名古屋ブルックナー管弦楽団
第31回演奏会
曲目/
1.シベリウス 交響詩「タピオラ」
2.ブルックナー 交響曲第8番ハ短調(ハース版)
指揮者: 新田ユリ
演奏: 名古屋ブルックナー管弦楽団
昨年は名古屋文理大学文化ホール・稲沢市民会館で開催されたので今年もそのつもりで車で出かける用意をしていましたが、前日に妻からの確認で今年は愛知県芸術劇場コンサートホールで開催されると知りました。このオーケストラ、名前の通りブルックナーの作品を演奏するためのオーケストラです。それもあり、毎年のチラシはデザインは一緒です。バックはリンツにあるアントン・ブルックナーと因縁の深い聖ザンクト・フローリアン修道院です。ちなみに昨年は下記のようになっていました。
このコンサート、全てが電子チケット完結で、入場もスマホでQRコードを読み取ることで完結します。つまりスマホは必須なんですな。で、当日はこのスマホを忘れました。そう、家を出る時いつも持ち歩くショルダーバックに入れておくのですが、出がけに確認で取り出しねそのまま玄関におき忘れてしまったのです。会場に着いて、スマホを持っていないことに気がつきました。ただ、バックアップで紙でプリントアウトしたQRコードはカバンの中に入れてありました。ということで、ひとまずは会場に入ることはできました。しかし、パンフレット類は一切ありません。スマホを忘れると大変なことになります。
ここしばらく名古屋は暑い日が続いています。スマホが無い人はコンサート会場に入れませんし、プログラムもありません。まあ、年寄りにはかなり敷居の高いコンサートではあります。最近はこの「teket」で入場するコンサートが多くなりましたがスマホを忘れたら最悪になります。でも、小生はカバンの中に文庫本を忍ばせていますから、開演までの時間はゆっくり読書に集中することができました。(^^;;
さて,今回は今回はブルックナー没後130年、そして名古屋ブルックナー管弦楽団 第1回演奏会からちょうど30年という節目を迎える、記念すべき演奏会となっていました。今回は前半は、シベリウスは交響曲ではなく交響詩の「タピオラ」が演奏されました。この曲は1926年に初演されていますからちょうど100年前といえます。初演は初演は 1926 年 12 月 26 日にダムロッシュ指揮ニューヨーク交響楽団でニューヨークの「メッカ寺院」で行われています。
指揮の新田ユリさんはシベリウスのスペシャリストですから、彼女の指揮する演奏は安心して聴いていられます。この「タピオラ」は交響詩ですが、ほぼ同時期に書かれた交響曲番と同じような構成になっています。タイトルを持っている分、曲をイメージしやすくなっているのではないでしょうか。森の神タピオを描いた作品は神秘的な主題が弦楽器によって提示され、それが何度となく繰り返される変奏曲のような構造になっています。神話の世界を描いていますが、ピラミッド状の構成の曲を静謐な響きの中にも森のさまざまな表情を新田氏は毎にコントロールして表現していました。いずれ、この演奏もYouTubeにアップされるのでしょうが、聴いた感じではカラヤンのような厚ぼったい演奏より、ブロムシュテットのような透明感のある響きで表現していました。
休憩後の後半はブルックナーの交響曲第8番でした。ブルックナーが交響曲第8番を書き上げたのは1887年のことです。この当時、ヨーロッパでは作曲家たちが互いに激しく影響し合い、その結果として今日に残る名作が次々と生まれています。チャイコフスキー交響曲第5番(1888 年)、ドヴォルザーク交響曲第8番(1889 年)、フランク交響曲ニ短調(1888 年)、サン=サーンス交響曲第3番「オルガン付き」(1886 年),、フォーレ「レクイエム」(1888 年)、マーラー交響曲第1番「巨人」(1888 年)、加えてブルックナーが神のように仰いだワーグナーの宿敵であるブラームス交響曲第4番(1885 年)とまさに傑作の森と言われる時代の中の作品に位置付けられます。
第1楽章はちょっと盛り上がりに欠け音楽の流れが止まってしまうように感じるところがありしたが、全体の響きの作り方はバランスが取れていて見事でした。特に金管の響きは充実していてブルックナー・サウンドを満喫出来ます。ここら辺りはさすがブルックナーの名前を冠しているオーケストラだけはあります。
第2楽章はちょっと調子が出てきたようで、特徴的な金管のの旋律に導かれて女性奏者でしたがティンパニの打ち込みもびしっと決まっていました。個人的には第8番は第2楽章が好きです。ブルックナーが第2楽章にスケルツォを採用したのはこの曲が初めてです。ちなみに前作の7番までは古典的交響曲の形式に倣い第3楽章にスケルツォが置かれてましたが、この8番と最後の9番は第2楽章がスケルツォになっています。で、この第2楽章、新田氏は3拍子のリズムの主題をかなりメリハリを付けて演奏させていました。それにもまして、トランペットを強奏させているので驚きです。今回はアシストも含めて5本のトランペットが咆哮していました。このハース版ではこの部分にハープが使用されていますが、今回は2台のハープ(楽譜指示では3台)が使われていました。全体にインテンポでありながら実にダイナミックで重厚な音楽を作り上げていました。
第3楽章はアダージョで、けっこう遅めのテンポでじっくりと演奏していました。ヴァイオリンによる神秘的な第1主題と、チェロによる穏やかな第2主題がじっくりと慈しむように展開され、やがて金管を伴った壮麗なクライマックスを築き上げますが、まさに「天国の調べ」という形容が相応しい音楽を形作っていたように思います。
第4楽章は冒頭からテューバが華々しく活躍する楽章です。今回は持ち替えで3本のチューバが活躍しました。もちろんトランペットも活躍していますが、ここでは陰に隠れてそれほど突出していません。マスキング効果でしょうかね。ブルックナー演奏は、例によって「版」の問題がありこの第8番では、ハース版を使っていますが、ホルンは最強奏の箇所ではアシストを含めて10重奏とかがあって聴きごたえがありました。今回も3階席で視聴しましたがホール全体に響き渡るブルックナーサウンドを満喫することができました。
この演奏会、第4楽章の最後の和音が鳴った後、指揮者が腕を下ろすまで拍手が起こりませんでした。その後はブラボーの掛け声と共に一斉に拍手が湧き起こりました。このブラボー理掛け声も会場のあちこちから絶えず響き渡り、伊千歳袖に引っ込んで再登場した後もブラボーの香が上がり、会場のあちこちでスタンディングオーベーションがありました。複数の方からの、しかも複数回のブラボーは、このアマチュアの演奏会では初めて聴いたような気がします。アマオケは、年一回の演奏会に全てを賭けてくるので、時にプロよりも熱量の高い演奏が聴けますが、今回が正にそれであったような気がします。下は第10回での第8番の演奏の映像です。
来年はシベリウス没後70周年を記念して東京で新田氏の元でシベリウス全曲演奏会に出演するそうです。これは聴きに行きたいものですねぇ。
日時:2027 年11月14日(日)
会場:すみだトリフォニーホール
出演:アイノラ交響楽団 3番、7番
名古屋ブルックナー管弦楽団 4番、5番
森と湖の詩交響楽団 1番、2番、6番
指揮:新田ユリ
また来年の名古屋ブルックナー管弦楽団第32回演奏会は2027年8月1日(日) 愛知県芸術劇場コンサートホールで新田氏の指揮で開催されるようです。



