名フィル名曲コンサート | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

名フィル名曲コンサート 

第91回市民会館名曲シリーズ
〈和欧混交Ⅰ/尾高尚忠とブルックナー-ブルックナー生誕200年記念〉〉

曲目

▊ 尾高尚忠:フルート協奏曲 作品30b*

▊ ブルックナー:交響曲第7番ホ長調[ノヴァーク版]

 

フルート/ワルター・アウアー*

指揮/マティアス・バーメルト

演奏/名古屋フィルハーモニー交響楽団

 

 

 今シーズンのメイフィル名曲コンサートが開幕しました。前々回より、ロビーコンサートが復活していて、今回は演奏曲目に合わせて珍しいブルックナーの弦楽五重奏曲ヘ長調から第1楽章が演奏されました。

 

 

 

 いつものように2階のロビーから演奏を楽しみました。ブルックナーの残した室内楽作品の2曲のうちの一曲ということでなかなか珍しいものです。ブルックナー55歳の作品で交響曲第6番と同じ時期の作品ということが言えます。室内楽作品でありながらブルックナー休止はあるは、コラール風船率あるわでミニ交響曲を聴いているような味わいのある作品でした。

 

 

 曲はこんな感じになっています。

 

 

 前半のプログラムは「尾高尚忠:フルート協奏曲 作品30b」です。bとついているのは最初は室内オーケストラのために書かれたからで、なんと作曲の委嘱はフルーティストという前歴の持ち主の名フィル音楽監督でもあった指揮者の森正氏でした。そして、第オーケストラのための作品の編曲は完成を待たずに亡くなったので弟子の林光氏が完成させ、その初演を吉田雅夫氏が担当したということです。その吉田氏の演奏が下記です。

 

 

今回の編成表

 

 今回のフルート独奏はウィーン・フィル首席奏者ワルター・アウアー氏でした。下の写真でも確認できますが、三響フルートの24Kを使用していたようで、非常に柔らかい音で音が綺麗に伸びているという印象のフルートでした。演奏後の拍手もブラボーが飛ぶ盛大なもので、なんとアンコールにドビュッシーの「シランクス」が演奏されました。どちらも生で聞く初めての機会でしたからいい思い出になりました。

 

 左から左から名フィル首席=大久保成美、ワルター・アウアーさん、マティアス・バーメルトさん、名フィル首席=富久田治彦さんとなっています。

 

 スイス出身のマティアス・バーメルトは82歳。ブーレーズやシュトックハウゼンに作曲を学んだのちジョージ・セルに弟子入りし、その後マゼール時代のクリーヴランド管にて正指揮者を務めたという経歴のもちぬしです。1974年に来日しクリーヴランド管弦楽団のアシスタントとして名古屋に足跡を残していましたがメイフィルとは今回初めての登場ということになります。そのキレッキレな経歴とは裏腹に、その風貌からして作り出す音楽は極めて謹厳実直、手堅い職人肌というイメージです。今年はブルックナーイヤーということでブルックナーを指揮してメイフィルデビューです。その作り出すサウンドは特段変わったことは何もしていないし、派手さは皆無ですが、ゆったりとしたテンポの中に曲全体の構造をしっかりと捉えて聴かせる術は一流でです。今年の春まで札幌響のシェフとして活動していましたから日本のオーケストラへの順応性はバッチリです。

 

 この日の演奏は、驚くほど安定していて音の濁りがなく、テクスチュアは極めて明晰です。ブーレーズに学んだというのは、こういうところに活かされているのでしょうか?彼の指揮ぶりを聴いているとシューリヒトの演奏を思い起こします。指揮ぶりは全く激しいところがなく淡々としたものですが、ツボを押さえていいます。オーケストラへの指示も的確で、決してドラマティックな音の作り方ではないにもかかわらず、第2楽章のクライマックスでシンバルとトライアングルが登場する場面は圧巻で聴いていてゾクゾクとしました。何しろホルン9本の日の右からの響きとしもてのトランペットとの掛け合いは旨い演出でした。そして、ともすると平凡な演奏になりがちな第3楽章、第4楽章も充実感を持って聴かせていたのは立派でした。スケジュールの調整がつけば2回、3回とメイフィルに登場して欲しいものです。

 

カーテンコールに何度も登場したマエストロ

 

 残念ながらバーメルトの音源はないので、そのシューリヒトの演奏を貼り付けておきます。