私が乗っているバスの行先は「美しい国」とある。
どんな国なのかいまいちよくわからない。
思い返せばこのバス会社は戦後長年この路線を独占してきた。
だいぶバスもポンコツになり、運転手もしょっちゅう変わり、乗り心地も悪くなったので、4年余り前に新しいバス会社に変わったのであるが、このバス会社もバスは新しいのであるが、素人っぽく、運転手もよく変わり、社内のごたごたも目につくようになり、乗客からはやはり前の会社の方がましと、一年前に元の会社に戻ったのである。
運転手は以前担当していた人が再びハンドルを握っている。
名前は安倍晋三さんといい、バスのネームプレートの下には、「皆様に安心してお乗りいただけるよう、安全運転に努めます」との一言が張られている。
以前は途中でハンドルを投げ出した事もある。
しかし、この運転手は乗客の評判は高いようだが、運転は少し乱暴である。
法令違反すれすれのことをやってみたり、法令の解釈まで変えようとしている。
時に法定速度以上のスピードも出す。
右へハンドルを切ることが多く、たまに右に急ハンドルを切る。その時私の体は自然と左に傾くのである。
そしていろいろなところに行くのが好きで、海外にもたびたび行く。
今日の朝、富ヶ谷を出発したバスは一路九段の方に向い、靖国神社に止まった。
そしてバスを降り参拝したのである。
聞くところによれば、靖国神社参拝がかねてよりの悲願であったようである。
どうもこのバス最近私には乗り心地が悪い。
乱暴な運転を注意する人が会社にも周りにもいないようである。
競争相手のバス会社も小さいものばかりで、まさに一社独占である。
自分の思い通りの運転をしているのである。
 
今日もこのバスからは「右に曲がります、ご注意ください」というアナウンスが聞こえる。