フルネのビゼーとブラームス | geezenstacの森

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フルネのビゼーとブラームス

曲目
ビゼー/交響曲第1番ハ長調 
1.第一楽章 Allegro vivo 8:25
2.第二楽章 Adagio 10:49
3.第三楽章 Allegro vivace 5:08
4.第四楽章 Allegro vivace 7:07
ブラームス/交響曲第3番ヘ長調 Op.90*
5.第一楽章 Allegro con brio 9:33
6.第二楽章 Andante 8:54
7.第三楽章 Poco Allegretto 6:44
8.第四楽章 Allegro 9:28

指揮/ジャン・フルネ
演奏/東京都交響楽団

録音/2000.05.13 サントリーホール ライヴ録音
  2001/06/20 東京芸術劇場 ライヴ録音

フォンテック FOCD-9588

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 ジャン・フルネの名前はクラシックを聴き始めた当初からよく耳にしていました。ただ、大手のレコード会社からはあまり録音が出ていなかったのではないでしょうか。そんな中でも、1958年にドビュシーの歌劇『ペレアスとメリザンド』を日本初演するために初来日し、以来92歳で最後の来日をする2005年の引退コンサートまで約半世紀の間、様々な日本のオーケストラに客演し、明快な造形と高雅な気品を併せ持った指揮ぶりで聴衆を魅了しました。小生もフォンタナレーベルでの数々の名演を親しんだものです。

 今思うと不思議な指揮者で、小生の記憶ではオランダのオーケストラやチェコフィルトはかなり録音を残していますが、ステレオの時代になってからはフランス人でありながら、あまりフランスのオーケストラとの録音を残していません。

 フルネは常任指揮者にこそなっていませんが、日本の在京オーケストラを中心に数多く共演しており、NHK交響楽団を筆頭に日本フィル、群馬交響楽団、東京都交響楽団、札幌交響楽団などに客演しています。

 特に東京都響とは1983年-1986年の常任客演指揮者を筆頭に晩年まで共演を重ね、引退の場を日本と表明した際には、世界中から驚きの声が上がったといいます。最後のプログラムは、都響とのベルリオーズの序曲『ローマの謝肉祭』、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番(ピアノは伊藤恵)、ブラームスの交響曲第2番というプログラムでした。



 さて、このレコードですが、ここでもお国もののヒゼーと得意曲だったブラームスがカップリングされています。ビゼーは2000年の録音ですが、すでに80代後半の枯淡の境地とでもいうべき頃の録音です。しかし、最初このヒゼーを聞いたときには驚きました。何しろ第1楽章は普通の指揮者なら7分台中頃のテンポで指揮するのがほとんどで、第一楽章の演奏に8分以上をかける演奏を耳にしたのはこのフルネが最初でした。そんなことでまるで別の作品を聴いているような印象でした。

 これはもう時代の人ではないのかな?という印象を持ったのですが、何度も聴き込んでいくうちにこのテンポモありなのかと思えるようになりました。この曲はバレエ音楽としても演奏されるほどテンポは快活に進んでいくのですが、フルネは純音楽としてのフランスの交響曲として演奏しているのです。ヒゼーの作品としての位置付けは秀作というレベルで、当時はオペラ以外の音楽がフランスの音楽界では認められていなかったこともあり、作曲家の生前には一度も演奏されていません。

 まあフランスではそもそも交響曲が少ないという流れの中では、傑作と言ってもいいのではないでしょうか。その作品を、こういう形で料理しているのは一聴に値します。万人向きではないかもしれませんが、フルネの芸術性が垣間見えます。

 これに対して、ブラームスは渋さはそこそこに旋律線の綾を程よいバランスで、重くならずさりとて枯れすぎずというちょうどいい塩梅で音楽を積み上げています。都響もいい演奏を繰り広げています。