バーンスタイン/ウィーンフィルのハイドン | geezenstacの森

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バーンスタイン/ウィーンフィル

ハイドン/V字、オックスフォード

 

曲目/

ハイドン:交響曲 第88番 ト長調 Hob.I: 88 《V字》

1。第1楽章: Adagio - Allegro 9:11

2。第2楽章: Largo 7:15

3.第3楽章: Menuetto (Allegretto) 4:22

4.第4楽章: Finale (Allegro con spirito) 3:17

ハイドン:交響曲 第92番 ト長調 Hob.I: 92 《オックスフォード》*

5.第1楽章: Adagio - Allegro spiritoso 8:01

6.第2楽章: Adagio 7:59

7.第3楽章: Menuet (Allegretto) 6:16

8.第4楽章: Presto 5:42

 

指揮/レナード・バーンスタイン

演奏/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

PS:ハンス・ウエッバー

P:ハンノ・リンケ

E:クラウス・シャイベ

録音/1983/11/23、1984/02/06* ムジーク・フェラインザール

 

DG 413777-2

 

 

 このCDもDGのバーンスタイン・コレクション1に含まれるものです。交響曲第88番はニューヨークフィルとの録音もありますが、92番はウィーンフィルとの録音が唯一のものです。実に流麗な演奏となっています。このセットはLP時代のオリジナルジャケットを採用しています。シャケットはリハーサル時のスナップショットを20分割でデザインしています。バーンスタインのハイドンは以前はニューヨークフィルとの84番、85番を取り上げています。

 

 

 そして、キビキビとしていて、身のこなしがしなやかでもある。
この辺りの性格は、ウィーン・フィルの体質に依るところが大きいのではないでしょうか。なるほど、バーンスタインならではの強靭な音楽づくりが為されています。そして、剛毅で情熱的で躍動感に満ちている。そのような音楽づくりの中に、優美でふくよかな味わいも備わっている演奏となっている。更に言えば、頗る艶やかで、美しい。
と同時に、両曲ともに緩徐楽章では、歌心に満ち、抒情性に溢れた、滋味深い音楽が奏で上げられている。
そんなこんなのうえで、全編を通して、音楽する喜びが滲み出ています。それが、聴く者に音楽を聴く喜びを与えてくれることにも直結していると言えそう。
そのような演奏を通して、ハイドンの音楽が、殊のほかチャーミングに響き渡っています。

ハイドンならではの「素朴さ」は、薄いかもしれません。ある種、ゴージャスな演奏となっている。頗る輝かしくもある。その一方で、愉悦感を湛え、躍動感に満ち、音楽が本来的に持っている「愉しさ」をストレートに伝えてくれる世界が広がっているところは、まさにハイドンの音楽そのものであると言いたくなります。
更に言えば、人懐っこさのようなものや、暖かみが強調されているのは(特に≪オックスフォード≫の最終楽章において)、いかにもハイドンらしくて、誠に好ましい。
いやはや、なんとも素敵な演奏であります。

 

 この時代のバーンスタインの演奏はCDはドイツグラモフォンから発売されていますがね並行してユニテルが映像を残しています。まあ、映像ですから音源の編集はできていないでしょうがしっかりとコンサートの様子が残っています。CDはリハなどの音源も含めて編集されていますからライブとは言っても客席のノイズは入っていません。そこのところが音源としては違うところです。

 

 ただ第88番は第1楽章の序奏の弦楽のアクセントのところからバーンスタインの唸りがすでに何回も聴こえてきます。こういうところは編集できなかったのでしょうなぁ。で、演奏は映像でも確認できますが、編成は小型ながら現代の配置になっていて、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロでヴィオラの後方にコントラバスが配置されています。さすがに70年代といえども伝統的なスタイルで古楽器演奏にないゆとりと安定した表現の面白さを味あわせてくれています。左右の弦楽部の掛け合い、木管の多彩な音色などウィーンの古色的演奏が楽しめます。さらに、このウィーンフィルとの演奏では第1楽章は。定時部をリピートしているので通常は6分程度の演奏が9分以上をかけて演奏しています。

