トスカニーニ
真夏の夜の夢、八重奏曲
曲目/メンデルスゾーン
1.真夏の夜の夢」序曲 Op.21 11:21
劇音楽「真夏の夜の夢」Op.61
2. Intermezzo 3:41
3. Nocturne 5:28
4. Scherzo 4:18
5. Wedding March 4:42
6. Finale 4:26
八重奏曲 変ホ長調 Op.20 *
1. Allegro moderato ma con fuoco 10:10
2. Andante 6:21
3. Scherzo : allegro leggierissimo 4:48
4. Presto 6:24
指揮/アルトゥーロ・トスカニーニ
演奏//NBC交響楽団
録音/1947/11/04 カーネギーホール
1947/03/30 NBC8Hスタジオ*
RCA 88697916312-36
交響曲第4番「イタリア」で名園を残しトスカニーニですが、この「真夏の夜の夢」の音楽はあまり高くそょ浮かされていません。多分それは、別作品でもある序曲があまりにもテンポが速い演奏で面食らうからでしょう。多分11分台前半で演奏しきっているのはこのトスカニーニぐらいでしょう。参考までにあげると、
・オーマンディ/フィラデルフィア 12:32
・ジエフリー・テイト/ロッテルダム・フィル 12:31
・ラインスドルフ/ボスツン響 12:49
・クレンペラー/フィルハーモニア 12:51
・マリナー/フィルハーモニア 12:10
・プレヴィン/ウィーンフィル 12:04
といったところで、世間で評判の高いプレヴィンでも12分は切っていません。こんな演奏になっています。
もともと「真夏の夜の夢」はシェスクスピアのラブコメ戯曲ですから、遊び心が欲しいものです。あらすじはこんなです。
{{{ 舞台は大昔のアテネ。ハーミアは恋仲にあるライサンダーという青年と駆け落ちをして、アテネ近郊の森に足を踏み入れる。ハーミアは、その計画を親友のヘレナにだけ打ち明けるが、ディミートリアスに片思いをするヘレナは、その話をディミートリアスに漏らしてしまう。ハーミアに想いを寄せるディミートリアスはふたりの駆け落ちを阻止するために森に入り、ヘレナもディミートリアスの後を追いかけていく。
その頃、妖精の王であるオーベロンは、王妃のタイターニアと喧嘩をしていて、タイターニアのまぶたに媚薬を塗る。この媚薬は、目覚めて最初に見た人を好きになってしまうという惚れ薬。そして、妖精のパックがライサンダーたちにも、この惚れ薬を塗ってしまったことから、ライサンダーとディミートリアスがヘレナに恋をしてしまい、4人の男女の関係があべこべに。また、パックは森に入り込んだ職人の頭をロバに変えてしまい、目を覚ましたタイターニアは、このロバ頭の男を見るなり、恋に落ちてしまう。
その後、恋をする者たちのドタバタ喜劇が繰り広げられるが、最終的にオーベロンは妻のタイターニアの魔法を解き、仲直りをする。また、オーベロンの取り計らいにより、ハーミアとライサンダーは恋仲に戻り、ディミートリアスとヘレナも愛し合うようになり、幸せな結末を迎えるのだった。}}}
とはいってもトスカニーニ、手綱はしっかり引き締めていますからアンサンブルは見事なものです。小生とて、最初にこの演奏を聴いた時はあっけにとられました。しかし、何回も聴いていきとこのテンポもありかなぁと思えてきます。要はトスカニーニの物語に入り込めるか否かということなのでしょう。続く間奏曲は全く違和感なく入り込めます。
さて、個人的にはこのCD、こちらの弦楽八重奏曲が聞きたかったものです。何しろ第3楽章はメンデルスゾーン本人が編曲したバージョンがあり、トスカニーニはそちらの編曲バージョンも残していて、こちらで取り上げています。しかし、このCDに収録されている演奏はこの演奏会のためにトスカニーニ自らが編曲した演奏が収められており、録音としてはこれが唯一無二の演奏なのです。実際、室内楽作品としての弦楽八重奏曲はメンデルスゾーンの作品の中でも特にお気に入りの一曲です。
弦楽八重奏曲のオリジナルスコア冒頭
オリジナルのメンデルスゾーンの弦楽八重奏曲の楽器構成は、「ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2」なんですね。つまりはこの弦楽八重奏曲は、弦楽四重奏曲を2倍にした構成で、楽器編成では《復弦楽四重奏曲》と呼ばれることがあります。本来は8つの弦楽器よる室内楽曲なんですが、もともとメンデルスゾーンの八重奏曲ではヴァイオリン4、ヴィオラ2、チョロ2という8台の楽器が基本的には独立して動くように書かれています。ですから、それはもう室内楽という範疇を越えて管弦楽的な響きに近づいています。チェロパートにコントラバスを重ねると、オーケストラの弦楽セクションになるので、トスカニーニは、この曲を室内交響曲として演奏しているのです。
まあ、第3楽章が元来の交響曲第1番の第3楽章に転用することを考えていたメンデルスゾーンですからこういう編曲は意に適っているはずです。トスカニーニはメンデルスゾーンの弦楽のための交響曲は録音を残していませんが、これはそれ以上の価値があるということで演奏会に取り上げたのでしょう。元々が名曲ですから、弦楽作品としては非常に充実しています。第1楽章のアレグロ・モデラートからビシッとアンサンブルを決めてオーケストラを引っ張っています。
残念なのは1947年のモノラル録音しか存在しないことです。この編曲を現代に蘇らせて演奏してくれる団体はいないものでしょうかねぇ。