1. 導入:地球工場の「排気ガス(CO₂)」を測定する

環境シリーズの第3弾となる今回は、目に見えないけれど確実に地球を暖めている「温室効果ガス(CO₂)」の現状について、品質管理の視点から切り込んでみたいと思います。

製造現場では、製品の品質を保つために「排出物(アウトプット)」の数値を厳格に管理します。今、私たちが生きる地球という工場では、このCO₂の管理を巡って、非常に奇妙な「測定値の矛盾」が起きているのです。

 

2. 日本の「是正処置」と、世界を襲う「想定外の外乱(戦争と異常気象)」

まず、良いニュース(改善の成果)から。 環境省の発表によると、2023年度の日本の温室効果ガス排出量は10億7,100万トン。前年度比で4.0%の削減を達成しました。再生可能エネルギーの割合も10年前の10.9%から22.9%へと倍増しており、現場の省エネや低炭素化という「是正処置」が確実に実を結んでいます。

しかし一方で、世界のデータを見ると、大気中のCO₂世界平均濃度は423.9ppmと、過去最高を更新し続けています。私たちが排出を減らしているのに、全体の濃度は上がってしまう……。そこには、人間のコントロールを超えた「大きな外乱(ノイズ)」が存在するからです。

  • 自然界のアラート: エルニーニョ現象などの気候変動により、陸や海の生態系がCO₂を吸収する力が弱まっています。
  • 人間のエゴという不適合(戦争): 地球上で繰り返される「戦争」は、莫大なエネルギー消費と破壊を伴い、一瞬にして天文学的な量のCO₂を吐き出します。平和が脅かされることは、地球環境の品質管理にとっても最悪の「トラブル」なのです。

3. 「出たゴミ・CO₂」を技術で回収する:テレビ、そして「対馬の現場」へ繋がる奇跡の輪

出す量を編む(源流対策)だけでは追いつかない今、重要になるのが「出たものをどう回収し、再利用するか(リカバリー機能)」です。

先日放送の「バンキシャ!」では、桝太一さんが海の厄介者である「プラスチックのテグス(漁具)」をお洒落なサングラスに生まれ変わらせる現場を取材されていました。さらに最先端のモノづくり現場では、「CO₂を吸収する建築資材」の開発なども進んでいます。こうした「不適合品を資源に変えるモノづくりの知恵」は、決して遠い世界の話ではありません。

実は、私がかつて在籍し、先日の万博記念盾のお話でも触れたサラヤ株式会社の更家悠介社長(兼 ZERI JAPAN理事長)が、まさにこの海洋ゴミ問題のド真ん中である「対馬プロジェクト」の先頭に立って動かれています。

このプロジェクトの凄さは、まさに製造現場の基本である「三現主義(現場・現物・現実)」を徹底している点にあります。

対馬の海岸に広がる膨大なゴミの惨状は、映像や写真で見るのとは全く異なります。現地を訪れた人々は、漂着ゴミの「臭い」や「足の踏み場もない様子」を五感で体感し、強烈な衝撃を受けます。だからこそ、頭の理解ではなく「自分ごと」としてのスイッチが入るのです。この「現場」に動かされ、国境や業界を越えた驚くべきアライアンスが結成されています。

元同僚の濱口さんに提供してもらった対馬海岸の写真

  • 海外の要人: ラーム・エマニュエル駐日米国大使、ユン・ドクミン駐日韓国大使が共に視察に訪れ、自らゴミ回収を行いました。
  • 次世代の力: IVUSA(国際ボランティア学生協会)や、日韓の学生たち(釜山外国語大学校など)が、言葉の壁を越えて大規模なビーチクリーンアップやワークショップを継続しています。
  • 企業の社会的責任(CSR): 関西経済同友会の定例視察をはじめ、アスクル株式会社の呼びかけによって、大手メーカー(リス、大王製紙、花王グループなど)や博多大丸なども巻き込まれ、本業を通じた資源循環(サーキュラーエコノミー)や商品開発へと次々に繋がっています。

そして、サラヤやZERI JAPAN、対馬市が連携して進めるこの「対馬モデル(循環型経済)」において、現地で回収されたプラスチックゴミを再び使える良品へと生まれ変わらせる再生(ペレット化など)の取り組みに、私がコンサルタントとして関わる『株式会社関西再資源ネットワーク』の技術と情熱が大きく貢献しているのです。

  • 漂着した発泡スチロール・ブイの溶融機: かさばる海の厄介者を、現地で効率的に減容・再資源化するプロセスの構築。
  • 流木をチップ化・固形化した『加炭材』: 流れ着いた流木を破砕・固形化し、セメントや鉄鋼の製造現場で使われる石炭やコークスの「代替助燃剤(エネルギー資源)」へと生まれ変わらせる技術。
  • 食品の残りカス(残渣)を炭化: 私たちの身近なところでは、食品の残りカス(残渣)を炭化させ、これら重工業の脱炭素を支える助燃剤や肥料として社会に還元する取り組みも行われています。

国際的なリーダーシップと現場の五感によって集められたゴミが、関西の誇る技術力によって、再び命(原料)へと還元される。テレビの向こうの先進的な取り組みは、私の大切な元職の更家悠介社長、親愛なる仲間たち、そして現在のコンサル先という、まさに「私のすぐ目の前の現場」で、力強く社会に実装されています。

 

4. 万博で学んだ自然の力:海の浄化システム「ブルーカーボン」

この「CO₂や炭素を捉えて閉じ込める」という技術ですが、自然界の「海」ははるか昔からその究極のシステムを持っていました。それが、大阪・関西万博の「ブルーオーシャンドーム」でも数多く発表されていた「ブルーカーボン」です。

浅瀬の海藻(アマモやコンブなど)が、大気中のCO₂を吸収して海の底に長期間「固定」してくれる仕組みであり、その吸収スピードは陸上の森林よりも遥かに速く、効率的です。

しかし、前回のブログでお伝えした通り、今その「海の森(海藻)」は、海水温の上昇や海洋プラスチックゴミによって激減しています。陸の技術(ペレット化や炭化技術)でゴミを減らし、海の自然(ブルーカーボン)を守る。この両輪が揃って初めて、地球の品質管理は正常化に向かいます。

 

5. 結び:未来の「仕様書」を書き換えるために

私が道端で拾い上げる1つのゴミは、巡り巡って、海のフィルター(海藻)が詰まるのを防ぎ、関西再資源ネットワークのような現場へとバトンを繋ぐための、ささやかな、しかし確かな「源流管理」です。

未来の子供たちに「合格品」の地球を手渡すために。 さあ、今週も自分にできることから一歩ずつ、明るく元気に活動していきましょう!