ることが「良品」です。
- 万博: 規格はありません。来場者の「満足度」や「また来たい」という感情が「良品」の証です。 製造業においても、今は「壊れない」のは当たり前。その先の「使い勝手の良さ(顧客満足)」まで設計に盛り込むことが、今の時代に求められる品質管理だと再認識しました。
3. 「5S」の意味:効率のためか、おもてなしのためか
工場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の目的は「生産効率の向上」です。しかし万博での5Sは、そのまま「おもてなし(ホスピタリティ)」に直結します。 「整った環境は、人のミスを防ぐだけでなく、人の心を動かす」。これは工場でもサービス現場でも共通する真理です。
4. 「サービス」の本質:困り事解決こそが品質
製造業のサービスとは、お客様の「困り事(不良品や使いにくさ)」を解決することです。万博でのサービスは、お客様が困る前に手を差し伸べる「ホスピタリティ」です。 「先回りして動く」という姿勢は、製造現場での「予防保全」の考え方に通じるものがあります。
5. 「生産性」の読み替え:歩留まりの視点
製造現場では「良品率(歩留まり)」を追いますが、万博では「限られた時間内に、いかにスムーズに多くのお客様を安全にご案内できるか(運用効率)」を追います。 どちらも「リソースを最大活用して、ロスを最小限にする」という点では、全く同じ生産性向上の議論なのです。
結びに:ハイブリッドな視点で兵庫の現場を支える
「モノ」の品質を極めた40年と、「コト(体験)」の品質を担った万博での経験。 この両方の視点を持つことで、私はより多角的なアドバイスができるようになりました。
製造業の皆さまには「サービス業の視点(おもてなし)」を。サービス業の皆さまには「製造業の視点(論理的な工程管理)」を。 このハイブリッドな「現場品質サポート」で、兵庫県の生産性向上に貢献していきたいと考えています。