ジョージ・セル/ベートーヴェン序曲集 | geezenstacの森

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ジョージ・セル

ベートーヴェン序曲集

 

曲目/

4.歌劇「フィデリオ」 序曲 作品72b 序曲   6:10
5.「レオノーレ」 第1番 作品138   9:14
6.「レオノーレ」 序曲 第2番 作品72a   14:03
7.「レオノーレ」 序曲 第3番 作品72b   13:50

1.「エグモント」 序曲 作品84 6:10   8:33

3.「シュテファン王」 序曲 作品117   7:30

指揮/ジョージ・セル
演奏/クリーヴランド管弦楽団

 

録音/
レオノーレ第2番:1966年10月8日、
コリオラン、シュテファン王:1966年10月29日、
レオノーレ第3番:1963年4月5日、
クリーヴランド、セヴェランス・ホール
レオノーレ第1番、フィデリオ:1967年8月25日、ロンドン

P:ポール・マイヤース

 

独CBS 61580

 

 

 1977年の卒業旅行でヨーロッパ一周した折にドイツのシュトットガルトのレコード店で購入したものです。ドイツの61000シリーズは廉価盤の範疇に分類されていたものです。多分1マルクが100円前後であったはずで、このショップでまとめ買いをしてその足でシュトットガルトの駅の横にあった中央郵便局で船便での発送手続きをした記憶があります。多分セールか何かをしていたんでしょうなぁ。

 

 このレコード、当時発売された日本盤とは収録内容が違います。多分ドイツだけのカップリングだったのでしょう。このジャケットデザインもドイツ盤だけのもので、日本盤はアメリカと同じデザインで収録曲数も少なかった記憶があります。セルのベートーヴェンの7曲の序曲は、1963年4月に録音され一足先に交響曲第4番とのカップリングで同年に発売されたレオノーレ第3番を除き、全集完成後の1966年と1967年に録音され、2枚のLPで発売されました(レオノーレ第2番がオーバーラップ)。アメリカでは、ちょうど全集が完成した1960年代半ばにエピック・レーベルがポップス色を強めたため、セルとクリーヴランド管は古巣コロンビア・レーベルに復帰し、コロンビアからの発売となりました。

 

日本盤 13AC208 収録曲がかなり違います。


 「フィデリオ」のために書かれた4つの序曲を収めたLPは、1968年のクリーヴランド管創立50周年記念発売の1枚となりました。珍しいのは、「フィデリオ」「レオノーレ第1番」の2曲が1967年夏のヨーロッパ楽旅中、ロンドンで録音されていることです。セル&クリーヴランド管のセッション録音が地元以外で行なわれたのはこの時だけです。最初はその「フィデリオ」序曲です。

 

 

 

 そもそも、CBSのアーティストだったオーマンディやバーンスタインは単独でのベートーヴェンの序曲集を残していません。唯一このセルがこういったアルバムを残しました。細部まで一音もゆるがせにせぬ緻密な配慮が行き届き、張りつめた生彩さがほとばしるようなリズム感で構成されたセルの演奏は、ベートーヴェンが作品に盛り込んだミニ・シンフォニーともいえる圧倒的なドラマを描き出しています。こりアルバムにはベートーヴェンが過激「フィデリオ」のために書いた序曲が4曲も収録されています。

 

 今ではオペラ「フィデリオ」上演の際は「フィデリオ」序曲が演奏され、第2幕で「レオノーレ」序曲第3番が演奏されるということが当たり前になっています。このレコードを入手した時代は一通り聞いていますが、この第1番の由来は全くドイツ語が理解できないためスルーしていました。今回改めてこの1番に注いて調べてみたらいろいろなことがわかりました。まず、作品番号が138番ということで交響曲第9番のOp.125より後の番号になっています。実際の作品目録には無いんですなぁ。いわゆる遺稿というものです。なんでも幻となったレオノーレのプラハ上演のために作曲されたということらしいのですが、定かではありません。いちおう、オペラの曲の旋律が使われているということで1番という番号が与えられていますが、ほとんど演奏されることはないのが現状です。

 

 

 次の第2番は今では歌劇「レオノーレ」として上演される際にその序曲として演奏されているようです。手元にも、歌劇「フィデリオ」と歌劇「レオノーレ」があります。規模が大きいので演奏会用序曲としてたまに単独で演奏されるようですが、セルは多分アルバム用に録音したもので、3番より録音が新しいので聞きバエはこちらの方がいい魔かもしれません。クリーヴランド管弦楽団の演奏は緻密で聴き映えがします。

 

 

 録音は少々古いのですが、再録音しなかったということはセルはこの演奏に自信を持っていたのでしょう。まあ実際聴いてみても揺るぎないアンサンブルとセルの意思が貫かれた演奏は今聴いてもぞくぞくとした興奮を感じます。

 

 

 このアルバムにはフィデリオ関連以外では「エグモント」が収録されています。ポール・マイヤーズのプロデュースによる一連の録音はセヴァランス・ホールの響きを十全に捉えていて、以前は冷たいとされていた響きは改めて聴いてみると非常に素晴らしいバランスで録音されています。低弦の重厚さも過不足なく収録されていて、改めてセルのベートーヴェンの解釈の緻密さを感じます。

 

 

 最後に収録されているのが「シュテファン王」序曲ということで、「コリオラン」で無いのがこのアルバムのちょっと残念なところですが、この作品も作品番号からベートーヴェンの晩年の作品ということがわかります。ただ、ベートーヴェンが自分の意思で描いた作品では無いということで、民衆にもわかりやすい内容で書かれています。その辺は「ウェリントンの勝利」という作品に通じるものがありますなぁ。

 

 

 このアルバム、すっかり所有していることを忘れていました。1975年の発売という記載がありますが、国内でセルの1300円盤が発売されたのは1976年でした。ドイツ盤はレーベルが赤でした。