前回記事でも書いたように、最近平日は仕事でほぼ北陸に居ます。遠い地で仕事してたら嫁からメッセージが…。

 


「がーん、洗濯機壊れた~(>_<)。週末に帰って来たら見て~(´;ω;`)。」

 



 とりあえず、素早く修理窓口に連絡です。ウチの洗濯機は今はなきSANYOの斜めドラムタイプ、SANYOは2011年にPanasonicに吸収されましたから、買って10年ぐらいは経ってるはず(調べたらやはり2010年発売の機種)…洗濯機の部品保有期間ってたったの6年なのでもう部品が無いかも知れません。サポートを引き継いでいるPanasonicに問い合わせたところ、やはり2年以上前に補修性能部品が尽きていて修理不能との事…orz。

 メーカー修理不能なら自力でどーにかするしか無い(←このへんが技術屋の変態なところw)ので、出張から帰って早速チェックします。洗濯をスタートするとプシューッと音がしてしばらく水が出ますが、すぐに止まってしまい給水エラー「E11」と表示が出てピーピー警告音が鳴ります。嫁も一応マニュアル読んで水栓からちゃんと水が出てるか、ホースに詰まりはないか、給水口にゴミが詰まってないかは確認したけどダメだった、との事。こうなると原因は本体内部の給水弁でほぼ間違いありません。機械オンチの嫁にしてはよー頑張ったし、毎日洗濯物担いでコインランドリー通いしてたそうで偉い偉い、ここからはワシの担当や(^^)。あ、しもた…

 



 カッコ良ぉこう言うたったら良かった(笑)。似合えへんかw

 



 とりあえず開けてみました。赤丸の部品が給水弁です。

 



 動作させるとカチン、カチンというソレノイド独特の音がしますから、この銀色の部品は恐らく簡単な構造のソレノイドバルブ、バラしてみます。まず配線を戻しやすいようナンバリングしてから外し、赤丸部分のネジ3箇所を外します。

 



 このホース2本を抜いて手前に引けば給水弁ユニットが外れます。これらの写真は別にブログネタにする為に撮った訳ではなく、分解作業をする際は原状を写真に撮り、部品にマジックでマークを入れてから外すのが基本だからです。…つまり実はこのネタ、ヘボこいて直らなかったら闇に葬ってましたw

 



 コレが外した給水弁…ネジがトルクスです、頭が「*」型をしたネジで通称「いじり止め」。つまり、ドシロートが開けてみようとかゆめゆめ思うんじゃねーぞと言う作り手側からの無言の圧力なのです。でもワタシはトルクスぐらいじゃ怯みません(笑)。(←このへんが技術屋の変態なところその2)

 



 コレがトルクス用のレンチ、バイクのキーユニットとかも大抵トルクスなので普通に持ってます(←このへんが技術屋の変態なところその3)。このように真ん中に穴が開いた「THトルクス」対応のモノで20番サイズのが必要です。

 



 これでもかとばかり14本も留めてあるネジをひたすら外してパカッとな。左が流路側、右がソレノイドです。

 



 バルブは左から防水プランジャー、ダイヤフラム、流路ユニットが組み合わさっています。白い防水プランジャーは電気部品であるソレノイドが濡れないよう、ジュラ(ジュラコン樹脂)の密封ケースの中に金属のプランジャー(押し棒)を仕込んでコイルユニットの中に挿入し、磁力で前後に動かす仕組みです。この中で一番壊れやすいのはゴム製のダイヤフラムです。こういう動きモノの機械でモーターやソレノイドなんかが故障する事はほぼありません。真っ先にやられるのがゴム製部品、次にプラスチック部品が劣化して壊れます。

 



 そこでダイヤフラムを調べてみると…やはり劣化して裂けています。これが給水エラーの原因です。


 5つのダイヤフラムのうち3つが劣化して裂けていました…まぁ10年も使ってりゃなぁ(^^;。ダイヤフラムバルブの構造を簡単に書くと上の図のようになります。このバルブは常時閉(電力を切ると閉まる)で、普段は左のようにプランジャーを押し出すスプリングの力でダイヤフラムが流路ユニット中央の給水側の穴を塞いで水を止めています。ソレノイドのコイルに電圧をかけると右のように磁力でプランジャーが引っ込み、水道水圧でダイヤフラムが膨らんで水が排水側へ流れる仕組みです。

