デジタルの「アラビアのロレンス」
曲目/モーーリス・ジャール
1.序曲 4:26
2.メイン・タイトル 2:16
3.初めて砂漠へ〜夜と星〜ロレンスとタファス 9:40
4.奇跡 2:30
5.これが砂漠だ 2:52
6.ネフェード・ミラージュ〜サンズ・アンヴィル 5:26
7.ガシムの救出 4:10
8.オーダのキャンプに到着 2:13
9.アカバへ〜夜のビーチ 4:43
10.シナイ砂漠 1:09
11.銃声 2:02
12.ホース・スタンピード〜アリ、ロレンスを救出す〜ロレンスとボディ・ガード 5:17
13.・タイトル〜プレイオフ・ミュージック 4:34
指揮/トニー・ブレムナー
演奏/フィルハーモニア管弦楽団
録音/1989/01/10-11、CTSスタジオ、ロンドン
P:レイノルド・ダ・シルヴァ
E:ディック・レウジィ
Silva Screen FILMCD 036
これはいわゆるサウンド・トラックではありません。しかし、オリジナルスコアを使ってデジタルで再録音したものです。映画「アラビアのロレンス」は1962年制作の映画ですが、この録音は1988年になされています。その裏にはこんなエピソードがあります。以下オール・シネマより引用
1962年に製作されたD・リーンの名作「アラビアのロレンス」は、元々ロイヤル・プレミアの時には222分の上映時間であったが、1カ月後には約20分カットされ、以後も上映効率のためなどで次々と短くなっていた。1966年以降は2巻目のプリントが裏焼きになるなどしたまま今日に至っていたものを、欠落部分を探しだして223分に復元、リーンが最終的に216分にカットした。復元には費用がかかりすぎて完成も危ぶまれたが、スコセッシ、スピルバーグ等の働きかけにより88年に「完全版」として上映となった。幸いなことに監督リーン、編集のコーツが直接携わることで当初の編集の間違いを正し、全編にわたって細かいシーンやショットが復元され、フィルムの退化による画質の劣化も蘇った。とりわけ音響効果が飛躍的に改善され、ドルビーSRとグレード・アップ。音楽ばかりでなく、大画面に繰り広げられる移動音の効果が素晴らしい。サントラが失われた部分はオリジナル・キャストが吹き込み、声の衰えはコンピューターで補正するなど緻密に復元。長いシーンの追加は将軍が群略を練るシーンなどそれほどなく、殆どが場面つなぎのカットやエスタブリッシング・ショット、また細かいセリフが復元されている。マイナーカットもあり、子細に比べてみれば多少違った印象をうけるが、圧倒的に画像と音響のパワー・アップしたゴージャスな芸術を前にすれば、ただ息を呑むばかりである。89年、ナショナル・ボート・オブ・レヴュー賞で、復元の功績によりコーディネーターのロバート・A・ハリスが特別賞を受賞した。
というもので、この復元作業の中で欠落部分を埋めたという作業にインスパイヤされて、映画音楽の専門レーベルの「Silva Screen 」が映画のデジタル化に合わせて新しくデジタルで収録したもので、約20分に及ぶ初録音の部分が収録されています。ジャケットに堂々と「Digital Film Scores」と謳ったシリーズの第1号となったものです。ちなみに「大いなる西部」、「市民ケーン」なんかも復元なされています。
ここで指揮をとっているトニー・ブレムナーは変わった経歴の持ち主で、オーストラリアはシドニーの生まれです。最初ニュー・サウス・ウェールズ音楽院で声楽を学び、1960年諸島にイギリスへ渡るとグラインドボーンやイングリッシュ・ナショナルオペラでテノール歌手として活躍します。その後音楽の幅を広げるためクリストファー・パーマーに指揮を学び、のちに映画音楽関係の指揮者として活躍します。
さて、内容的にはサウンドトラックを忠実に再現する手法が取られていて好感が持てます。もともと、サントラの「アラビアのロレンス」はエイドリアン・ボールトがロンドンフィルを指揮したものですが、如何せん映画音楽という視点で録音されているので音質は二の次になっていました。今回は音楽のための録音ですからそういう部分では壮大なモーリス・ジャー流の音楽の世界が堪能できます。
ふつう、サントラは映像を見ながらシーンに合わせて店舗やダイナミックスを調整します。その点では緊張感というかスリリングさはちょっと不足しているかな?というのが正直な感想です。ただ、大音量で聞く楽しみはこの録音は最適です。
YouTubeには「Silva Screen 」が別のセッションで序曲を録音した際のニックライス指揮プラハ市フィルの録音セッションの映像がアップされていましたので貼り付けておきます。