口入屋用心棒 38 武者鼠の爪
著者 鈴木英治
発行 双葉社 双葉文庫

半月前に品川に出かけて以来、消息を絶った医術方教授の雄哲。その後雄哲の助手だった一之輔も行方を晦まし、二人を心配する湯瀬直之進らは、同心の樺山富士太郎に品川での探索を依頼する。川越行きの荷船に乗る雄哲を目撃したという証言を得た直之進は川越に向かう。書き下ろし人気シリーズ第三十八弾。----データベース---
昨年の12月以来の続きです。御上覧試合の間ずっと直之進のセコンドだった鬱憤を晴らすように探索にチャンバラに佐之助が大活躍します。この卷では、未だに帰ってこない秀士館の医術方教授の雄哲と、その雄哲を探しに行ったっきり帰ってこない一之輔を探しに出かけることになります。
秀士館では、館長の佐賀大佐衛門を始め、薬種教授方で薬種問屋古笹屋主人の民之助なども集まり、半月もの間、何の連絡も無いのはおかしいと、佐之助と民之助は一之輔が生国だと言っていた川越へと探索に向かうことになります。直之進は、御上覧試合の決勝で室谷半兵衛に打たれ骨折した右腕も癒えていないため留守番ということになったのです。
秀士館では、館長の佐賀大佐衛門を始め、薬種教授方で薬種問屋古笹屋主人の民之助なども集まり、半月もの間、何の連絡も無いのはおかしいと、佐之助と民之助は一之輔が生国だと言っていた川越へと探索に向かうことになります。直之進は、御上覧試合の決勝で室谷半兵衛に打たれ骨折した右腕も癒えていないため留守番ということになったのです。
そのころ、川越の新発田従五郎の屋敷では、八重姫を助けるために雄哲が必死の看病を続けていましたが、その新発田屋敷を見張る目がありました。
一方、富士太郎も雄哲の探索に加わり、品川で雄哲が川越行きの船に乗り込んだことを聞き込み、直之進に知らせます。そこで、直之進も川越へと向かうことになったのでした。まあ、これで主人公もメインストーリーに絡むことになるのですけどね。
本書では、川目郷之助という忍びの頭目が直接的な敵役として登場しますが、これが今ひとつの印象しかありません。今までの敵キャラクターと比すと小粒すぎます。本書『武者鼠(ムササビ)の爪』というタイトルは彼を指しているのですが、個性的な性格設定をしてはあるものの、佐之助や直之進らシリーズを通して成長してきたキャラクターに見合う人物とは言えません。残念なところです。
まあ、このシリーズ、シリーズタイトルの「口入屋用心棒」というのも有名無実化しているので別物シリーズと言ってもいいのですが痛快時代小説では主人公らの活躍の場面を見せねばならず、そのためには主人公が魅力的に活躍するための、魅力的な事件を設定する必要があります。
ここでは、今まで知りませんでしたが川越忍者が登場します。調べると、武蔵国川越の地は、徳川幕府において関東防備の拠点とされていた歴史的背景と、川越城下から偶然にも発見された忍具などからも、城に仕えた忍びの存在があるようでまんざら創作ではないようです。
面白くないシリーズではありません。面白いのは面白いし、スラスラ読めるのでいいのですが、もう少しの初期のワクワク感が欲しいところです。