 ところが、ダイヤフラムが破れてしまうと上の図赤丸部分のようにのように水がプランジャーの方へ流れ込んでダイヤフラムを押してしまいます。つまりダイヤフラム表裏の圧力差が無くなるため一瞬開いてもまた閉じてしまうのです。だから給水を始めてもすぐ止まってしまい、エラーが出てたのです。

 



 このダイヤフラムを交換すれば直るのですが、最近は平日家に居ませんので部品を探して取り寄せてたら動くのは来週以降になります。毎日使うモノなので今すぐ機能だけ回復させなければなりません(←このへんの思考回路は…まぁフツーっすよね?)。このダイヤフラムの穴を塞いで交換部品を入手する間無理矢理持たせます。まず、裂け目に自転車のパンク修理に使うゴムのりを塗ります。

 



 さらに、水道の漏れ止めに使う自己融着ゴムのテープ(DAISOでも売ってます)を出来る限り薄く延ばして幅3㎜×長さ10㎜ほどのパッチを作り、裂け目に被せてシッカリと圧着します。裂け目の両面とも同じように施工しておきます。

 



 この状態で元通りに組み上げて電源を入れ、通常通り洗濯操作をすると…おー、勢い良く水が給水されます。とりあえず1週間これで持ちゃおK。

 



 何か代替部品が入手出来ないかとネットで情報を当たってみると、どうやら日立の洗濯機の給水バルブが同じ形状のダイヤフラムを使っているようです。日立のビッグドラム洗濯機、BD-V9600の給水弁を取り寄せました。ちなみにBD-V9400も同じようです。なお、こういう部品を買う時電話して機種を確認されて「他社製品の修理に流用します」とか言っちゃうと、(そのせいで品切れしたら自分の顧客に迷惑がかかるから)売ってくれない場合があります。シレッとウチは日立の洗濯機ですと答えましょう、オトナは方便も大事ッ(笑)。

 



 で、部品が届いたので翌週に本修理です。左がSANYOの、右が日立の給水弁です。一見左右対称のように見えますが流路やマウントが全然違うので日立のユニットをそのまま付けることは当然不可です。

 



 日立の給水弁を開けてみると同じ形のダイヤフラムが4つ(赤丸部分)ありました。

 



 プラスチックのコマの部分は形状が違うのでダイヤフラムだけを移植しました。組み上げて試運転してみると快調快調、ダイヤフラムがヘタってた時は動くには動いても給水に時間がかかって洗濯時間30分と表示されてるのに1.5倍ぐらいかかったりしてましたが、キチンと30分で終わるようになりました、成功です(^^)。あと10年は使いたおします(笑)。

 



 ついでに排水系もメンテしておきます。こういうドラム式洗濯機は排水が詰まりやすい欠点があります、原因は洗濯槽直下の排水フィルタから外部ホースのフランジ(外部ホース繋ぐとこ)まで横に渡っている、この機内排水ホース。ドラム式洗濯機は構造上どうしても排水系に水が流れるのに必要な斜度が取れないので、ここに糸クズや髪の毛、洗剤カスや水垢などが混じった「配管スラッジ」が溜まって排水不良になりやすいのです。

 



 とりあえず、外部の排水ホースを外して勢いよく水を流しこみ、スラッジを洗い出します。本体側もフランジから届く範囲で機内ホースのスラッジをブラシなどで掻き出します。

 



 ブラシの届かない機内ホースの奥の方はケミカルで掃除します。まず、このように排水ホースを排水フィルタより高いぐらいまで宙吊りにします。

 



 次に排水フィルタの穴から強アルカリで配管スラッジを溶かして落とすことができる洗剤、「パイプユニッシュ」をボトル半分ぐらい流し込みます。これ、家庭用品なんですけど結構危なくて、うっかり手に付いたの放置すると手ぇ溶けますから手袋しましょう。リンレイの「換気扇レンジクリーナー」も配管の汚れ滅殺するには良いのでレストア屋(古い機械直すのが趣味の変態)御用達なんですけど、これ長い配管に使うと結構逆流して危ないのでパイプユニッシュの方が無難です。

 洗濯槽に1リットル程度の水を入れて脱水運転(最短時間で良い)で動かすと、洗濯槽に入れた水が排水ホースに流れ込みます。ホースを吊り上げてあるので、水は床の排水口まで流れずホース内に溜まって先ほど投入したパイプユニッシュと混じります。このまま30分放置。

