パーヴォ・ヤルヴィの幻想交響曲 | geezenstacの森

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パーヴォ・ヤルヴィの幻想交響曲

曲目/ベルリオーズ
『幻想交響曲』Op.14a
1.Reveries, Passions (Dreams, Passions) 15:21
2. Un Bal (A Ball) 6:18
3.Scene aux champs (Scene in the Country) 17:11
4.Marche au supplice (March to the Scaffold) 4:46
5.Songe d’une nuit du sabbat (Dream of the Witches' Sabbath) 10:00
6.劇的交響曲『ロメオとジュリエット』Op.17~愛の情景 16:11

指揮/パーヴォ・ヤルヴィ
演奏/シンシナティ交響楽団

録音/2000/10/08~10 シンシナティ・ミュージックホール、オハイオ
P:ロバート・ウッズ
E:ジャック・レナー

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 こちらはパーヴォ・ヤルヴィが首席指揮者に就任する前に録音されたテラークへの録音の第1弾です。先に取り上げたシベリウスの方は、録音エンジニアがマイケル・ビショップであったのに対してこちらの方はテラーク創始者のジャック・レナーが担当しています。調べると、テラークレーベルは2005年にコンコードグループに身売りされています。このCONCORDはジャズを主体としたレーベルでインディペンデント系では最大手です。ファンタジーレコードも2004年に買収しています。まあ、母体がジャズ中心ということで、コンコードは2009年初頭に TELARC の大幅なリストラを行ったと報じられており、その際、創業者のジャック・レナーら従業員の半数近くが退社したとのことです。

 ヤルヴィはシンシナティ交響楽団とテラークに都合16枚のアルバムを録音しています。その最初の録音がこのベルリオーズの幻想交響曲です。テラークでは以前マゼール/クリーヴランド管弦楽団のものがありましたが、それ以来の録音でしょうか。

 ヤルヴィの指揮はサラッと聴き流していると仕掛けらしい仕掛けをしていないように感じてしまいます。ただ、じっくり聴き込むと細かい仕掛けが随所にあります。まず第1楽章の提示部はしっかり繰り返しています。ほとんどの指揮者はこの部分はそのまま素通りしていますから、あれっと気がつくでしょう。この録音ではコントラバスは右後ろの配置になっているようです。カラフルな音色のベルリオーズにはこの配置の方が安心して聞いて入られます。

 第2楽章はコルネットが入ります。なんでも最終稿ではカットされていて一般の演奏では使用されていないのが普通です。以前ではデイヴィスやクレンペラー、丸定ノン、ハイティンク、アバド等がコルネット入りで録音していました。ヤルヴィのこの演奏でも、このパートが比較的よく聴こえています。以前はスペシャリストとして鳴らしていたデイヴィスの演奏で親しんでいましたが、このヤルヴィも非常に巧い演奏で、このパートがあった方が音楽が多彩になり面白いと感じます。主題のワルツは弦の表情をほんのり甘くしてワルツの雰囲気を優雅に引き出しています。また木管もフレーズの最期を強調してみたり、微妙な色付けをしている。

 第3楽章冒頭の木管の掛け合いは非常にゆったりとしたテンポで開始されています。一瞬音楽が止まってしまったかのような錯覚を感じるほどです。しかし、このテンポで演奏されると寥莫とした雰囲気がことさら強調され、幻想の怪しい雰囲気にどっぷりと浸ることができます。併奏する弦楽器も細かい表情付けがされており、ヤルヴィの本気度がわかります。セッションのほとんどをこの楽章につぎ込んだのではないでしょうか。ちなみに第3楽章に17分以上の時間をかけている指揮者は多くなく、一番遅いのはマルティノン、ついでバーンスタイン、そして怪物ストコフスキーぐらいでしょうか。テラークは基本ワンポイント録音ですが、随所に打ち込まれるティンパニの音も玉砕することなく綺麗に拾っています。

 第4楽章はホルンのゲシュトップを効かせた音を出しながら軽快に進みます。音の混濁がないので不思議とオドロオドロさはなく、現代的にドライに割り切った演奏になっています。ここがちょっと物足りなさを感じさせます。

 終楽章導入はゆっくり入り念入りにかいしされます、ただし、ここでもこのコンビの音は爽やか系なので一生懸命やっているのですが、それほどオドロオドロしてこないのは低弦の迫力不足もあるのしょう。60年代のオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団の録音はレコードでもすごい低域が収録されていて、我が家の部屋が揺れたのを感じたほどです。鐘は微妙に複雑な音を伴っています。チューブラーベルを使っていないのかな?全体に音は華々しくなっていて金環なども炸裂はしているのですが、ちょっと洗練されている響きになってしまっているような気がします。でも、これがアメリカ人の好みなんでしょうかねぇ。

 この音源YouTubeにありましたからよろしかったら確認してみてください。