今年の選抜高校野球(正式には選抜高等学校野球大会)の行進曲がAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」に決まったというニュースがあった。
実はこの曲については昨年末まで知らなかった。
たぶんどこかで曲が流れているのを聴いたことはあるのであろうが、意識して聴いたことはなかった。
初めて意識して聴いたのが暮れの紅白歌合戦であった。
以来動画で何度も視ている。御嬢さんたちが元気いっぱい踊って歌っている姿はおじさんにはある種感動すら覚える。しかしフォーチュンクッキーという言葉や歌詞の意味はほとんどわからない。
 
さて、選抜の行進曲の歴史をたどればその時代が見えるのではないかと思って調べてみた。
第1回の選抜大会は1924年(大正13年)である。今年が86回大会となる。戦争中の1942年から46年までは中断されている。
第1回大会の行進曲は「双頭の鷲の旗の下に」「星条旗よ永遠なれ」などの世界的な行進曲が使われている。
以来こうした行進曲などが主に使われている。
戦前は戦時色の濃い軍国歌謡が使われる。
1938年「愛国行進曲」、39年「大陸行進曲」、40年「奉祝歌 紀元二千六百年」、41年「国民進軍歌」といった具合である。
そして中断していた大会は、戦後の1947年から再開された。1948年にはラジオ歌謡としてヒットした「とんがり帽子」、49年には戦時中異国の地で故国に還ることを願った「異国の丘」が使われている。まだ戦争の面影を残している。
その後も日本の行進曲や外国の曲が使われる。
大きく変わったのが1962年(昭和37年)からである。この年の曲は「上を向いて歩こう」。
この年から前年のヒット曲の中から選ばれるようになった。
選考基準は主催者の高野連と毎日新聞社により、前年のヒット曲の中で、多くの人に親しまれ、行進曲にふさわしい歌詞と曲調であることとされている。
以降「いつでも夢を」「こんにちは赤ちゃん」「幸せなら手をたたこう」と続く。
坂本九が歌った歌が6回選ばれており、最も多い。
1973年は天地真理の「虹をわたって」で、その後アグネス・チャン、森昌子とアイドル路線へとつながっていく。
この時期は私の青春時代と重なる。
ちなみに私が高校に入学したのが1977年(昭和52年)でこの年の曲は「ビューティフル・サンデー」、78年は「愛のメモリー」、79年は「季節の中で」、卒業した年、80年は「ヤングマン」であった。
1978年には私の母校、島根県立益田高等学校が選抜大会に出場したのである。
以後1980年代、90年代、2000年代もアイドルのヒット曲が多く選ばれている。高校生を意識した曲であることがわかる。ここ最近は特にその傾向があるように思える。いわゆる演歌のような曲は無い。私の知らない曲が多くなってきた。
昨年は「花は咲く」で、これは2012年の東日本大震災への思いが込められた曲となっている。
さて今年の「恋するフォーチュンクッキー」は踊りの振り付けがなかなか面白い。
選抜の出場選手も真面目に行進するのもよいが、この曲に合わせて踊ればなお盛り上がると思うのであるが・・・
 
ふと選抜の行進曲をたどってみたのであるが、やはり時代を反映したものであった。歌は世につれである。
 
春は選抜からというが、春が待ち遠しい今日この頃の厳しい寒さである。