キングレコード洋楽サマー・セール・ビッグ・10キャンペーン・ダイジェスト
新しい書庫を作りました。近年レコードが見直され、レコードの新譜が相次いで発売されています。デジタル収録したものをアナログで発売するという何とも不思議な現象で、しかも手がかかっているのでCDよりも高いという不思議な現象です。まあ、それでも売れているというのですから、音の良さを求めているのではないのでしょうなぁ。
かくいう小生は最新のものには全く興味がありません。相応の年齢ということもあり、もうCdでの収納音域を超えた音(モスキート音)なんかを聴き取ることができなくなっていますから、SACDにも興味はありませんし、目もだいぶ衰えてきてとても4K8Kなんぞは必要ありません。本当はブルーレイも必要のないくらいで、以前のDVD品質で十分です。若い人はそれなりに魅力のスペックなのでしょうが、一部のマニアックな人種ならいざ知らず、ほとんどのシニア世代はそんなものを必要とするとは思えません。レンタルするのもDVDで十分だし、ネットの配信レベルで充分です。
このレコード、片面20~30分という時間は一つの視聴単位として体に染み付いています。人間が本当に集中できる時間なんてこんなものではないでしょうか。CDの60分という時間は何枚も続けて聴くにはしんどいです。その点レコードは30分単位でリセットされますから以外と続けて聴いても疲れません。まあ、そんなことで昔のレコードを引っ張り出してきて、ぼちぼち聴いています。
さて、コレクションは90年代にオークションでかなり処分してしまいましたので、今手元にあるのは3,000枚ほどでしょうか。その中にはかなりのジャンク品も含まれています。この書庫ではそういうレコードにポットを当てて取り上げていこうと思っています。
まず、取り上げるのが今日の一枚です。昭和45年のキングレコードのレコード店への販促用サンプル用レコードです。こういうジャンクレコードは当時は古書店のほんの一角にひっそりと置かれていました。ですから、まめに覗きに行かないと捕獲できません。
販促用ですからジャケットは毎回同じものが使用されます。ただし、最下段のレーベルの部分は年度によってかなり違います。この昭和45年のジャケットは、
キング、ロンドン、コマンド、ABC-PARAMOUNT、ウェストミンスター、ヴァンガード、インパルス、テレフンケン、セブンシーズといったレーベルが印刷されています。このうち最後のセブンシーズは一本買いのレーベルで、様々なレーベルを扱っていました。
さて、この販促レコード、タイトルは「キングレコード洋楽サマー・セール・ビッグ・10キャンペーン・ダイジェスト」と銘打って、次のような曲が収録されています。
A面
「リーチ・アウト/バート・バカラック」AML-56
1.リーチ・アウト
2.愛を求めて
「ボサ・リオ/ライヴ・アット・EXPO70」SR-410
3.スピニング・ホイール
「ダニエル・ビダル/ゴールデンプライズ」GP-25
4.チャオ・ベラ・チャオ
5.モナムール・モナミ」
「あの愛を再び」SR-406
6.愛の終わりのコンチェルト
「男と女」SR-419
7.男と女
B面
「永遠のウェス・モンゴメリー・ダブルデラックス」AMW-7-8
1.エリノア・リグビー
2.イエスタディ
「ビバ!ハーブ・アルパートとティファナブラス」AML-60
3.マルタ島の砂
「ルフェーブル/ゴールデンプライズ」GP-23
4.シシリアン
5.裸足のイサドラ
「クリツクルウッド・グリーン/テン・イヤーズ・アフター」DL-20
6.ワーキング・オン・ザ・ロード
「豪華版レイ・チャールズ全集」GW-301-3
7.愛さずにはいられない
「マントヴァーニ・スペシャル」SLC-318
8.愛よ、さようなら
どうです、このラインナップ。名曲ぞろいとは思いませんか?これ一枚あれば当時のヒット曲を知ることができます。昭和45年といえば1970年で、それこそ日本中は大阪万博で盛り上がっていた年です。この年の3月14日に万博は開幕しています。ここに収録されている演奏は4月4-5日に万博ホールで行われたライブを収録して、早くも7月に発売しています。セルジオ・メンデスとブラジル66の弟分の存在でしたが、この年は本家を凌ぐ人気を誇っていました。ここには、ヒット曲の「サン・ホセへの道」ではなく、ブラッド・スエット・アンド・ティアーズのヒット曲「スピニング・ホイール」をカバーしています。こんな演奏でした。
バート・バカラックもこのころは絶大な人気がありましたが、小生は特に興味はありませんでした。しかし、映画音楽も書いていた関係で名前は知っていました。ダニエル・ビダルの名前は今でも時々見かけるのではないでしょうか。バークレーレコードから様々なヒット曲を連発していました。このアルバムでは日本語で歌ったバージョンが収録されています。他には「天使の落書き」やジョー・ダッさんの名曲「オー・シャンゼリゼ」なんかを日本語で録音しています。
フランシス・レイもこのころが絶頂期でこのレコードでは2枚のアルバムを取り上げています。「あの愛を再び」はサントラ盤で、「男と女」はフランシス・レイ楽団のものが収録されています。
B面のトップはウェス・モンゴメリーです。ここではレコード番号からするとA&Mからリリースされていますが、元々はクリード・テイラーのCTIに録音しています。初期のアルバムはA&MとCTIが並んで表記されていました。で、今でもこの録音は版権はA&Mが持っているようで、今はユニヴァーサルから発売されています。
ハーブ・アルパートとティファナブラスの「マルタ島の砂」はこの年のヒット曲だったんですなぁ。もともと、この曲は1969年にベルト・ケンプフェルトとハーバート・レーバインの共作によりベルト・ケンプフェルト自身の楽団演奏でリリースされ、翌年になってハーブ・アルパートとティファナブラスがカヴァーしたものです。残念ながらハーブ・アルパートとティファナブラスとしての最後のヒットとなりグループは解散してしまいました。日本では1970年3月から6月にかけてヒットしています。ちょっと比較で2つの演奏を聴き比べてみましょう。
アメリアッチスタイルのハーブアルパートの演奏の方がアップテンポでノリがいいのが聴いてわかります。
このサンプラーを聞いていると、当時いかにイージー・リスニングがブームであったかがわかります。バート・バカラック、フランシス・レイ、レイモン・ルフェーテーブル、マントヴァーニと4つのオーケストラの演奏が収録されています。キングにはこの他にも、フランク・チャックス・フィールド、アル・カイオラ、テッド・ヒースなども、抱えていましたから毎月のように新譜が溢れていました。
ブルース・ロックの「テン・イヤーズ・アフター」はこれが4枚目のオリジナル・アルバムです。DLという番号はロンドン-デッカ翼下のデラム(DERAM)というレーベルで、ロック中心に発売していました。このテン・イヤーズ・アフターやムーディ・ブルース、キャメルなどが所属していました。こういったサブ・レーベルの設立は世界初とされています。
レイ・チャールズはアトランティックレーベルのイメージが強いのですが、これはパラマウントABC時代の録音ということでキングレコードからの発売となっています。今は両レーベルともワーナー翼下です。盲目の歌手として一時大和築いた人で、日本ではサザンのいとしのエリーをカバーしたことで知られていますし、小生はUSA for AFRICAでの「ウィー・アー・ザ・ワールド」の熱唱が忘れられません。