イスラム国事件 日本は歴史的岐路に立たされた | 『月刊日本』編集部ブログ

『月刊日本』編集部ブログ

日本の自立と再生をめざす言論誌

本誌3月号21日より発売しています。

 

今月号では「イスラム国事件 日本は歴史的岐路に立たされた」という特集を中心に、内憂外患の諸問題について議論を展開しました。

 

衆議院議員の亀井静香氏は、国内外の様々な問題に言及しながら、日本の危機的状況を力説しました。

 

たとえば郵政です。今年9月以降、日本郵政の上場が予定されていますが、これについて亀井氏は「外資に株式が奪われる危険性がある。アメリカはもともと、350兆円の郵政マネーを狙っていたんだ」と述べたうえで、「外資は、日本郵政という巨大マシンを使って利益を上げようと狙ってい る。その一つの方法が株式の取得だ。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式がひとたび外資に握られれば、両者の資金の運用権を奪われることになる。株式の過半数 に満たなくても、ある程度株式を握れば影響力を行使できる。外資の狙いは日本郵政に対する政府の関与の余地をなくして、自らの影響力を拡大することだ」と 警鐘を鳴らしています。

 

とはいえ、「カイカク!」が声高に唱えられるものの、日本経済は一向に良くなりません。亀井氏は「日本経済が沈んで行ってい る。あらゆる経済指標が悪くなっている。生産も消費も国際収支も下がっている。政府が発表する経済指標は作られたものだ。政権に都合のいい指標を作ろうと しても作れないほど、経済は悪化しているのだ。雇用はよくなっているというが、非正規雇用が増えているだけだ」と指摘したうえで、「こういうことをやって いたら、日本は再びテロの時代に入る。井上日召の一人一殺というテロの時代だ。政党にも力がない。マスコミもだめ。他に手段がないところまで追い込まれれ ば、そういう時代になる」と危機感を募らせています。

 

では、どうするのか。亀井氏は「国民の意志が全然政治に反映されていない。こうした経済状況で呻吟している国民の声が政治に届いていない。国民の声を、国会にきちんと届けていかなければいけない。ところが、いま野党にそれは期待できない」、だから「俺は平成の一揆を起こす」という決意を表明しています。

 

日本の内憂外患は、アメリカとの関係を抜きにして語ることはできません。国際政治・米国金融アナリストの伊藤貫氏は、戦後の日米関係について「米国の狙いは『属国日本』の維持だ」と強調しています。

 

伊藤氏は「第二次世界大戦中から米政府の最重要目標は、戦争終結後の日独両国を、永遠に対米従属する状態におくことでした。単 に戦争に勝つことが目的なのではなく、『勝った後に、日本を二度と独立国にしない』ということです。この方針に沿って、アメリカは対日政策を進めました」 と指摘しています。

 

その象徴が国防です。伊藤氏は「ダレスは朝鮮戦争勃発に対応して、日本に自衛隊を作らせましたが、『自衛隊には永遠に攻撃能力 を持たせない』と決めていました」「マサチューセッツ工科大学にリチャード・サミュエルズという軍事学者(日本専門家)がいます。彼は「『日本の自衛隊 は、アメリカの州兵組織みたいなものだ』と述べています。『自衛隊は米軍の補助部隊としてしか機能しない』と。米政府の狡猾な対日政策によって、自衛隊は 独立した軍隊として戦えないように作られています。自衛隊がいかに高価な戦闘機やイージス艦を買わされても、独自の行動をとろうとすると、ソフトウェアや 軍事衛星の機能がとめられて日本の防衛機能がマヒするように仕組まれています」と指摘しています。

 

伊藤氏は、結局、「この徹底した日本封じ込め政策を進めたダレスは、共和党員です。米民主・共和両党は過去70年間、『日本を独立させない、日本を永遠にアメリカの属国にしておく』という点で完全に一致しています」と結論づけ、日本の保 守論壇で主流を占める「親米保守」の限界を指摘したうえで、「勿論、米政府はそれを必死になって妨害するでしょうが、集団的自衛権よりも、日本の自主防衛 能力構築の方がはるかに大切です」と訴えています。

 

このような状態のまま集団的自衛権を行使して、中東戦争に突き進むことは甚だ疑問ですが、イスラム国(IS)による邦人人質殺害事件が発生し、日本は中東戦争の当事者になってしまいました。そこで今月号では「イスラム国事件 日本は歴史的岐路に立たされた」という特集を組みました。以下、その要旨を示したリード文を紹介します。

 

<イスラム国事件勃発―日本は歴史的岐路に立たされた。>

我が国はいま、重大な歴史的岐路に立たされている。

欧米キリスト教国と轡(くつわ)を並べるのか、それともアジアの一員として名誉ある地位を占めるのか。

イスラム国による日本人殺害事件を契機に、安倍政権はその選択を迫られている。

我が国はイスラム世界と長い交流の歴史を有してきた。

日露戦争勝利は、トルコはじめイスラム世界に親日感情を醸成した。

玄洋社など在野の日本人は、米欧の植民地支配に抵抗する諸民族を支援し、イスラム世界の志士との交流を深めた。

だが、今回の事件で我が国は米英と同列の「十字軍」と見做され、「罪を償わせる」との安倍発言は、イスラム国への宣戦布告と受け止められた。

テロには絶対屈してはならない。

だが、軍事力だけで解決しようとする米英の手法で問題は解決しない。それは憎しみの連鎖と、血で血を洗う果てしない戦闘をもたらすだけだ。

いまこそ我が国は、キリスト教世界とイスラム世界の調停役を目指し、困難ではあるが、主体的な道を模索するときではないのか。

 

本特集では、様々な論客のインタビュー記事を掲載し、イスラム国問題に多角的に迫りました。少し長くなってしまいましたので、ここでは特集記事のタイトルだけ紹介したいと思います。

 

「イスラム国の拡散は食い止められない」佐々木良昭(笹川財団特別研究員)

「ヨルダン緊急訪問――欧米協調主義から脱却せよ」木村三浩(一水会代表)

「危機管理なき安倍政権の対テロ戦争」栁澤協二(国際地政学研究所理事長)

「『世界イスラム革命』が始まった」佐藤優(作家)

「キリスト教文明とイスラム文明の対立を仲裁せよ」小松啓一郎(コマツ・リサーチ・アンド・アドバイザリー代表)

「イスラム国がもたらす世界大混乱」馬渕睦夫(元駐ウクライナ大使)

 

他にも読み応えのある記事が満載です。ご一読頂ければ幸いです。(YS