絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開します(キンコン西野  つづき2 | 太陽と月のしずく

太陽と月のしずく

体と心の健康を、ケア・サポートする
あまやどりの店主 アリアこと 阿部直海のつぶやきブログです。

   おはようございます  アリアです♪
 
 
えんとつ町のプペルのつづきです。
 


 
「あなた、きょう、あのゴミ人間とあそんだの?」

「だいじょうぶだよ、母ちゃん。プぺルはわるいやつじゃない」

「その好奇心は父ちゃんゆずりだねえ」

町でただひとりの漁師だったルビッチのお父さんは、

きょねんの冬に波にのまれ、死んでしまいました。

みつかったのは、ボロボロにこわれた漁船だけ。

この町では、海には魔物がいると信じられていて、海にでることを禁止されていたの
で、

町のひとたちは「自業自得だ」といいました。

「ねえ、母ちゃんは父ちゃんのどこがよかったの?」
「照れ屋でかわいいところもあったでしょ。うれしいことがあると、

すぐにこうやってひとさし指で鼻のしたをこすって」


 
つぎの日、プペルとルビッチは、えんとつのうえにのぼりました。

「こわいよ、ルビッチ」

「しっかりつかまっていれば、へいきさ。だけど突風がふくから、おとしものには気
をつけてね」

「なにかおとしものをしたことがあるの?」

「うん。父ちゃんの写真がはいった銀のペンダント。

父ちゃんの写真はあれ一枚しかのこっていないのに、さがしてもみつからなかったん
だ」

ルビッチはドブ川をさしていいました。

「あのドブ川におちたのさ」


 
「ねえ、プぺル、『ホシ』って知ってるかい?」

「ホシ?」

「この町は煙でおおわれているだろ? だからぼくらには、みることができないけど


あの煙のうえには『ホシ』と呼ばれる、光りかがやく石っころが浮かんでるんだ。

それも一個や二個じゃないよ。千個、一万個、もっともっと」

「そんなバカなはなしがあるもんか。ウソっぱちだろ?」

「……ぼくの父ちゃんが、その『ホシ』をみたんだ。

とおくの海にでたときにね、ある場所で、頭のうえの煙がなくなって、

そこには光りかがやく『ホシ』がたくさん浮かんでいたんだって。

町のひとはだれも信じなくて、父ちゃんはうそつき呼ばわりされたまま死んじゃった
んだ。
でも、父ちゃんは『煙のうえにはホシがある』っていってね、

ホシをみる方法をぼくにおしえてくれたんだよ」

ルビッチはくろい煙をみあげていいました。

「『信じぬくんだ。たとえひとりになっても』」


 
つぎの日、まちあわせ場所にきたプぺルは、またくさいニオイをだしていました。

つぎの日も、そのまたつぎの日もそうです。

「プぺルの体は洗っても洗ってもくさくなるねえ」

ルビッチは、くさいくさいと鼻をつまみながらも、まいにち体を洗ってくれました。



 
ある日のこと。

プぺルは、かわりはてた姿であらわれました。

「どうしたんだいプぺル? いったいなにがあったんだい?」

なんと、プぺルのひだり耳についていたゴミがとれています。

「ぼくがいると町がよごれるんだってさ」

「耳は聞こえるのかい?」

「いいや、ひだり耳からはなにも聞こえなくなった。

ひだり耳のゴミがとれると、ひだり耳が聞こえなくなるらしい」

「アントニオたちのしわざだね。なんてヒドイことをするんだ」

「ぼくはバケモノだから、しかたないよ」


 
つぎの日、ルビッチはアントニオたちにかこまれてしまいました。

「やい、ルビッチ。デニスがかぜでたおれたんだよ。

ゴミ人間からもらったバイキンが原因じゃねえのか?」

「プぺルはちゃんと体を洗っているよ。バイキンなんてない!」

「とんだうそをつきやがる! きのうもあのゴミ人間はくさかったぞ。

おまえの家は親子そろってうそつきだ」

たしかにプぺルの体はいくら洗っても、つぎの日にはくさくなっていました。

ルビッチにはかえすことばがありません。

「なんでゴミ人間なんかとあそんでんだよ。空気をよめよ。おまえもコッチに来い」


 
かえりみち、トボトボとあるくルビッチのもとにプぺルがやってきました。

「ねえ、ルビッチ。あそびにいこうよ」

「……またくさくなってるじゃないか。そのせいで、ぼくはきょう、学校でイジメら
れたんだ。いくら洗ってもくさくなるキミの体のせいで!」

「ごめんよ、ルビッチ」

「もうキミとは会えないよ。もうキミとはあそばない」


 
それから、ふたりが会うことはなくなりました。

プぺルはルビッチと会わなくなってから体を洗うこともなくなり、

ますますよごれてゆき、ハエがたかり、どんどんきたなく、どんどんくさくなってい
きました。

プぺルの評判はわるくなるいっぽうです。

もうだれもプぺルにちかづこうとはしません。


 
・・・ つづく