レコード芸術 1970年7月号 2 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

レコード芸術

1970年7月号 2

 

 

 7月号の裏表紙はメータ/ロスフィルの「家庭交響曲」でした。これはベストセラーとなった「ツァラトゥストラはかく語りき」、゜英雄の生涯」につづくもので、早くもこの号で取り上げられ新譜では唯一交響曲部門で村田武雄氏は推薦を打っています。

 

 

 メータのキングのコーナーの中での広告です。R.シュトラウスの紹介とともに生涯の付き合いともなるイスラエル・フィルのチャイコフスキーも紹介されています。

 

 

 1970年はベートーヴェンの生誕200年の年でもあり、各社がこぞって全集を打ち出してきています。その中でこの一セル主テット/ウィーンフィルは新録ながら最安の10,000円で攻勢をかけています。さらにベートーヴェンのあまり知られていない曲を収録したLPをボーナスで付けるというセールスまで展開していました。8,000部限定とは強気のセールスです。これだけで8,000万の売り上げを目論んだということになります。

 

 

 こちらは3枚組で6,000円です。ただ、名演という意味ではこちらの方が価値があったのではないでしょうか。Siriあげてはいませんがピアノ・ソナタ全集も同時発売しています。残念ながらバックハウスは「ハンマークラヴーア」だけはステレオで録音を残していませんが、広告では初のステレオでの全集と告知しています。大間違いですね。10枚組で15,000円とは強気で5,000部限定と謳っています。

 

 

 まだまだアンセルメは商売になるとラストレコーディングの「火の鳥」を再打ち出ししています。この中では小生はショルティの「神々のたそがれ」に注目しますがねぇ。豪華見開きジャケット入りです。

 

 

 この当時はウェストミンスターはキングが発売していました。モノラルの名盤が1,200円で発売されています。数年後に東芝EMIに発売権が移るとこれが1,500円に値上がりしました。

 

 下のイエルク・デムスのシューマンのピアノ曲大全集はこの頃発売されていたんですなぁ。全6巻、LP20枚の大作でした。日本ではセブンシーズレーベルで発売されましたが、諸外国ではインターコード(独)、Musical Heritage Society(米)から、CD時代になって1989年にNuova Era(伊)から全集となって発売されました。録音は1960年代ですが、原盤不詳の不思議なレコードです。今ではこの音源、menbranが買い取ったようで小生はこの音源で全集を所有しています。ベート全ドルファーの渋い音色でシューマンの曲が一つ一つ胸に染み込むいい演奏です。

 

 
 
 

 

 さて、この号の話題のカラヤン/ベルリンフィルとセル、ブーレーズ/クリーヴランドのグラビアです。ページ数からしてもクリーヴランドに注目が集まっていたのが如実にわかります。

 

 

 1966年の来日と同じようにベートーヴェンチクルスをメインに据えたプログラムでしたが珍しいオネゲルの第3番や幻想交響曲゜ダフニスとクロエ」なども演奏しています。そして、3つのオーケストラがこのダフニスで競演したり、シューマンの交響曲第4番もベルリンフィルとクリーヴランドの演奏会で取り上げられていたということで比較を楽しむことができたというのです。

 

 

 晩年のセルはかなり恣意的な演奏をしていることも確かで、今回の講演でベートーヴェンの「エロイカ」でかなり作為的な表情づけをしていたようです。その辺りは次回の座談会の記事で確認してください。

 

 

 ブーレーズの指揮はこの時初めて知った人がほとんどでしょうが、同じクリーヴランド管弦楽団を振っても指揮棒を使わないというという特徴がありました。10本の指を自在に操るスタイルは当時はストコフスキーを彷彿とさせたものです。そこから繰り出される音楽は作曲家目線の緻密で的確な指揮に導かれた音楽で、聴くものにある種のカルチャーショックを与えたようです。

 

 続きます。