懐かしのレコード芸術 1973年9月号 その3 | geezenstacの森

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懐かしのレコード芸術

1973年9月号 その3

 

 下は狛号の裏表紙です。メータの最新録音の「ダフニスとクロエ」を取り上げています。本体の広告でももちろん取り上げていますが、ジャケット写真を使った裏拍子のこの広告の方がインパクトはあります。

 

 

 その本広告の中では、ポストカラヤンの本命はこのメータだという打ち出しをしています。今年亡くなりましたが、当時の団員の土屋邦夫氏はメータ、小沢、アバドをあげています。また、ウィーン・フィルの運営委員長だったヒューブナー氏はメータ、アバド、マゼールをあげています。まあ、どちらにも名が上がっているのはメータとアバドですから、当時の活躍ぶりからすればあたらずも遠からずといったところでしょう。実際にアバドが選ばれていますからねぇ。その点、この後のニューヨークフィルに転出したメータの失速は目に余るものがありました。

 

 

 この広告、枠外にケルテスのドヴォルザークの交響曲全集を告知しています。これは再発になるものですが、以前は高すぎて売れなかったと見えて、序曲等をカットして7枚組で、ジャスト10,000円での発売となっています。これはちょうどこの月コロムビアがノイマン/チェコフィルの全集を発売したことに対する対抗措置という側面もあったようです。コロムビアはその管弦楽作品も含めての9枚組で17,000円でしたから価格的にはキングに武があったといっていいでしょう。この手法、CD時代になっても同じような販売施策がとられました。そして、次月は「73・ショルティ・イヤー」ということで大々的にショルティを打ち出す準備も怠っていません。実際次月はショルティ特集となっています。

 

 さて、キングはこの時代コロムビアと共に廉価盤ブームを牽引していました。この月発売の「カラヤンベスト1000」の他にもこんな広告をクラシックの枠の中に突っ込んでいました。それがシゲティのモノラル盤の企画の下にぶち込まれた「民族音楽シリーズ」です。キングはこんなものまで1000円板で発売していました。小生は雑食性ですから、このシリーズにも飛びつきました。この頃は昼の昼食代を浮かせて、まるまるレコードの購入に充てていたことを思い出します。

 

 

 限られた予算の中で、半数以上を購入しています。一番聴いたのはトップの「バリ島のガムラン音楽」です。この音源は特に知られたもので、のちにCD化された時もこの時の音源が使われています。何しろこのシリーズ、慣習が小泉文夫と中村とうようという2大巨頭が監修していますから間違いありません。ドキュメンタリー録音に力を入れていた英アーゴや独バークレイといつたソースを駆使して集めた現地録音がふんだんに使用されていました。

 

 

 巻頭のグラビア特集は世界の指揮者のトスカニーニが取り上げられています。このトスカニーニの録音はRCAの独壇場ですからここに力を入れないわけはありません。すでに前号あたりからトスカニーニの全集を全面に出した広告を打っていました。

 

 

 ここでは第2弾ということで、目ぼしい売れ筋のオーケストラ作品をりすとあっぷしていました。でも、この当時はレスピーギのローマ3部作はべつべつにはつばいされていたんですなぁ。珍しいのは「アイーダ」と「ボエーム」というオペラのセットも発売しているところです。この「アイーダ」に関してはこの年にイタリア・オペラが来日していて公演演目にしていたということで別枠の広告でも取り上げています。「アイーダ」なんか3組も紹介されていますが、1000円盤にもジヨネル・ペルレア盤が含まれていたとはこの広告で初めて知りました。また、その下にはグランプリ1000シリーズにラインスドルフの「ルチア」とレナード・チェリー二の「トロヴァトーレ」もラインナップされていたとは全く記憶がありません。ただ、このシリーズ、初期の段階でラインスドルフの「トスカ」と「蝶々夫人」が投入されていました。よく見ると公演演目の「椿姫」も1000円盤が組み込まれています。

 

 

 ところで、RCAの新譜は寂しいものです。この時期4チャンネルレコードはもう下火になりつつありましたが、特に状況が厳しかったのはビクター系列が推し進めたDC4方式だったのでしょう。下の広告でもオーマンディの新譜がそのDC4方式で告知されていますが大きくは打ち出されていません。新譜なのにひっそりと紹介されているに止まっています。4チャンネルでもCD4(ディスクリート4チャンネル)は特殊な方式で普及が進んでいなかったことを物語っています。せっかくの新録音のレコードなのに残念なことです。それに比べて、旧譜のミュンシュのアルバムの方が目立つ扱いというのもその状況に拍車をかけています。

 

 

 ようやく本編に近づきました。恒例の新譜月表です。当時はこのレコ芸の批評がレコードを購入する唯一の判断基準でした。当時の選者の一覧がついていますが、交響曲は村田武雄氏でした。前任の大木正興氏もそうでしたが①番の売れ筋の担当者はめったやたらに推薦盤を出しませんでした。この月も交響曲作品はゼロです。管弦楽で一枚、協奏曲で二枚と少なめです。そんな中で管弦楽曲では先日中古盤でゲットしたカラヤンのスッペ序曲集が推薦盤に名を連ねています。当時の録音評は若林氏と岡田氏がメーカーによって分担しています。ただ、ビクターはCD4を再生できない岡田氏の分担になって居ます。これはどういうことだったんでしょうかねぇ。

 

 

 推薦盤に挙げた志鳥栄八郎氏の批評です。演奏評はすこぶるべた褒めですが、録音評は85点と辛めです。90点から95点が当時の優秀録音の基準でしたから音質は並みというところでしょう。イメージとしてはDGGはどんしゃりの録音が多かったというイメージです。このころリアルタイムではアンチカラヤンでしたし、DGGの新譜をほとんど購入しなかったのにはこんなところにも理由はありました。