無造作に積まれた死体の山を後にするとき、僕らは、心の中で手を合わせながら、

『もう、少しだけ我慢していて、そうしたらみんなのこと天界に送ってあげるから』って、言い残した。

みんな、何も言わない、けど、誰の目にも涙ににじんだ碇のマークが、最初に口を開いたのは、空君

『僕、なんだか嫌な予感がするんだけれど』って、

僕には、今見て来た死体の山以上に、悲惨な状態は浮かんで来ないのに、空君は、まだ、嫌な予感がするって言う。

『嫌な予感って、もっと酷いってこと』って、僕が聞くと

『そういうわけじゃないけれど・・・』って言った、空君の声をかき消すように、男の人の叫び声と、銃声が聞こえてきた。

『なんだ、今の叫び声』

『銃声もした』

『男の人の声だったよ』

『急ごう』って、走り出した。

『あっ、人が倒れている』って、エンジェルさん

『聞こえるよ、猫の泣き声、微かに、あの倒れている人の方から』って、僕は言いながら、一目散で走り出した。

みんなは、僕のもうダッシュに、少し驚いたみたいで、一瞬に引いてから、僕の後に走り出してきた。

僕が、倒れている人の所に来た時には、誰も居なかった。急いで、倒れている人の顔に顔を近づけてみると、まだ微かに息をしている。

『生きている』って、アッちゃん

『うん、何とか辛うじて息をしている。隊長さん、お願い、この人を仰向けにして、この人の下敷きになって、猫さんが居ると思う。それで、僕のペンダントの涙を、この人に』って、僕

『ああ、分かった』って言いながら、隊長さんは、銃に撃たれて倒れている人を、そおっと仰向けにした。やっぱり、その人の、下敷きになって猫さんが居た、血まみれになっている。僕が、猫さんの顔を舐めると、その猫さんは、ウーって唸った。

『今の唸り声って、猫さんの、猫さん、生きているのね』って、エンジェルさんが

『でも、かなり危険そう、隊長さん、この猫さんにも、僕の涙』って、僕

『元ちゃん、今の猫さんの唸り声ってさ』って、リッちゃん

『そう、威嚇だと思う。気を失っているのに、それでも、威嚇するって、相当怖い思いをしたんだと思う』って、僕は

『この男性は、城の人間らしいね。着ている洋服が、制服ぽいから。仲間割れってことかな。若しくは、この状態からすると、裏切り者ってことになるのかな。猫さんのこと、庇っている感じがするから』って、ストーンさん

確かに、この男の人は、ストーンさんの言うとおり、猫さんのことを庇って、撃たれたように見える。


     つづく









僕らは、城の中に入る前に、城の敷地内を一周することにした。よどんだ空気は、城の中から、胸を締め付けるように流れてくる。こんな中のどこに、母猫さんが言っていたような、暖かい部屋があるのなかなって、僕は思った。

『なんだか、母猫さんが言っていたような感じじゃないよね』って、空君

『そうだけどさ、それって、母猫さんが逃げてから変わったんじゃないの』って、リッちゃん

『そうか、ここの中のことが、ばれたって思ったってことかな』って、隊長さん

『多分、でも、城の中で一体何をしているのかな』って、ストーンさん

『あそこ見て、なんか積まれている』って、エンジェルさんがこんもり何かって、あれって、死骸だ。ああ、猫さん、犬さん、子供の死骸が積まれている。一瞬、誰も声を出すことが出来なくなった。僕は、目まいがしそうになった、みんな僕と同じように、血の気の失せたような顔をしている。

『愛ちゃんが居なくて良かった』って、僕が言うと、みんなも

『ああ~ぁ』って、

僕らは、走って、そのこんもりと死体が積まれているところに、行く。

離れた場所で、見たとき以上に、当然だけどショックが大きい。それぞれの死体は、どこかみんな傷ついている。一箇所だけ傷ついているもあれば、手足がなかったり、頭がなかったり、体が爛れていたり、いろんなところが腫れ上がったり、蛆が湧いていたり、骨が見えていたり、地獄のようだ。それは、動物だけじゃなくて、人間の子供も、同じように。

『ここに積まれているみんなは、天界に着いたら、元通りになれるんだよね。痛くなくなるんだよね。無くなってしまった頭も、元通りになるよね。腕も、足も、そうだよね』って、空君が泣きながら

『うん、そうだよ。早く、天界に送ってあげなきゃ、楽にしてあげなきゃ』って、僕は、泣くのを堪えて言おうとしたけれど、無理だった。

本当は、すぐにでも、積まれているみんなを埋葬してあげたいんだけれど、城の中に人間っていうか、人間の皮をかぶった悪魔に、気づかれてしまうから、うかつに触ることも出来ない。何て、悔しいんだって思いながら、僕らは、前に進んだ。


        つづく


僕が、『きっと、ホープ君は、王子様なんだ』って言ったら、みんなも、『そうだよ、王子様だよ、ホープ君は』ってことで、ホープ君は、『なんで、僕が』って言いながら、フューチャーちゃんの家に、テレポーテーション。そして、アッちゃんが、王子様のホープ君と入れ替わりで、戻って来た。

『母猫さんは、父猫さんのことで、精神的に随分ショックを受けているよ。無理もないよね、自分の目の前でだものね。ああ、赤ちゃんニャンコたちは、お腹もいっぱいになって、暖かい毛布に包まれて、ここで見たニャンコたちとは、別ニャンコに見えるくらいに、元気になったよ。愛ちゃん、付きっきりで見ているから』って、アッちゃん

アッちゃんの話を聞いて、みんな、大きなため息を漏らしながら、

『良かった。赤ちゃんたち、元気になって』って、

でも、母猫さんの心は、複雑なんだろうなって、あ~、上手い具合に父猫さんが、生きているなんてことないかなって、思ってしまう。

『しかし、この城、不気味だよね』って、リッちゃん

『うん、ここの周りの空気、よどんでいるよ。僕、空気のきれいなところから、来たばかりだから、特にそう感じるのかもしれないけれど』って、アッちゃん

『それは、私たちも感じている。それに、微かに話し声は聞こえるんだけれど、生き物の気配がしないんだけれど』って、エンジェルさん

『ただの人間の私にも、いやな雰囲気は、伝わって来る』って、隊長さん

『城の中に入るんですよね』って、犬さんが、何か少し申し訳なさそうに言ったので、

『犬さん、気にしなくていいんだよ。僕らは、みんな分かっているんだから、犬さんは、赤い地球の犬さんだってこと、戦えないことを気にしているんでしょ。戦えなくても、してもらうことがあると思う。絶対に、生きている仲間が居るはずです、その仲間を、救い出すっていう、大事な仕事があるんだから。これは、戦う以上に大変なことだから』って、僕が言うと

『絶対に、生きている仲間がいますよね』って、犬さん

『いるよ、絶対に』って、みんなが言った。


      つづく