私が初めて立ち食いそばを食べたのは、東京に出てきた年、1980年のことであった。
高田馬場駅前にあったその店はカウンターのみで4、5人入れば満員というものであった。
カウンターに立ち、きつねそばを注文する。あらかじめ茹でてある麺をさっと湯通しし、丼に移す、そこにつゆを入れ、油揚げをのせる。カウンターの前におかれ、前金で料金を渡渡す。この間1分もかからない。
つゆはぬるめで一気に食べあげる。その時間は注文してから3分もかからない。
これぞ立ち食いそばの醍醐味なのである。
まさにファストフードの元祖のようなものである。
 
当時は駅前には必ずこうした立ち食いそばがあったように思う。
立ち食いそばの起源は江戸時代の屋台にあるらしい。
せっかちな江戸っ子にはこうした立ち食いそばがあっていたのであろう。
 
私は立ち食いそばにはまり、よく食べたものだ。
浪人時代通っていた予備校にも立ち食いそばがあった。
かつて中野駅にも北口、南口に立ち食いそばがあり、朝の宣伝活動、通称朝立ちを終えて、立ち食いそばを食べるのが楽しみでもあった。店のおばちゃんと顔なじみになると、おまけにコロッケをのせてくれたりしたものである。
 
私は昔ながらのこうした立ち食いそばが好きなのであるが、最近はこうした店が無くなり、チェーン店の立ち食いそばに変わってきた。立ち食いそばと言ってもカウンターには椅子があり、テーブル席もある。メニューも豊富になり、丼物もある。料金は券売機でチケットを購入するシステムがほとんど。
やはりカウンターで立って食べる立ち食いそばが懐かしい。
中野駅も高田馬場のその店も今は無い。
 
立ち食いそばと言ってもうどんもあるのであるが、私はそばしか食べない。
関東では7,8割はそばを注文するようである。
 
少しでも立ち食いそばの醍醐味を味わえる店があるとつい立ち寄りたくなる。
最近立ち寄った店を紹介する。
 
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初台にある店。この店の名物はかき揚げそば。
かき揚げは注文してからその場で揚げる。
揚げたての分厚いかき揚げののったそば。
ほとんどの人はこれを注文する。
 
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新宿西口の地下街にある「永坂更科 布屋太兵衛」の立ち食いそば。
麻布に本店がある創業200年の老舗の蕎麦屋の立ち食いである。
味も上品であるが値段も立ち食いそばにしては高い。
 
そばがでてきたら、さっと平らげて、「ごちそうさん」と言ってさっと立ち去る。
これまた他では味わえない立ち食いそばならではの醍醐味である。