
今名古屋の松坂屋美術館で開催中の「再興第103回 院展」へ出かけてきました。この院展は毎年定期的に出かけているので各々の作家の作風というものがどのように変化しているのかというのがわかってきています。そんなかで出会った注目の作品を取り上げてみます。

こちらは夏の影 Shadows of Summer 岩永 てるみ です。この作家はしばらくは空港のターミナルをずっと描いていました。ここに来てまさかの窓越しの植物がキャンバスに広がっていました。

こちらは内閣総理大臣賞を受賞した北田克己氏の「風の遠国Distant Land of Wind」です。こちらは受賞作品ということでキャプションが付いていました。
「若いころ、中国の博物館で見た馬の彫刻作品の造形が目に止まりました。騎乗する人よりもはるかに生き生きと表現されており、不思議に思ったものです。以来、内外行く先々でスケッチをするようになりました。速い馬を求めて遙かな旅をしたという古代から、この生き物に注がれてきた眼差しを辿ることができます。」
以前には馬を題材にした「千古の風」という作品の流れを組むものでしょう。

院展理事長の田渕俊夫氏による「厳島神社」です。
「広島湾に美しい姿を映す厳島神社は、平安末期に平清盛が新たに社殿を造営して、平家一門の隆盛を願う氏神となりました。平家滅亡後も源氏をはじめ時の権力者の崇敬を受け今日に受け継がれています。実際にその優美な姿は時代を越えて人びとの心を引き続けているのです。」
普通は海に浮かぶ鳥居からの場面が多いのが厳島神社ですが、音大は本殿を正面から捉えています。新芽トリックでありながら微妙らそうなっていないところが良いですねぇ。

でもって、こちらは想像の世界ですが、出雲大社を描いたであろう宮廽正明氏の「行雲流水 Passing Clouds, Flowing Water」です。まさに天に向かってそびえ立つ神殿ですなぁ。
「天に向けた建立が始まる。幾度となく自然によって跳ね返され、その度毎に神への信仰は高まり上へ上へと伸びていく。山々の谷間に仕込まれた自然の雲製造機により打ち出された吐息は、高きを求めた出雲の神様を50mの雲の上に押し上げていく。
仮説も雲のように天へと湧き出し、出雲を鉄の文化圏に仕立てていく。出雲の砂鉄で作り出された和鉄で柱を繋ぎ合わせ、朱と見間違うほどの真っ赤な弁柄で柱を覆いつくす。
過去を想像する事は、未来を思い起こす事以上に楽しい 。」

画面の前で釘付けになったのが下田義寬氏の「大輪の音 The Sound of Big Flowers 」です。画面はキャプションにあるように山中湖なんですが、富士山が赤く染まるほどの迫力の花火に圧倒されました。
「8月、山中湖の花火大会に招待されて、東京から車で向った。夕闇とはいえ倒映した富士の姿はまだくっきり見おろせる峠のあたりから車は滞りがちになる。突然 ドドッ、ドドッ、ドドーンと宴は始まったようである。
まだ、明るさの残った空、富士、湖そして爽快な音とともに空中ではじけ散る花火に私は一気に異次元の世界浮遊しているようでした。偶然止った見おろせる場所が特等席で、心底忘れられないひとときでした。
予定の席ではもちろん、花の色彩と大小の音とがタイミングよく繰り出され堪能しました。
小さな画面に一夜の饗宴の一端でも表現したいと大輪の花びらを富士の頂きに配し、この花火に携わった人々の心意気を感じながら筆をとった。」

初入選作品では、まるで写真のような外山諒氏の「暮れ合い Dusk 」も立ち止まって見入った作品です。植物のシルエットに溶け込んでいますが、一羽の蝶が暮れ行く空に配されています。赤ではなくダークブルーの色彩が画面を引き締めています。