内部被曝は外部被曝より危険か? 発がんリスク同じも計測に手間
「東京電力の福島第1原発事故に関連して、放射線被曝(ひばく)に『内部被曝』と『外部被曝』があると聞きましたが、どう違うのですか。内部被曝の方が健康に悪影響を及ぼすのでしょうか」=東京都台東区の主婦(31)
■プルトニウムが一番やっかい
外部被曝は空気中や衣類に付着した放射性物質など外部から放射線を浴びることを指す。これに対し、内部被曝とは呼吸や飲食の際に放射性物質そのものを取り込み、体内から放射線を浴びることをいう。
防衛医大の加地辰美教授(放射線医学)は「内部被曝で怖いのは、放射性物質が体内にある限り、被曝し続けて遺伝子が傷つけられ、将来がんなどの原因になることだ」と説明する。
内部被曝が人体にどう影響を与えるかは、放射性物質の種類や性質、人間の臓器・組織ごとの感受性などによって異なる。例えばヨウ素131は甲状腺に集まりやすく、セシウム137は筋肉、ストロンチウム90は骨、プルトニウム239は肺に蓄積されやすい。
加地教授は「内部被曝の場合、一番やっかいなのはプルトニウム」と指摘。プルトニウムが出すアルファ線は、物質を突き抜ける透過力が弱いため外部被曝の心配はないが、体内に入るとベータ線やガンマ線に比べて20倍のエネルギーで遺伝子を傷つけるからだという。ただ、プルトニウムは重く、遠くへ飛ばないため、今回の事故でも検出されたのは福島第1原発の近辺だけだ。
衣類や皮膚に付着した放射性物質は簡単に洗い流せるが、内部被曝の場合は不可能。ただ体内に入った放射性物質は時間の経過とともに尿や汗などから排出される。ヨウ素は120日、セシウムは70日、ストロンチウムは50年、プルトニウムは200年ごとに半分排出されていく。これを「生物学的半減期」という。
一方、一般的に「半減期」と呼ばれるのは「物理学的半減期」のことで、放射性物質が自然界で時間とともに半分に減少する期間のことをいう。ヨウ素は8日、セシウムとストロンチウムは約30年、プルトニウムは2万4千年だ。
生物学的半減期と物理学的半減期を合わせた「実効半減期」が、実際に体内から半減する期間を示すものとなる。ヨウ素は7~8日で、仮に3月の事故直後に内部被曝したとしたとしても、3カ月以上経過した現在では4千分の1以下になっているとみられる。セシウムは約69日、ストロンチウムは約18年、プルトニウムは約200年だ。
■全国で100台程度の特殊計測器
では低線量の放射線を長期間浴びた場合、どの程度で発がんなどのリスクがあるのか。人体への影響は、シーベルトで表されるが、広島と長崎に投下された原子爆弾などのデータから、世界的な放射線防護の基準を勧告する国際放射線防護委員会(ICRP)は、積算線量で100ミリシーベルトを目安としている。
具体的には、100ミリシーベルトを浴びた場合、放射線によるがんが原因で死亡するリスクは最大で0・5%。日本人のがんによる死亡確率は33・3%だから、100ミリシーベルト浴びると、33・8%になるという計算だ。
では同じ線量の場合、内部被曝と外部被曝では、どちらが発がんリスクが高いのか。ICRP委員を務める大分県立看護科学大の甲斐倫明教授(放射線防護)は「遺伝子の傷は、線量に比例して増えていくことから、被曝線量が同じなら発がんリスクも同じと推定される」と解説する。
問題は被曝線量の測定方法だ。外部被曝は線量計などで簡単に測定できるのに対し、内部被曝はホールボディーカウンター(WBC)という特殊な計測器や尿などの精密検査でしか測ることができない。
WBCは測定結果が出るまでに時間がかかるほか、各地の原発や医療機関などに設置されているが、全国で100台程度しかない。
6月には、福島第1原発で、緊急時の被曝限度である250ミリシーベルトを超える作業員の存在が相次いで判明。9人全員が内部被曝の線量が外部被曝を上回ったことなどから、原発周辺住民の間で内部被曝に対する不安が広がった。
原因は判明していないが、これは作業員が、呼吸による内部被曝防止に有効なマスクを着用せず、線量が高い空気を吸い込んだためとみられている。
汚染された牛乳や野菜などの出荷も厳しく制限されており、周辺の住民に同レベルの内部被曝はないとみられるが、甲斐教授は「不安を取り除くため、周辺の住民にも内部被曝調査をすることが重要だ」と訴えている。(河合龍一)
