劇団ダダン2019年度卒業公演が始動いたしました。
つきましては団員によるリレーブログが本日よりスタート致します。
お題は特に決まっておりませんので、各団員が自由に書く記事をどうぞお楽しみください。
トップバッターを務めますは、今回卒業する代唯一のオス。私「上善如水」でお送りします。文体が整いませんが、以下はほとんど常体にて書き連ねます。


HUMAN LOST-人間失格-を先日鑑賞した。日本有数の3DCG技術を持つポリゴン・ピクチュアズと、宮野真守氏を始めとする豪華声優陣による、圧巻のSF作品であった。ぜひ予告だけでも見て欲しい。ディストピア的なモノがお好みなら、きっとお気に召しますゆえ。HUMAN LOST 人間失格 予告編

内容について細かく語るつもりは無いが、本映画の原典であり、私が愛読した「人間失格」についてお話したい。

手垢のついた題材ではあるが、私は初めてこれを読んだ時、自分のことをまざまざと描かれているようで、非常に気味が悪かったことを覚えている。
一度は誰しも読むであろう名著であるが、一応あらましを僭越ながら以下に。

「恥の多い生涯を送ってきました。」
の一言から始まり、自分に対し人間社会に適合できない=「人間、失格」との烙印を押すに至るまでの主人公葉蔵の一生を描いた、太宰の半自伝的作品である。
社会を生きるために平然と嘘をつき、場を取り繕い、裏では何をしているか分からない。そんな”普通の”人間を恐ろしく感じる一方、なんとかして生き延びるために道化を演じることで自分の命と心を守ろうとした男が辿る壮絶な人生譚だ。

今これを書いている筆者にも、少なからずこういう面がある。
いや、現代社会に生きる我々には、どうしたって何かを「演じる」要請が出てくるだろう。

おっと急に劇団員みたいなことに繋がったぞ。まぁそんな堅苦しいことを書くつもりは毛頭ないので、どうぞ通勤通学の暇潰しにでも読んでください。

さて―。
会社での自分、学校での自分、家族との間でさえも演じられかねない自分。そう言った多面的な人格でもって、我々各人は構成されているだろう。
自室にひとり、無為な時間を過ごしている間でさえ、私は「自分が自分であるのか?」という疑問に苛まれ、呻吟しながら日々を過ごしている。

他人との絶え間ない関係性によって、自分の存在に悩むというのは、誰しも抱える現代の闇であろう。しかし、こうした苦悶を緩和するのも、また他者なのだ。
単純な他者というよりも、自分の存在を肯定的に見てくれる他者である。

その点「人間失格」の葉蔵は非常に人間らしかった。自身の在り方に不安になり、数々の女性との関係を持つことでなんとか自我を保とうとした。しかし、自分が見初めた女性が汚されたことから事態は急転直下。結果的には女性関係すらも彼の心を人間社会に繋ぎ止めること能わず、薬物依存から精神病棟行きとなった。

私も独り身の寂しさから突飛な行動を取っては「…………?」と冷静になっては苦悶することがよくある。
そもそもパートナーがいないと生活が全くもって成立しないタイプの人間なので、葉蔵の気持ちはなんとはなしに分かる。
少し話は逸れるが、先日誕生日を迎えた時、親から「お祝いしてくれる彼女はいないの?」と精神攻撃を食らった。

というか、「私にパートナーがいない」というのは、言い換えれば「パートナーのもとに私がいない」ということである。
え?めっちゃ可哀想やんそれ。こんないい男が傍におらんとか。



閑話休題。
葉蔵のように堕落していく、またはそうした動物的とも言える人間の姿を見ると、私は無性に心が躍る。
歌舞伎町の朝日に照らされながら盛大に嘔吐している若い女性。ワンカップの酒を片手に、公園で何かに物申す、歯の抜けまくったおじさん。タバコを吸いながらパチンコ台をぶん殴っているおばさん。
そういった人々こそ、私にとっては美しい。

その逆、私は社会的な人間模様を見るのが非常に苦手である。
電車に揺られながら死んだような目をして、急病人介護で遅延した車内で悪態を吐く人間模様は、この世の地獄である。

とはいえ、社会にこれから擲たれる我々は、どうしたってそういうものに慣れなければならない。
強制的にすり減らされる中で、どうにかこうにか、自身の心を守らねばならないのだ。
かのブラック・ジャックも言っていた。「人は心で生きる生き物だ。心を扱えるメスがあれば、私はそれを振るうだろう」と。

自衛も勿論だが、心を守ってくれる存在がいるのがやはり一番だろう。
居場所でもいい。食べ物でもなんでもよいのだ。
そして、他人のそれを尊重しあえるようになりたいものだと、最近は思う。

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さて、今日も今日とて一日が始まりましたね。望もうと望むまいと。
私は洗濯やらをこなして稽古に向かいます。皆様もお身体にはお気をつけて、今日を過ごしてください。
劇団ダダン卒業公演はスタートしたばかりでございます。
2月上旬の上演を予定しております。
詳細はTwitter公式ホームページにて随時お知らせしてまいります。
当ブログでも折に触れて告知させて頂きます。
それでは次の更新をお待ちくださいませ。
ここまでは上善如水がお送りしました。
お読みいただきありがとうございました。