「戦後レジームからの脱却」とは何か | 『月刊日本』編集部ブログ

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 安倍総理は「戦後レジームからの脱却」を合言葉に、集団的自衛権の解禁や教育再生などを推し進めています。この「戦後レジーム」とは恐らく、日本が敗戦の結果、連合国から押し付けられた制度や価値観のことを言うのでしょう。ということは、それは必然的に反米的なものとなるはずです。

 

 しかし、安倍政権はTPP交渉参加を表明し、辺野古移設を強行しようとしています。それらは全てアメリカの国策に則ったものであり、その意味で親米的です。これでは安倍総理の目指す「戦後レジームからの脱却」は困難なように思います。

 

 そもそも「戦後レジーム」は日本だけに当てはまるものではありません。それは、第二次世界大戦後の国際社会全体を規定しているものです。日本に「戦後レジームからの脱却」を唱える資格があるのであれば、他国にもその資格があるはずです。その観点からすれば、中国が尖閣諸島を奪おうとしていることも、中国なりの「戦後レジームからの脱却」だと言えるでしょう。

 

 安倍総理の言う「戦後レジームからの脱却」は極めて曖昧な概念です。それが何を意味するのかもっと明確にしない限り、安倍政権の基盤が揺らいでしまうことは避けられないと思います。

 

 ここでは、弊誌4月号にご投稿いただいた読者の方の論文を紹介したいと思います。(YN)

 

 

安倍総理は反米なのか、親米なのか  田宮幸太郎

 

 安倍総理は15日にもTPP参加を表明すると言われています。安倍政権はまた、普天間基地の辺野古への移設も強行しようとしています。これだけを見れば、安倍政権はかつての自民党政権と変わらない単なる親米保守政権のようです。

 

 ところがその一方で、安倍総理は河野談話を否定するかのような言動を繰り返したり、さらには12日の衆院予算委員会で、東京裁判は勝者の断罪であるという見方を示しました。慰安婦問題が韓国と同程度にアメリカでも話題になっていることを考えれば、これらの発言は共に極めて反米的なものだと言えるでしょう。

 

 はっきり言って、安倍総理が何をしたいのかが全くわかりません。もしTPP交渉で聖域を守りたいのであれば、アメリカの支援は不可欠でしょう。しかし、これほど反米的な姿勢を示していたのでは、それも難しくなるのではないでしょうか。

 

 あるいは、TPPや普天間はアメリカに譲るから、歴史問題は日本の言い分を通してもらうという「密約」でも結んでいるのでしょうか。しかし、東京裁判史観を否定するという、戦後の歴史観をひっくり返すようなことをアメリカが軽々と認めるとは思えません。

 

 安倍総理は「戦後レジーム」からの脱却が必要だと主張し続けていますが、「戦後レジーム」とは何も日本だけに当てはまることではありません。それは国際社会全体に当てはまることです。

 

たとえば、アメリカが日本に沖縄の施政権を返還したことも「戦後レジーム」だし、中国が戦後しばらく、尖閣諸島の領有権を放棄していたことだって「戦後レジーム」です。

 

 仮に日本が「戦後レジーム」から脱却すると言うのなら、アメリカや中国が、それなら俺たちだって「戦後レジーム」から脱却させてもらうと言い出すかもしれません。少なくとも、彼らにもその権利はあります。そうなれば、アメリカが沖縄の施政権を日本から取り戻し、中国が尖閣諸島を占領することも考えられるでしょう。

 

 安倍総理の主張は常に一人よがりで独善的です。東京裁判が連合国による敗戦国の断罪と言うのなら、日本が朝鮮の人たちに強いた慰安婦だってそうではないでしょうか。




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