多分、アクトに入って初めての座学だった。

先生
「どうしてこの戯曲は『紙風船』というタイトルなのか?」

と、尋ねた。
は?
って思った。
劇中には紙風船が登場したし
タイトルの意味なんか考えたりしない

『蜘蛛の糸』は蜘蛛の糸の話だし
『坊ちゃん』は坊ちゃんの話だし
『走れメロス』はメロスが走る話だ

19の僕はそう思った

先生
「壊れやすくて大切にしないといけないからだ」

そう言った
いともあっさりと
こともなげに
ただそう言ったのだ

その瞬間に戯曲は小説と違うと感じた
読んでも、それだけでは分からない
役者が何か使命(適切ではないけど使命とする)を帯びてそれを感じさせなければ
本質は伝わらないのだと感じた

それ以来
僕は戯曲に書かれた事よりも
それが伝えようとする事柄を優先するようになった

さて
来月は『紙風船』だ
美しい儚い温かな世界を、あなたに
そして
毎日を、永遠に

それが僕のお仕事

小西でした