ジョージ・ウェルドンの水上の音楽
曲目/
ヘンデル:ハーティ編曲
1.組曲「水上の音楽」
アレグロ-エアーブレー-ホーンパイプ-アンダンテ-アレグロ・デ・チーゾ
2.組曲「王宮の花火の音楽」
序曲ーアラ・シチリアーナーブレーーメヌエット
指揮/ジョージ・ウェルドン
演奏/ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団
録音:1961
東芝EMI AFRC-533
東芝音楽工業 AA−5014
ここで取り上げるのは、先に入手した「フェーマス・レコード・クラブ」の第3巻に収録されているものですが、実はこのレコードは東芝が発売した「セラフィム名曲シリーズ」の第1回発売にもリストアップされたものも所有しています。つまり、取り上げる方はエンジェル盤、所蔵しているのはセラフィム盤というものです。この2枚はものとしては全く同じもののようです。
廉価盤の最初のシリーズはちょっと地味な色合いの黄土色で色合いで損していたイメージがあります。ただ、このセラフィムは他社にはない曲目を投入していたので、レパートリーを増やしたい小生は当然のごとくこの一枚を購入しています。ただ、クラシック初心者だった頃だったのでこれがずっとオリジナルだと思っていました。廉価盤ではこれがハーティの編曲版とはジャケット表には表記がありません。裏の解説でようやくハミルトン・ハーティによる編曲盤だということがわかりました。
「フェーマス・レコード・クラブ」盤はエンジェルレーベルで製造されています。レコード番号こそAFRC-533
ですが、原盤番号は2YEA-565です。
そして、こちらが1000円のセラフィム盤も同様に原盤番号は2YEA-565です。スタンパー番号こそ違えマスターは一緒ですな。
ということで、久しぶりにレコードに針を落としました。ハーティの編曲版としては定評のある演奏で、個人的にはこの後入手したジョージ・セル/ロンドン交響楽団の演奏より好きです。ジョージ・ウェルドンという名はこのヘンデルとグリーグの管弦楽曲集、エルガー、チャイコフスキーなどで見られるだけで、まあ、ほとんど知られていないでしょう。
2023年4月からバーミンガム市交響楽団の第14代首席指揮者に山田和樹氏が就任しましたが、ジョージ・ウェルドンはその第4代の首席指揮者でもありました。イギリス生まれとあって、此の地の船遊びで演奏された「水上の音楽」はおらが国の音楽でもあったのでしょう。最近こそバロック音楽としての範疇で古楽器による演奏が当たり前のようになっていますが、1960年代から70年にかけてはアイルランド出身のハミルトンハーティの編曲したこのオーケストラ版の演奏が全盛期でした。その中でも、この演奏は中庸を得た演奏として定評がありました。ハーティの編曲はホルンは4本に強化されてはいますが、標準的な2管編成のオーケストラ曲に仕上げているのです。さらに、テンポ設定やダイナミクスに関しても細かく指定して、完全にバロック音楽とは全く違う音楽に仕上げています。
ウェルドンは1963年に南アフリカのケープタウンで客死していますから死の2年前の録音ということになります。このころのロイヤルフィルは、ルドルフ・ケンペが首席指揮者を勤めていて、名手も揃っていて積極的にレコーディングもしていました。そういう時代ですから、この録音もアンサンブルはしっかりしていますし、ロイヤルフィルの輝かしくもエレガントな響きと、ウェルドンの格調高く老練な音楽運びで、録音もバランスのとれた響きで好感が持てます。
このハーティによる編曲盤ではカラヤンも録音を残していますが、まるで風呂屋の浴場での響きのようで聞いてびっくりです。
レコードのB面は同じくハーティが編曲した「王宮の花火の音楽」が収録されています。いずれも15分前後の作品として仕上げられており、レコード時代には重宝した編曲作品だったのでしょうなぁ。曲は水上の音楽より大規模な編成ですから、このハーティバンは2管編成で演奏できるということでは重宝されたのでしょうなぁ。曲自体は水上よりやや地味で、レコードのB面の曲というイメージができています。ウェルドンは十分に原曲の荘厳さと華麗さを取り入れたどっしりとした演奏で好感が持てます。