読譜について | 音楽の窓から ~ディロルフ幸子ピアノ教室~

音楽の窓から ~ディロルフ幸子ピアノ教室~

長年ピアノを教えてきて、感じたことを綴っていきます

「何年もピアノを習っているのに、楽譜を読むのが苦手」という生徒さんは結構います。東京でも長野でも、よくご相談を受けます。もちろんニューヨークにもそういう生徒さんは大勢いました。中には、音符にカタカナでド、レ、ミがふってあって驚いたこともあります。

 

楽譜が読めないのには、二つのタイプがあります。一つは、音符も読めないしピアノもスラスラとは弾けないというタイプ。習い始めて1年以上も経つのに、この状態の場合は要注意です。もう一つは、音符は読めるのに、楽譜を見ながらピアノを弾けないというタイプ。どちらも、導入期に問題がありそうです。

 

前者の場合は、完全に先生の指導方法に問題があるので、早めに対策を考えたほうが良いでしょう。後者の場合は、色々なケースが考えられます。例えば、ピアノを弾き始める年齢が早すぎた時も、手の大きさが十分ではないとミスタッチをしやすいので、心配になって手を見る癖がつきます。そうすると、鍵盤と楽譜を交互に見るたびに曲が止まってしまい、スラスラと弾けるようにはなりません。また、音楽教室のグループのレッスンからピアノを始めた場合も、ほとんどの生徒さんが読譜が苦手です。私も、有名な音楽教室のピアノ科で講師をしていた経験がありますが、グループレッスンを2年終えて卒業し、ピアノ科に移ってきた生徒さんたちのほとんどが、楽譜を見ながらピアノを弾くのが苦手でした。グループの場合、先生が一人一人に付き添ってレッスンするわけにはいかないので、やはり手を見て弾く癖がつきやすいのは仕方がありません。

 

また、個人、グループにかかわらず、他にも読譜を苦手にする要因はあります。発表会やコンクール、グレードテストなどの機会が多く、一つの曲にかかりっきりになる期間が長いと、新しい曲に触れるチャンスが少ないので、読譜力はなかなかつきません。私は生徒さんたちに、発表会直前までいつも通りのテキストの曲を次々練習させながら、発表会の曲にも取り組ませます。そうすることで、発表会が終わっても読譜力の後退が起きず、確実に読譜の力が積み上げられていきます。このことは特に、脳の臨界期を迎える前の小学校高学年ぐらいまでの生徒さんには、非常に重要なことなのです。次回は脳の臨界期についてお話ししようと思います。