この季節になると聞かれる曲の定番といえば、山下達郎の「クリスマスイブ」、ベートーヴェンの「第九」などであろうか。
私にはの時期特に聴きたくなり、また歌いたくなる曲がある。「俵星玄蕃」である。
三波春夫が「演じた」曲で正式には長編歌謡浪曲「元禄名槍譜 俵星玄蕃」という。
忠臣蔵の赤穂浪士の討ち入りをモチーフにしたものでこの時期がまさに旬なのである。
題名も長いが曲も長い。CDに録音されているもので8分40秒ぐらいの曲である。
私がこの曲を聴いて感動し、「自分でも唄ってみたい」と思ったのは今から15、6年前であったろうか。
テレビで三波春夫のこの曲を視てからである。
たぶん私が見たのはフルバージョンではなく、一部はカットされたものであったろう。
何せ全部演じれば9分弱のものであるから放送ではめったにフルバージョンはお目にかかれない。
この曲は長編歌謡浪曲といわれるように、歌と浪曲と啖呵(台詞)を組み合わせたもので、そして一つの物語を演ずるのである。そして三波春夫はこれに振付が加わる。
三波春夫は歌謡曲の歌手になる前は浪曲師であった。
その経験がいかんなく発揮されたのがこの「俵星玄蕃」である。
歌、浪曲、啖呵、振付、そして三波春夫の顔の表情。これぞまさしくエンターテイメントだと感動したのである。
私が先にこの曲を「歌う」ではなく「演じた」といったのはそのことである。
私はこの曲をぜひ覚えたいと思った。
CDを買い歌詞カードを見たらさすがに長い文章になっている。
CDを聴きながら、歌詞、台詞を覚える日々が続いた。
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意味はさておき、とにかく少しづつ頭におぼえこませ、やがてすべてを暗記してしまった。
この時の集中力は受験勉強の比ではなかったように思う。そこまで私を引き付けたのである。
浪曲調であるから節回し、台詞回しもそれなりにおぼえていった。
そのうち振付も覚えたくなった。それには三波春夫の演じているものを実際に見るしかない。
そこで三波春夫のリサイタルを収録したビデオを購入し、そのビデを視ながら覚えていった。
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だがそのビデオで演じている「俵星玄蕃」はフルバージョンではなかった。
フルバージョンのものが視たいと、NHK放送センターのビデオライブラリーに行って、ちょうどかつて「ビッグショー」で演じたものがあったのでその場で何度も見ながら必死で覚えた。その後はパソコンの動画サイトにもあることがわかり、それでも覚えた。
こうして「俵星玄蕃」をフルバージョンで歌って、唸って、啖呵を切って、振りを付けるまでになったのである。
以来稲岡流「俵星玄蕃」を演じて来た。多くはカラオケで、他の迷惑も顧みずだ。
 
今幸いに動画サイトでいくつかの三波春夫が演じたこの「俵星玄蕃」を見ることができる。
いつ視ても、どれを視てもその名演に感動し引き込まれる。
最近その中にこの「俵星玄蕃」を演じる前に前口上があることを発見した。
これも聞き書きし覚えたのである。
私にはこの前口上を含めたものがフルバージョンであり、
これぞまさしく長編歌謡浪曲「元禄名槍譜 俵星玄蕃」なのである。
 
ここまで私を引き付けた「俵星玄蕃」とはなんなのか。
この曲を演じた三波春夫、この曲の主人公俵星玄蕃とは、そして、元禄15年12月14日「俵星玄蕃」の歌の舞台へと掘り下げてみようと思う。
今宵はこの辺りまで。