レコード芸術
1974年7月号
5
ずいぶん間が空いてしまいました。この記事は10月5日の記事の続きです。第2特集ということで「話題盤演奏比較集」が組まれています。ここでは最初にリヒャルト・シュトラウス理管弦楽曲集が取り上げられています。こんな記事です。
とまあこんな記事でした。ところが内容は全く本題に触れることなく、最初はバーンスタインの「ツァラトゥストラ」に始まりそのうちカラヤンとけんぺの同曲についての感想を散りばめているだけで全く内容がありません。記事を書いた鍵谷幸信はこんな記事で原稿料をもらっているのかと憤慨した思い出があります。この人はアンチカラヤンという割にはカラヤンのレコードを購入していますし、10円玉の表裏で聞く演奏の順番を決めるというアホなチョイスをしています。記事も中身がないのなら紙面の割り付けも杜撰で231ページなど黒ベタのカラヤンの写真の上に文字を置いているので肝心の記事が潰れてしまっています。なぜ後世のダンカンで白抜きにしなかったのだろうと訝しく思います。やっつけ記事に、やっつけ割り付けで読者に読ませる気などなかったということでしょう。
まあ、この記事は同じ土俵で比較できるものではなく、カラヤンはまだこの時点でまとまった管弦楽の録音などしていませんでした。当時は小生もアンチカラヤンでしたから、このシュトラウスの管弦楽曲集は当然ながらまとまってセットで出ていたけんぺのものを購入しています。先にも取り上げていますが、こんなセットです。
このセット、CDではもちろんボックスで発売されていますが、ほとんど話題にならなかったのが不思議です。
さて、この号で話題になったのはリチャードとジョンのコンティグリア兄弟によるピアノ版のベートーヴェンの「第九」です。リストのオリジナルの2台のピアノのための編曲ですが、多分この演奏が出るまで一般のリスナーはこんな編曲があるなんて知らなかったように思います。小生もそうでしたがこういう編曲があると知ったのはこのレコードがきっかけでした。発売はフィリップスですが、録音は「コニサー・ソサエティ」というレーベルでした。さすが、レコ芸、話題版についてはちゃんと記事にして取り上げています。
ただ、フィリップスは宣伝が下手だったのかこのアルバムは小さな扱いでしか紹介していません。そして、初出の時は2枚組で4,400円で発売しています。儲けようという心意気は感じられますが、広告とは一致していません。
ちなみに上の広告、どさくさ紛れにハイティンクのアルバムも紹介していますが、その中のチャイコフスキー名曲集は新婦にもかかわらず1,200円テセ発売されています。もちろん小生はめざとく見つけ、このアルバムを購入しています。日本ではレギュラーでは売れないと見たのか1972年9月の録音にも関わらず廉価盤での発売だったのです。とうじ、このレコードは無茶苦茶音がよくフィリップスの録音の良さに改めて気付かされた一枚でした。
メインのブレンデルの新譜の告知です。コヴァセヴィッチもいたのですが、パッとしなかったのでブレンデルに集中したんでしょうなぁ。
フィリップスはベスト100までのラインナップはできませんでしたから、ベスト40でお茶を濁しています。
この告知は当時見逃していました。オランダ直輸入盤の企画でこんなセットが発売されていたとは知りませんでした。多分ドイツグラモフォンのセット物に触発されたものでしょうが、日本からのオーダーでこの時期にバッハとモーツァルトの16枚組のボックスセットも知りませんでした。
デザインを一新したグロリアシリーズが1,300円盤で登場しています。ここで登場しているトップのアーヨ盤の「四季」はモノラルで第1回の録音のものです。ただ、この録音1956年度のACCディスク対象を受賞している名盤で、この号の月表では志鳥英八郎死は推薦を出しています。他にもクルト・レーデルのバッハ/管弦楽組曲やモントゥーの「英雄」、シュタルケル/ドラティのドヴォルザークのチェロ協奏曲、それに最新録音のカール・スズケらよるシューベルトの「ます」など魅力的な録音が投入されています。
ソニーは相変わらず500円の音のカタログを売り込んでいます。そして。夏のボーナスシーズンを当て込んでバーンスタインとブーレーズの3枚組のセットをプッシュしています。ただ、価格が3枚で4,600円と中途半端なので売れたのでしょうか。その価格は多分ニューヨークフィルの招待企画の原資として100円分が上乗せされていたのではないでしょうかねぇ。
前回と変わらず招待企画で売ろうとの魂胆が丸見えです。
ズーカーマンはCBSに移ってからはあまりパッとしなかった記憶があります。若手トリオとして売り出した方が良かったような気がします。
さて、この号にはとんでもない記事が掲載されました。当時小澤征爾はボストンとサンフランシスコを掛け持ちしていた頃ですが、そのサンフランシスコ響で当時不穏な動きがあったようです。それが下の記事です。この勤務評定では中川亮平氏が槍玉に上がっていました。まあ、ことの真実の結果は歴史が証明しています。氏は2023年12月に亡くなっています。
トリオ・レコードは契約先が少なかったので新譜は少なめでした。メインのシャルランレコードだけで細々と新譜を維持していました。
来日していたベルナルト・ハイティンクのインタビュー記事です。またまだ知名度の低かったハイティンクですからこういう機会に積極的にインタビューを受けたのでしょう。当時は岩城宏之氏がオランダで活躍していたことなども話していてなかなか話題作りに不審していた様も伺われます。
RCAはこの時期はグラビアの広告しか打っていません。トップには相変わらずの骨董品的ルービンシュタインのアルバムを告知しています。諸外国では2ページ目のジュリアン・ブリームトジョン・ウィリアムズのデュオギターの方がセールス的には良かったのですが、日本は遅れていました。
このCD-4もRCAの足を引っ張ったのかもしれません。ここでは見開きの広告を打っていますが、レパートリーに新鮮味はありません。
1,300円盤は旧録音ながら魅力的なものが投入されています。全然記憶にないのですが、アラン・シヴィルのモーツァルト/ホルの協奏曲集などは再発されていませんからお宝物でしょう。