1968年のレコード芸術 5 | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

1968年のレコード芸術 5

 

 

 1968年6月号の表紙です。この年、ヴァイオリニストの海野義雄氏のメンチャイのレコードが発売されました。ジャケットに使われた写真では笑っていませんが、カラーグラビアのページの写真は笑い顔の写真が掲載されています。

 

 

 

 このセッション録音は海野氏が1967年12月にヨーロッパでコンサートを開いた折に録音されています。1967年12月13、14の両日を使いリハーサル3時間、録音3時間のセッションでNDRのホールを使って録音されています。指揮はイッセルシュテット、オーケストラは北ドイツ放送交響楽団という顔ぶれでした。1セルシユてっとはこの時期デッカにウィーンフィルとベートーヴェンの交響曲全集を録音しており、かなり認知度が上がっていたので、そこそこ話題にはなりました。レコ芸ではこの年の2月号でこの録音についてグラビアで紹介していました。そのセッションの様子が下の写真です。

 


 ここではインタビューに答えて、オーケストラはいかにもドイツ的な音を響かせていて、シュヒター時代のNHK交響楽団を彷彿とさせたと語っています。シュヒターはN響の前にこのオーケストラの副指揮者を務めていました。また、日本での録音より、ソロのマイクのセッティングが遠いのが気になったそうですが、その方が全体の響きがまとまって迫力が出るということも語っています。

 

 

 

 

 この当時、日本アーティストが海外のオーケストラと録音するのは極めて稀でした。ただ、こういうことが契機になり、これ以降海外アーティストが来日すると日本でライブ録音ながらレコーディングをするアーティストが増えていきます。

 

 

 こちらはビクターの広告ですが、小沢/トロントがメシアンのトゥランガリア交響曲を発売したのでこの月のカレンダーになっています。

 

 

 フィリップスの広告では、この年ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウが来日していてこの記念版の告知がなされています。左にブルックナー、右にマーラーの新譜が並んでいますがまさに、この時期ハイティンクはこの2大全集を着々と録音していました。

 

 

 単独ではこの年、フルーティストのランパルとニコレが来日していて思いがけない2ショットが実現しています。ランパルの隣は彼の奥さんです。

 

 

 時代ですねぇ、コンサートホールソサエティの広告もありました。このニュゥ会案内ではLP一枚が350円という破格値で入会を誘っています。まあ、4枚の中から1枚だけをチョイスするという形で、4枚全部というわけではありません。送料がベット百五十円で500円というわけです。チョイスできるのはシューリヒト/パリ・オペラ座管弦楽団のモーツァルト41、38番、ドラティ/ロンドン交響楽団のメンデルスゾーンのスコットランド他とリリー・クラウスのシューベルトリサイタル、それにポピュラーレパートリーのサム・クレイトン楽団のmood music/愛の調べというラインナップです。さらに、5日以内に申し込めば、ヴラド・ペルルミュテールのショパンアルバムがもれなくついてくる特典がありました。今の物価なら非常に魅力的ですが、当時の学生の小遣いではちょっとためらわれたものです。

 

 

 
 さて、問題の6月号にはコロムビアがバーンスタインのマーラー交響曲全集の予約締め切りの告知がされています。6月1日で契約が切れるわけですが、それまでに発売したものの発売権は暫くはコロムビアにあったのでしょうなぁ。ちなみに頒布日は6月1日となっていて500セットの限定発売でした。14枚組で28,000円はよほどの好事家しか手が出ませんなぁ
 
 
image
 
 この年はアンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団の来日が大いに話題になりました。キングはロンドンレコード発売15周年を武器にこのスイス・ロマンドの売り出し攻勢をかけ、レコード購入特典でこのコンサートの招待を企画していました。東京・大阪・名古屋の公演に200名を招待するというものです。こういう反則が今でもあれば、クラシックのCDはもう少し売れるんではないでしょうかねぇ。駄目押しのように裏表紙はアンセルメの幻想の広告です。鶴首して15年・・・は魅せられたキャッチフレースで当時はこのレコードに憧れたものです。なを、アンセルメはこの一度しか幻想を録音していません。
 
image
 
 この号の目次は「レコードを作る偉大な人々」ということでの特集を組んでいます。多分小生がレコードのプロデューサーに興味を持った最初の記事で、50-60年代の名録音を送り出したプロデューサーの仕事について列記されています。
 
 
 この時期、エリック・スミスはまだデッカのプロデューサーとして登場しています。いゃあ、懐かしい名前の数々です。別枠ではジョン・カルショウとアンドレ・シャルランについての記事も掲載されています。