オートバイタクシー。日本人は「バイタク」と略します。
タイ語で「モーターサイ・ラップチャーン」。(「モーターサイクル」と明瞭には発音しない)
バンコクを旅行したことがある方々も、通りの一角にオートバイを止め、ゼッケン入りチョッキを羽織ってるオジサン、オニーサンの集団を見かけたことがあるかと存じます。
また、身なりのよいミニスカートのOLがオートバイの後ろで横座りになっている光景を見かけたこともあるかと思います。
最近はオネーサンの運転手も見かけるけれど、バイタク集団には集団のオキテがあるので、バイタク利用者がオネーサン運転手を指定することはできないし、バイタク集団もミニスカ女性客を巡って争うこともない。
バンコクの道路地図はマンガ的に喩えれば、魚の骨格、大木の幹と枝葉、に似ています。
大通りは「タノン」、小路は「ソイ」と称され、ソイのなかには1キロ以上の距離に及ぶモノもある。
オートバイタクシーは元来、小路内住人の移動手段としてスタートしたのだそうです。
お値段は3~5バーツ。
「ソイくちの屋台でソバ3人前を買ってきて。トウガラシ粉も忘れるんじゃないよ」とお使いを頼むことも可能。
日本人にとっては「健康のために、歩こう」の距離でも、タイ、カンボジアには「汗水たらすのは愚かしいことだ」とでもいいたげに、せいぜい1キロの歩行すらも厭う人生観があるものなのか、そういう商売も成り立つのかも知れない。
タイと同様の暑い気候のマレーシア、シンガポールに、オートバイタクシーはありません。
が、バンコクの交通渋滞の慢性化にともない、オートバイタクシーは大通りの中・長距離移動にも活躍しはじめることとなり、僕もバンコクに来たばかりの頃はオートバイのうしろにまたがり、「ああ、僕はタイにいるんだなあ」と意味の希薄な自己満足にひたることもありました。
もちろん危険も多い。
大通り上でも短い距離ではヘルメットを貸してくれない場合もあるらしい。
つい先日は、知り合いの韓国人老婦人がバイクからゴロンと投げ出され、路面に頭部をゴチンと打ちつけ、鼻血まみれのまま病院に運ばれた、という凶報が伝わってきた。
「それじゃあ、もうダメかも知れないねェ」「あのバアサン、バンコクに身寄りはいなかったよね」「ギースさんがいちばんの身寄りだったんじゃないの?」などと僕たちは半ばホンキで追悼モードに入ってしまったのだけれど、その数日後には「みなさ~ん、今晩、お食事しましょうね~!」とウルサイ電話をかけてきたので、僕たちは舌を巻くしかなかった。
それはけっして笑いゴトではないので、たしかに安くて便利なバイタクではあっても、高架鉄道や地下鉄が走ってないエリアを動く時はiPod片手に「心と時間にゆとり」をもって、タクシーを使うことにしています 。

