「中央線の汽車が甲州の釜無谷を抜け出て、信州の高台に上り着くと、まず私たちの眼を喜ばせるのは、広い裾野を拡げた八ヶ岳である。全く広い。そしてその裾野を引きしぼった頭に、ギザギザした岩の峰が並んでいる。八ヶ岳という名はその頭の八つの峰から来ているというが、麓から仰いで、そんな八つを正確に数えられる人は誰もあるまい。」
これは深田久弥の「日本百名山」の八ヶ岳の冒頭部分である。

八ヶ岳は信州の南部に位置し南北に広がる多くの峰々を総称して呼ばれる。
八は多くのという意味のようである。
その峰の最高峰は赤岳で標高は2899m。

先日その八ヶ岳の麓を訪れた。
その日は昭和の日であった。
午後東京を発ち中央道を走る。
ラジオで流れる戦後歌謡特集を聴きながら。
天気も良くなり、道路の渋滞もなく快調なドライブ。
中央道を大月から先まで行くのは久しぶり。
笹子トンネルを抜けたあたりから景色は一変する。
前方に南アルプスの山々が現れる。まだ残雪もある。
右方向には八ヶ岳の姿も現れ始める。
いつ見てもこの光景には感動する。

途中双葉サービスエリアの展望台に行ってみた。
そこからは八ヶ岳と南アルプスが望める。
右に八ヶ岳、左に南アルプスの山々。
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八ヶ岳。
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甲斐駒ケ岳。
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後ろには富士山が見える。
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中央道をさらに走ると八ヶ岳は更に近付いてくる。
長坂ICで下り、一般道をひたすら八ヶ岳の麓野辺山まで上っていく。
この間も常に八ヶ岳が目に入る。
標高が高くなるにつれ気温も下がっていく。
清里を過ぎやがて目的地に到着。その時の気温は10度を下回っていた。
今日の宿は「八ヶ岳グレイスホテル」。
標高1375mのJR最高地点のすぐ目の前にある。
ホテルの目の前には八ヶ岳の全容が広がる。
全ての客室からは八ヶ岳が見える。

到着したのは夕方で日が傾きかけている。
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やがて黄昏に浮かぶ八ヶ岳。
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この日の夜は星の観測と撮影。
この様子は前回書いた。

八ヶ岳の上空に満天の星空。
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翌日の早朝、部屋の窓を開けると朝日に照らされた八ヶ岳が美しく映えていた。
朝五時過ぎ。この時の野辺山の気温はマイナス5.4度。日本で最も寒い朝となった。
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八ヶ岳の最高峰赤岳。
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朝の澄んだ空気の中で八ヶ岳はさらに美しかった。
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南アルプスの山々もはるかに見える。
真ん中の山が日本で二番目に高い北岳。一番右の山は甲斐駒ケ岳。
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JR最高地点を走る小海線の電車と八ヶ岳。
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野辺山宇宙電波観測所からパラボラアンテナの向こうに見える八ヶ岳。
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山あいの過疎の町で育った私は、やはり山を見ると郷愁を誘われ感動する。
甲州、信州の山々は東京からは普段見えない山で、そのごつごつした岩肌の山容は、富士山の端麗な姿とは異なってまた感動を与えてくれる。