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放射性物質拡散、生態系に与える影響は未知数
放射性物質はいったん環境に放出されると長期にわたって生態系に影響を与え続ける。しかし、事故後25年が経過したチェルノブイリでも、その全容は明らかになっていない。同じ「レベル7」の福島原発の事故についても長期間の調査と結果の公表が求められるだろう。
2010年にフランスで制作されたドキュメンタリー番組「被曝の森はいま(原題、Chernobyl, A Natural History?)」では、汚染されて人が入らなくなった地域に動植物が増えている様子が報じられた。放射線の影響を回避して繁殖できるネズミも見つかった。一方で、ツバメには放射線による大量死や奇形が発生しているという。
CSRのコンサルティングを行うレスポンスアビリティ(東京・品川)は、持続可能なビジネスには健全な自然が提供してくれる「生態系サービス」が不可欠として、企業による生物多様性保全の取り組みを推進してきた。
足立直樹代表は「放射線は、遺伝情報を伝達するDNA(デオキシリボ核酸)を傷つける。しかし、損傷したDNAの修復能力など、放射性への耐性は種や個体によって異なる。現れる影響は一様ではない」と説明する。
日本にも「放射線生物学」という学問分野があるが、医療目的の研究が主であり、ヒト以外の生物に関する知見は限られている。福島原発事故後も、生態系への調査は進んでいないようだ。
足立氏によると「放射線によって一度DNAに傷がつくと、その影響が次世代以降に現れる場合がある。食物連鎖による濃縮や、生物の移動に伴う放射性物質の拡散も無視できない」。網のように絡み合った生態系における汚染の拡大は複雑だ。生態系の仕組みは知られていない部分も多く、人間社会への本当の影響は誰にも分からない。
国際生物多様性年の2010年には、名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議が開催された。179カ国が集い、「2050年までに、生物多様性が評価され、保全され、回復され、そして賢明に利用され、それによって生態系サービスが保持され、健全な地球が維持され、全ての人々に不可欠な恩恵が与えられる」という「愛知目標」を採択した。日本は本来であれば、この目標の達成のために率先して行動すべき立場にある。
生命を脅かす放射性物質の拡散に対する各国の反応は、当然ながら厳しい。海洋への汚染水放出の際には、日本の配慮不足が問題になった。
足立氏は、「あらゆる生き物が放射性物質の影響を受ける可能性がある。それは目に見える変化とは限らず、私たちが気付かない場合もある。見えないから影響なし、とはとても言えない」と、生態系汚染を軽視する危険性を強調した。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年7月4日
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原発の危険性語る
◇「平和利用ならいい、間違い」
原子力の研究者の立場から原発の危険性を告発している京都大原子炉実験所助教、小出裕章さん(61)の講演会「福島原発震災から原子力の終焉(しゅうえん)にむけて」が3日、中区であった。小出さんは被爆地広島へのメッセージとして「(軍事利用としての)核と、(平和利用としての)原子力は同じもの。広島が核兵器廃絶のため活動しているのはありがたいが、原子力の平和利用ならいいということは間違いだ」と語った。
「原発はごめんだヒロシマ市民の会」などが共催し約620人が参加。小出さんは核分裂の仕組みを解説し、「自分自身で火種を生み出しながら燃えるという爆弾に非常に適した反応。原子力が原爆という形で表れたのは、物理学的に言えばなるべくしてなったものだ」と指摘した。
また、「(出力)100万キロワットの原子力発電所1基を1年間運転して生み出される核分裂生成物(死の灰)の量は、広島原爆の1000発分を優に超える」と指摘。
福島原発事故による放射能汚染については「日本の法令を厳密に適用すれば、福島県全域に匹敵する地域を無人地帯にしなければならない。土地は失われ、人々は被ばくを強いられ、1次産業や生活が崩壊する」と語った。【樋口岳大】
7月4日朝刊
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