 第2楽章はテンポは極めてゆっくりで起伏は大きくなだらかで、ヴィヴラートやポルタメントもほんのり加わる弦とオーボエの音色にほれぼれします。この88番はいろいろな指揮者が録音を残していて多様な演奏を楽しむことができますが、一番の特徴は新しい試みとして、静かな第2楽章でトランペットとティンパニーが使われていることです。前例はモーツァルトにありますが、新しいテクニックはすぐ取り入れるところはさすが、交響曲の父と言われるだけあるハイドンです。楽器の性能面での制約などがあったので、これは当時として、かなり大胆な斬新な試みだったでしょう。


 第3楽章メヌエットは堂々とした両端にバグパイプ風のトリオが置かれています。このトリオは強弱のメリハリをつけながらもとても優美です。圧巻は終楽章で、軽快なアレグロで今までの堂々とした豊かな音楽と一変させて楽しげに演奏しています。CDの音源ではこの楽しさが従前には感じられませんが、此に映像が加わるとイメージが変わります。その音楽自体を楽しむ様子がこの第4楽章には感じられます。


 

 ところでこのコンサートはビデオでも発売されていてそこではこの第4楽章がアンコールされています。このアンコールがまた楽しく、最初こそ指揮棒を振り下ろしますがすぐにバーンスタインはアイコンタクトだけで指揮をしているのです!!こういうユーモアを持ち合わせているバーンスタインのおちゃめな面はCDでは感じる事が出来ないので貴重です。

 

 

 交響曲92番「オックスフォード」は、バーンスタインとしては初めての録音です。ロンドンセットの中ではニックネームがありながらパスされることが多い作品で、単独で録音する指揮者は多くありません。ただし、小生は好きな曲で古楽の演奏で、ルネ・ヤーコブス/フライブルク・バロック・オーケストラの演奏で聴いてからどハマりになった曲です。今の所これに叶う演奏はないのですが、バーンスタインの/ウィーンフィルのこの演奏はその柔らかい音色で対極にある演奏と言えないこともありません。

 

 つまり、エッジは効いていないし、人懐っこさのようなものや、暖かみが強調されているのは(、いかにもハイドンらしくて、誠に好ましい。ここでも、ゆったりしたテンポで入りますが、少し流れがギクシャクするような雰囲気もあります。オケも前曲よりすこし粗い感じ。ただ、前曲よりもドイツの伝統に近い演奏に聴こえるのが不思議なところ。濃いめの演出ではなく少し遅めのテンポでゴツゴツと進めるようにも聴こえます。前曲の過度なこってり感を抑えようとする意図が働いたのでしょうか。バーンスタインの演奏には違いありませんが、遅いテンポに乗っかってちょっと一昔前の巨匠風の趣も感じられます。


 第2楽章のアダージョもなかなか情感の深い演奏ではありますが、あまりこってりはしていません。ヤーコブスの演奏を効いた後ではちょっと物足りなさを感じてしまいます。バースタインならもう少し情感を込めて演奏できたのかなぁと思ってしまいます。続く第3楽章のメヌエットもやや粗いオケによるざっくりとした演奏に終始しています。テンポはゆったり、フレージングはざっくりでキレがありません。結構面白い楽章なのですがテンポが遅すぎて音楽に乗り切れていないもどかしさを感じます。バグパイプのような響きをもつトリオが面白く描かれているのですが、テンポが間伸びしているのでやや退屈に響いてしまいます。ここはアレグレットなのですからちょいと厳しいテンポです。


 フィナーレはやはりバーンスタイン特有の愉悦感が溢れるフレージングと素晴らしいエネルギー感和感じることができます。テンポはほとんど揺らさずほぼ突進するようなエネルギーを感じます。オケはほとんどノーコントロールともいえるような荒々しさですが、しかしそこはウィーンフィルゆえそれでも極上の響きがします。先曲の「V字」に匹敵する魅力に溢れた演奏となっています。終わりよければ全て良しのライヴ感溢れる素晴らしい演奏です。欠点は3楽章だけでしょうかねぇ。