1. 導入:万博「Cドーム」が揺れた、世界最大の作戦会議
環境シリーズの締めくくりとして、今回は視座を世界最大級のステージへと広げてみたいと思います。
皆さんは、昨年の大阪・関西万博で大盛況だった「ブルーオーシャンドーム」を覚えているでしょうか。その中にある「Cドーム」の催事内で、私は非常に強烈な熱気を放つ、忘れられないセッションを聴講しました。
それが、笹川平和財団やZERI JAPANなどが主催した、「第3回国連海洋会議(UNOC3)」の最先端レポートです。
「国連海洋会議(UNOC3)」という言葉は、一般にはあまり馴染みがないかもしれません。しかしこれは、地球工場における「海の品質方針(SDGs目標14:海の豊かさを守ろう)」を達成するための、世界最高峰のウルトラ巨大ミーティングなんです。
フランスのニースで開催されたこの会議の最終日には、万博のCドームと現地が国際中継で結ばれ、そのスケールの大きさに圧倒されました。
- 世界のトップが終結: パラオ共和国のスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領、国連事務総長海洋特使のピーター・トムソン氏、世界経済フォーラムなど、地球を動かすリーダーたちが続々と登壇。
- 日本からの戦略提言: 笹川平和財団の角南篤理事長や、サラヤの更家悠介社長(ZERI JAPAN理事長)らが先頭に立ち、民間企業やNGO、そして次世代の若手リーダーたちの声を世界へと発信していました。
- 緊迫の議論: 違法な漁業(IUU漁業)の撲滅や、公海の生態系を守る「BBNJ条約(公海条約)」の異例のスピード批准など、まさに世界の海を救うための「リアルなルール作り」が目の前で報告されたのです。
2. 世界の決定事項:「儲かる品質管理」へのシフト
この世界会議の報告の中で、私がビジネスパーソンとして特に注目したのが、「環境保護をコスト(負担)ではなく、ビジネスとして『儲かる仕組み』に変える(ブルーエコノミー)」という強い意志です。
製造現場でもそうですが、どんなに素晴らしい品質改善活動も、赤字を垂れ流して会社を圧迫しては継続できません。環境活動を持続可能なものにするには、「経済の血流」に乗せる必要があります。
だからこそ会議では、日本政策投資銀行や民間投資家、慈善団体などを巻き込み、なんと87億ドル(約1.3兆円相当)もの新しい資金のコミットメントが引き出されました。「環境を守るプロセス自体をビジネスにする」という、世界規模の仕様変更が今、猛スピードで進んでいます。
3. 日本の課題:「良いもの」を作るのに「国際ルール」で勝てない矛盾
しかし、Cドームで日経BPのシニアエディターや専門家たちの熱いディスカッションを聴きながら、私は日本のモノづくりが直面している「いつもの課題」と同じ匂いを感じ、強い危機感を覚えました。
それは、「国際舞台における日本政府のプレゼンスや、ルールづくりの主導権(リーダーシップ)の弱さ」という課題です。
日本の製造業は、現場の改善力も技術力も間違いなく世界トップクラスです。しかし、欧米中心に作られる「国際標準(ルールメイキング)」の波に遅れ、せっかくの良品が市場の仕様から外されてしまう苦い経験を何度もしてきました。
海洋問題でも全く同じことが起きています。日本には素晴らしい海洋技術や、私たちが関わる「対馬モデル」のような素晴らしい現場の実績(加炭材の製造や廃プラ溶融など)があるのに、それを世界の共通ルールに押し上げる発信力がまだ弱いのです。
4. 結び:2028年「アジア発のプラットフォーム」に向けて
次回の「第4回国連海洋会議(UNOC4)」は、2028年に私たちの隣国である韓国(およびチリ)の共催で開催されることが決まっています。
これは、欧米主導のルールに合わせる側から、「問題の現場(アジア)から、私たちが主導権を握って解決策のプラットフォームを作る」という、最大のチャンスです。
株式会社関西再資源ネットワークや更家悠介社長と共に進めている対馬の資源循環モデルや、関西経済同友会が五感で体感している「三現主義」の取り組みこそ、次の世界会議で「これぞ日本が誇る『現場発の国際標準』だ!」と胸を張って提案すべき合格品の手本だと確信しています。
世界が変わるのを待つのではない。 欧米のルールにひれ伏すのでもない。 関西の現場から、世界の仕様書を書き換えていく。そんな熱い気概を持って、今日も目の前の「現場サポート」に尽力していきましょう!