昔はあって今は無いもの。
それは歯の神経。
最近歯が痛くなって来たので歯医者へ。
正直、『どうせ大したことないよ』と高を括っていた。
自分の勘がそう囁いていた。
歯科に到着。
レントゲンを撮ると歯の側面に見事な穴が。
「これは神経抜いておいた方がいいね。」とお医者さん。
ビックリするほど大きい虫歯に驚く私。
診察台が倒される。頭が下がり過ぎだ。
目がタオルで隠される。
歯茎に刺される麻酔、二本。
ブッシューという感覚もなし。
刺された上歯茎の左側が徐々に麻痺してくる。
感覚が鈍い。
「痛くなったら左手を上げて下さい。」という先生の声。
口の中に入ってくる医療器具。
ギュイインとスイッチが入るドリル。
背筋がゾクゾクする音である。
ゴゴゴゴゴ!!
ドリルが歯に当る。
しかし、痛みは無い。そりゃあ、麻酔二本差されてたら当然な事だ。
これで痛かったら恐ろしすぎるわ。
ドリルが歯を削るのが見えないのは楽。
でも見えないのは見えないので少し嫌。
ドドドドド……ドドドドド……
全身にドリルの振動が伝わって行く。
脳に響くドッドッド…ドッドッド…!
「それじゃー楽にしてください。」との声。
『良かった、これでドリルも終わりか』と一息つこうとした時…
「また、口を開けて下さい。」
次はさっきの音より重低音が響くドリルが投入。
ゴゴゴギュゴギュグオオオーーーー!ゴゴゴギュゴギュグオオオーーーー!
ゴゴゴギュゴギュグオオオーーーー!ガリゴゴゴギュゴギュグオオオーーーー!
ゴゴゴギュゴギュグオオオーーーー!グギャガリゴゴゴギュゴギュグオオオーーーー!
体全体で激しいビートを刻む。
肉体(からだ)では痛みを感じないけど、精神(こころ)には痛恨の一撃ッ。
『まな板の鯉ってこういう事なんだあ。』為されるがままの私。
『そういえば、この前金属の板にドリルで穴を開けたよな。』
『工作材料もこんな気分で穴を掘られてたんだろうか!?』
『俺はアルミ板。鉄板だ。』
もう何が何やら。
こんな治療(ドリルでわっしょい)を幾度受けた。
願う事は早く終わってくれのみ。
意識も消えかけた時、ドリルが止まる音が聞こえてきた。
『やっと次の工程にはいるのか。』ほっとする。
次の治療は何かを歯に突っ込まれて根幹の洗浄。
ゴリゴリと歯の中の神経を掻き出しているけど麻酔が強すぎて無痛。
これは良かった。ドリルより安心出来る。
治療を終了。
お仕舞いには歯に消毒剤を詰め込み、セメントで蓋をした。
ただし、噛み合わせが可笑しい。
家に帰ってみて鏡を見ると歯の長さがかなり短くなっていた。
最低であと6回通院が必要らしい。
出来れば次回以降は歯科衛生士のお姉さんに歯を磨かれたい。
それが夢。
みなさん歯の健康は全身の健康のスタートです。
歯を失わないで良いように、しっかり気をつけましょう。
お後がよろしいようで。 悟