年末に当たり、今年私が読んだ本、聴いた音楽の中で特に印象に残ったものの中からベストワンをあげてみたい。
 
書籍では、志賀直哉の短編小説である。私はこれまで小説というものをあまり読んでこなかった、特に日本文学などというものはほとんど学校で習った程度であった。作者と作品名を言える程度で内容までは頭にない。
今年ふとしたきっかけで志賀直哉の「城の崎にて」を読んでみようと思った。文庫本で10ページほどの短編だ。10分もあれば読める。読み終えてたかが短編小説と思っていたが、大きな衝動を受けた。さすが文豪であり、小説の名人と言われた志賀直哉であった。文学とはこういうものかと思わされた。その後志賀直哉の小説をはじめ、芥川龍之介、森鴎外、川端康成、太宰治などの小説を読むようになった。特にこれら文豪は短編小説を多く書いており私はそれらを好んで読んだ。
志賀直哉の「城の崎にて」「小僧の神様」「清兵衛と瓢箪」は今も繰り返し読んでいる。
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次に今年印象に残った詩歌では。
石川啄木の
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
石川啄木の詩には青春、郷愁、生活がある。有名な詩、好きな詩はいくつもあるが、この詩は今年あるテレビドラマの中で出てきて印象に残った。イメージ 2
 
 
音楽では歌謡曲とクラシックから。
歌謡曲では今年は灰田勝彦の曲をよく聴いた。その中でも「森の小径」は印象深い。
これは昭和15年に発売された。戦前の曲である。ハワイアン調のメロディ、メルヘンチックな詞。戦前の歌とは思えないほどだ。青春の夢、恋の甘酸っぱさを感じさせる。
作詞者は佐伯孝夫。「いつでも夢を」「有楽町であいましょう」「東京ナイトクラブ」など多くの青春歌謡、都会派、ムード歌謡の名曲がある。
小沢昭一さんもこの歌を紹介されている。戦時中出撃前夜の特攻隊員が基地でもっともよくうたった歌だそうだ。
「どんなに軍国主義に洗脳されていても、死ぬと決まった前夜、若者の心をかすめたのは、故郷の山河、父母、さらに恋人なんでありますよ。」と自身の軍隊経験から述べている。イメージ 3
 
 
最後にクラシック音楽。
今年初めてブルックナーにはまった。これまで重く、長く、難解のイメージで敬遠してきたが、FM放送でブルックナー特集を聴いて印象に残った。荘厳な宇宙を感じさせる。迫力もある。特にもっとも有名な交響曲第4番「ロマンチック」をよく聴いた。
クラシックは同じ曲でも、指揮者、オーケストラ、演奏年によって作品に大きな違いが出る。
私が聴いたのはギュンターヴァント指揮、ベルリンフィル、1998年版。現在もっとも評価の高いCDになっている。
音楽にも食わず嫌いがある。イメージ 4