中国経済が減速した理由 | 『月刊日本』編集部ブログ

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 上海市場が大きく揺れています。その影響からか、日本やアメリカの市場も乱高下を繰り返し、世界同時株安の様相を呈し始めています。

 一部では、中国政府は金融の流れをかなり自由にコントロールすることができるため、バブル崩壊は起こらない、と主張する人もいます。中国で長く暮らしたことがある人ほど、このような議論をする傾向にあるようです。

 しかし、これは完全に的外れです。資本主義を人為的に操ることなど不可能です。マルクスの『資本論』を読めば、このような議論が間違いであることはすぐにわかります。現地を訪れることは重要ですが、現地にいれば現地のことがわかるというわけではありません。「現地にいる(た)」ということに胡坐をかいている議論には、眉に唾をして臨むべきです。

 それでも、もし中国のバブル崩壊にブレーキがかかる可能性があるとすれば、それはアメリカが大きなアクションを起こした時です。もっとも、最近の米中対立の激化を考えると、その可能性は五分五分と言えるでしょう。

 ここでは弊誌2014年12月号に掲載した、産経新聞社特別記者の田村秀男氏のインタビュー記事を紹介したいと思います。昨年インタビューしたものですが、内容は古びていません。(YN)


『月刊日本』2014年12月号
田村秀男「中国経済はマイナス成長だ」より

中国経済は実質的にマイナス成長だ
―― なぜ中国経済は減速し始めたのでしょうか。
田村 中国の経済成長はもともと不動産開発主導型によるものでした。とりわけリーマンショック以降は、銀行融資を3倍に増やして不動産開発を行いました。それだけお金を使ったのだから、景気が立ちあがるのは当然の話です。これにより中国は8%以上の成長を実現してきました。
 しかし、こうした過剰投資の結果、中国には住み手のない高層マンションが立ち並ぶようになりました。そのため、不動産価格も下落しています。もはやこれ以上不動産に投資することはできません。
 中国当局は、実質成長率は7・4%などと発表していますが、私は実質的にはゼロ成長かマイナス成長だと見ています。それは、中国の鉄道貨物輸送量の伸び率から推測できます。中国のGDPの5割は物の生産で占められており、物の生産が活発になれば鉄道貨物輸送量も増えます。実際、李克強首相も遼寧省党書記時代に、中国のGDP統計は作為的で信頼できないが、「重量をもとに運賃を計算する鉄道貨物量はかなり正確にGDPと連動する」と述べています。
 これまでの鉄道貨物輸送量の推移を見ると、中国当局が発表する実質成長率が8%を割り込んだ時、鉄道貨物輸送量は前年同月比でゼロ以下になります。リーマンショック直後、中国当局は実質成長率を6・6%と発表しましたが、鉄道貨物輸送量はマイナス6%でした。
 現在の中国も同じような状況にあり、鉄道貨物輸送量はマイナスです。それ故、中国の実質成長率もゼロ以下だと思います。
 こうした状況にも関わらず、中国は平均賃金を年率で名目10%ほど上げています。賃上げをしなければ、国内の共産党体制への支持を維持することができないからです。これははっきり言って自滅路線です。また、労働者の賃金が上がっているため、日本企業を含む外資がミャンマーやベトナム、インドなどへ移ってしまっています。
―― 中国のバブルが崩壊する危険性はありますか。
田村 それは「バブル崩壊」をどう定義するかによりますが、「バブル崩壊」とは厳密に言うと、金融機関に不良債権がたまり、信用不安が起きることです。
 現在、中国の不動産には買い手がつかないので、相場が成り立たない。巨額の借り入れで不動産開発してきた地方政府の債務が膨れ上がっています。貸し手である中国の四大商業銀行の資産内容が劣化し、不良債権が膨張しているはずです。
 ところが、四大商業銀行の不良債権がどんどんたまっているという話は一向に出てきません。また、北京の顔色をうかがう米英系中心の四大会計事務所もそのことを指摘しません。
 不良債権は透明度の高い会計システムのもとで初めて露見するものです。中国が「これは不良債権ではない」と言って、実態を隠してしまえば、不良債権は増えないのです。
 また、中国のバブルが崩壊して一番困るのはグローバル金融の総元締め、アメリカです。それ故、アメリカも敢えて不良債権の問題には言及しない。中国とアメリカはいわば「隠蔽の共同体」であり、景気が回復すれば不良債権も揉み消せると考えているのでしょう。中国のバブルは、90年代のバブル崩壊時、米英系金融機関から不良債権をチェックされ、国際金融市場から締め出されかけた日本とは大きく異なる状況にあるのです。(以下略)




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