僕と隊長さんが、心と心とで話している間、長のおじさんは、何か凄く難しい顔をして、ぶつぶつと独り言を言っていた。

『止めろ、そんなこと、いくらなんでもやりすぎだ。そんなこと、約束と違う。止めてくれ』って、

僕が、『どうしたの』って、聞こうとしたら、隊長さんが

『もう少し、独り言を聞いていよう』って、僕のことを止めた。

おじさんは、完璧に自分の世界に入ってしまったみたいで、僕と隊長さんが隣にいることを忘れてしまったように、しばらくの間独り言が続いた。

『隊長さん、おじさんは、北の国の悪魔、国王と何を約束したんだろう』って、僕が聞くと、

『そうだな、単純に考えるとお金なのかな』って、

『でも、この国に居たら、いっぱいお金があっても、使い道が無さそうだけれど』って言うと

『人間は、欲が深いから』って、隊長さん

『ふーん、人間って、悲しいね。僕なんか、猫だから、お金なんかあっても、仕方がないって思うんだけれど、だってさ、どんなに大好きなメロンやチョコレート、生クリームや、塩鮭だって、一生かけても、食べれる量なんって決まっているから』って、僕

『確かに、まあ、元ちゃんの場合は、猫に小判だから。その点、人間は、次から次と、しかし、この長さん、ただ欲に目がくらんだだけなのかな。もし、そうだとしたら、許すことは出来ないけれど、それだったら、後悔をしたりするかな』って、隊長さん

『人間って、複雑なんだね。もっと簡単だといいのに』って、僕と隊長さんが、心で話していたその時、長のおじさんが

『悪魔め、出てきたな』って叫んだ、おじさんの正面に

『裏切り者が』って言って、多分、悪魔の国王が立っていた。


        つづく



僕が、天に向って祈っている時、隊長さんもおじさんも、僕と同じように、

『神様、どうか力を貸してください。元ちゃんにトンネルと作らせてください。みんなを助けてくださ居』って、祈っていたんだと思う。

けど、僕に、僕にだけ、ああ、僕と隊長さんにだけ、聞こえたのかも、ママの声が、それがどう理解するといいのか、僕には、始めよく分からなかったんだ。なんて、ママが言っていたかと言うと、こんなことを僕と隊長さんに言ったんだ。

『よく、考えてごらん、この国の雨や嵐が、治まらないわけを。この国の国民が、苦しんでいるわけを。確かに、国民のせいではないけれど、この国の長を選んだのは、この国の国民だということ。長の心の中は、誰も見ていない』って、

『ママ、どういうこと』って、僕は、心の中で問いかけた。でも、返事は返ってこなかった。

隊長さんが、祈り続けている僕を、不意に抱き上げた。そして、僕のことを、自分の胸の辺りに抱き、目を閉じたまま、心で話をしようとしている。

『隊長さん』って、僕が心の中で言うと

『元ちゃん、私に聞こえたんだよ。その誰だか分からないんだけれど、女の人の、優しい声が、そして、その声の主が言うには、多分、長の心の中を疑っているように聞こえたんだ。この国の雨や嵐は、悪魔の国王だけのせいじゃないように、私には聞こえたんだ』って

『隊長さんにも、ママの声が聞こえたの』って、僕が言うと

『ママって』って、隊長さん

『うん、ビックマザーって言うのが、本当なんだけれど。その全ての人間の、ママなんだ。多分、隊長さんが聞いたのと同じことを、僕も聞いたよ。僕には、上手く理解できなかったんだけれど、隊長さんの言ったことで、ぼんやり分かったような気がする。おじさんも、もしかしたら、自分が気が付かない内に、悪魔になっていたのかもしれない。それで、おじさんは、悪魔と戦っているのかもしれない。ほら、父猫さんを、庇って銃で撃たれたのも本当のおじさんだし、北の国の悪魔と気が付かない内に、手を結んでいた悪魔のおじさんも、おじさん自身の中にいるってことでしょ。で、もしかしたら、おじさんが自分の中の悪魔と戦って勝ったら、雨と嵐は止むかも知れない。だって、おじさんがいい人にちゃんと戻ったことになるから』って、僕

『ありうるかもしれないな。しかし、どうやって、自分の心の中の悪魔と戦っているんだ』って、隊長さん

『僕にも、分からないけれど、でも、苦しんでいるんじゃないのかな。助けたい気持ちと、油を守りたい気持ちで、揺れている』って、僕


つづく

海は、波も凄く荒いし、風は強風、大粒の雨は、それだけでも凄い感じなのに、強風にあおられて、体に突き刺さっているんだろって思える。僕らは、バリアの中に包まれているから、その酷さを感じることはないけれど、海で作業を強いられている人たちは、作業を続けるよりも、海に流されないようにすることの方が、大変だと思う。

海の作業は、海の中に立てられた塔が、この嵐で倒れ掛かっているのを、食い止めることらしい。そうしないとせっかくの油が、みんな海に流れてしまうから、それを何とか食い止めろって、その為には、人の命なんかって、何てことさせるのかな、本当に悪魔なんだ、国王って。

『この油の為に、私の大切の国民の命が、海の中の飲み込まれて行くなんて、なんて馬鹿げたことを、油なんかみんな海に流れてしまえばいいんだ』って、おじさんが悔しそうに唇を噛んでいる。

この国の人たちは、自然を愛して止まないのに、海からもらっている恵みだって、大事にしているのに、油で真っ黒にして、そしてこの国の人たちをこんな酷い目にあわせて、悪魔のやつ、僕は絶対に許さない。

『元ちゃん、こんなに酷い嵐でも、海のトンネルを作ることが出来るかい』って、隊長さんが、心配そうに聞いてきた。

『出来ると思う、絶対に作ります。そして、海に流されてしまった人たちも、何とか助けなくては、きっとみんな、しっかりとした蝋燭の炎を持っていると思うから、僕の周りに集まってくれる』って、僕

僕は、自分の全ての神経を、海の中にトンネルをつくる事にだけ集中させた。僕の体中の、毛の一本一本にいたる全てに、神経が集中してきてる、少しづつ僕の毛がたってきているのが自分でも分かる。僕のことを横で見ている、隊長さんとおじさんには、もしかしたらハリネズミに見えているかもしれない。

なかなか、ゲリラ豪雨で川が氾濫した時のように、上手く水でトンネルが出来ない。僕が心の中で、天に向って祈った。

『ママ、キャットマザー、ドッグマザー、そしてどこかにいるかもしれない神様、そして青い地球の地軸、それから、それから、赤い地球の地軸、えーと、えーと、海の中の魚さんたち、お願いです、この国の人たちを助ける海のトンネルを僕に作らせて、力を貸して。この国の人たちは、良い人です。僕が悪魔をやっつけるから』って、祈り続けた。


       つづく