 ホース内のゴミが溶けたところで吊り上げていた外部ホースを下ろし、洗濯槽にバケツ1杯程度の水を入れて再度脱水運転すれば出来上がり(^^)。これは機械を開ける必要がないので誰でも出来て簡単、定期的にやると良いです。

 以上、またしてもマニアックな記事でしたが、何か皆様の参考になればと思いアップさせて頂きました(^^)。
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<技術屋の愚痴>
 以下は会社で言ったら出世はできない技術バカの愚痴なので、長いから読みたくなけりゃ読まなくていいです。

 10万円以上する洗濯機を買い替えることを思えば5000円程度で済んだのはかなりの節約ですけど、ダイヤフラム数個だけ必要なのに他社製給水弁まるっと買ったわけですから部品代だけ考えたら高いです(-"-)。こんなダイヤフラム後継機種や他の製品でも使ってるでしょうし、ホースや接手みたいな消耗パーツとして売って欲しいものですが、家電品の場合ほとんどの「ちょっとややこしいとこ」の補修性能部品は今回取り寄せた給水弁のようにある程度のまとまった「アセンブリ」でしか供給されないのです。技術や知識のない、構造も理解してなような半人前の電気屋でも壊れたところ丸ごと交換して色んな機器を素早く修理してカネ取れる様にしているのです。つまり、完全な売る側の都合です。

 最近はクルマなんかでもアセンブリ交換が当たり前で修理代高いですが、厳しい事言わせて貰えば技術の無さを顧客に転嫁せんといてほしい。せめて自己責任でどーにでもするって人にはパーツレベルで売ってぇなとオールドファッションドな技術者のワシは思うのです。アセンブリで補修性能部品を保有するとメーカーは機種ごとに似たような部品をたくさん持たねばならないため無駄が多く、保有期間が長く取れないのです。その点YAMAHA(バイク)の純正パーツなんか完全にバラのパーツ、それこそボルト1本から売ってくれますから、後継機の部品を旧車に流用できます。偉いよなぁYAMAHAは。

 そして何より、80㎏もある洗濯機がたかがゴム部品数個の損耗で粗大ゴミになるのってどう考えてももったいないしバカげていますしエコじゃないっす!洗濯機は家電リサイクル法の特定品目なので90%以上の部品がリサイクルされるとはいえ、そもそも粗大ゴミになんなきゃゼロエミッションなのですし。

 もうひとつ、家電ゴミの問題は日本国内だけの問題でもないのです。エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機等の家電リサイクル法の特定品目は本来ユーザーがリサイクル料金を電器店や正規の事業者に支払って処分しますが、世の中には特定品目の家電ゴミでも無料で引き取る業者ってのが存在します。もちろんリサイクル料金を負担して正規の処理をしているはずがありません、何をしてるかと言うと「中古家電」と称して主にアフリカの貧しい国に輸出しているのです。

 ゴミを海外に移転するのはバーゼル条約という国際法で禁止されていますが、「これはちゃんと動く中古品でゴミではない」と嘘をついて輸出しているのです、税関も一台ずつホントに動くか確認できないですからね。国内で処理すれば「金食い虫」の粗大ゴミも違法輸出すれば「商品」、その利ザヤを稼いでいるのです。

 実際は輸出される「中古品」の9割は粗大ゴミなので、現地では野積みされた粗大ゴミの山から貧しい人々が糊口を凌ぐ為にまだ使える部品をより分けたり、金属を回収したりして日銭を稼いでいます。腐食した電子機器から漏れ出す有害物質が土と水を、金属を回収するために野焼きで樹脂部分を焼き切る際に発生する有毒ガスを含んだ黒煙が空気を激しく汚染して、遠い遠い国で無辜の民がたくさん死んでいるのです。一義的には国際条約をすり抜けて貧しい国を食い物にする不心得な者の行いではありますが、道義的な責任は日本などの先進国にもあります。

 マイクロプラスチック対策でファーストフードのストローは紙製にしますとかスーパーの袋は有料にしますとか、重箱の隅のくっそしょーもないモン槍玉にあげてんと、まだ使えるモノがどんどんゴミになっていくのを止めんかい、滝クリの旦那の無駄イケメン環境相。銭ゲバ明太子財務相がそんなに怖いのか(-_-メ)。