陰陽師 瘤取り晴明 | geezenstacの森

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陰陽師 瘤取り晴明

著者 夢枕獏 
画 村上豊

出版社: 文藝春秋

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 最近、都で名を馳せる薬師、平大成・中成兄弟は頬に一つずつ瘤がある。秋も深まってきたある日、薬草を採りに山へ入る。大成は道に迷い、鬼達の百鬼遊宴に遭遇してしまう。命がけで舞い踊った大成に鬼達は大喜び、ほうびに瘤を取ってやる。半日後、今度は中成が瘤を取ってもらおうと山へ向かうが...。シリーズ初の絵本登場。

 この本は、夢枕獏氏の公式ホームページ上で連載されたものだそうです。あとがきにもあるように、本書は小説というより、絵本として作られていて、挿画を担当した村上氏は、夢枕の「陰陽師」シリーズの表紙絵をずっと担当しています。夢枕氏は以前から村上と「本文と絵が等分に入った物語」をやりたいと思っていたということで実現した本です。行ってみれば大人のための絵本といってもいいでしょう。

   民話「コブ取り爺さん」を下敷きにしたストーリーには、いつもの陰陽師シリーズにあるオドロオドロしさは亜jまり感じません。むしろひょうひょうとした温かみのある雰囲気に包まれているといっていいでしょう。それは、ここに収められた村上の40点以上にもおよぶカラー絵によるところが大きいと言えます。彼が描く物の怪たちは、どれもひょうきんでかわいらしい。安部晴明や源博雅も、ここではユーモラスなおじさんとして描かれています。

 この本は短編ですが一話読み切りとなっています。ストーリーはこうです。平大成(たいらのおおなり)と中成(なかなり)の双子は、都では有名な薬師です。彼らには頬にひとつずつ瘤があります。その瘤は長年毒見してきた薬草のエキスが詰まったものす。ある日、薬草を採りに山に入った大成は道に迷い、偶然鬼たちの遊宴に遭遇してしまいますが、命がけで舞い踊った大成は鬼たちに許されて、邪魔なコブを取ってもらうことができます。しかし、鬼たちは彼に半月後、もう一度踊るよう強います。

 双子の危機を知った安倍晴明と博雅は、鬼たちのいる山へと彼らの替わりに潜入するのでした。例によって呪を
使い鬼たちの目を欺きますが、平中成に扮した博雅は葉二を吹き、その笛を交換した鬼がその音色を聴いてしまい素性がばれてしまいます。しかし、博雅の笛は鬼をも感動させる音色で、その音色で鬼たちを懐柔し、まんまと瘤を取る紐を手に入れることができます。

 で、この作品、題名からもわかるように昔話「瘤取りじいさん」を下敷きにしています。前半の展開はほぼ昔話通りですが、降雨班はちょっと夢枕氏のひねりが効いています。シリーズを読んでいれば、あの話の後日談かと推測ができます。

   何と言っても、通常の単行本よりは薄く小さい本のサイズや、表紙の手触りが和紙のそれに似て、いつもと違う雰囲気を肌で感じ、あっという間に読み終わってしまいます。