THE FASE4 WORLD OF STOKOWSKY
曲目/
1.ラヴェル/バレエ「ジャンヌの扇」よりファンファーレ 2:09
2.チャイコフスキー/バレエ「眠れる森の美女」よりワルツ 3:36
3.ストラヴィンスキー/「田園曲」 3:40
4.チャイコフスキー/「スラヴ行進曲」 9:46
5.ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」 5:22
6.チャイコフスキー/バレエ「白鳥の湖」より「小さな白鳥の踊り」 6:30
7.ムソルグスキー/展覧会の絵より「キエフの大門」 7:30
指揮/レオポルト・ストコフスキー
演奏/ヒルヴェルスム放送管弦楽団 1
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 2,6.7
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 3
ロンドン交響楽団 4.5
録音/1960年代
P:トニー・ダマート
E:アーサー・リリー
Decca SPA 159


こちらもデッカのSPAシリーズの一枚です。このシリーズ元々はサンプラー的な要素が強く、ジャケット裏の曲目を見ても、曲の横にオリジナルレコード番号が書かれています。
このSPAシリーズはとうとう日本では発売されませんでした。まあ、発売元のキングがオリジナルの1000円盤シリーズを矢継ぎ早に発売していて、本国のデッカをある意味凌駕していた部分があります。このフェイズ4ものは日本では「オーディオファイルシリーズとしての形で発売されたものもあります。ただ、このストコフスキーの一枚はとうとう発売されませんでした。そもそも、こういう形のサンプラーすら作られませんでした。
しかし、このストコフスキーのレコード、よく考えられています。まず、選曲が凝っています。こういう選曲での発売のセンスは日本人には無いでしょう。冒頭のラヴェルの『バレエ「ジャンヌの扇」よりファンファーレ』は殆ど知られていない作品です。このレコードを購入した時、ストコフスキーはこんな曲も録音していたのか、という驚きでした。僅か2分あまりの作品ですが、未知の発見です。これだけでもサンプラーの役割は十分果たしています。
2曲目にはよく知られたチャイコフスキーもので、いわゆるストコフスキーの十八番です。そして、3曲目に今度はストラヴィンスキーの「田園曲」です。この曲を初めて聴いたときはストラヴィンスキーにこんな曲があることすら知りませんでした。まさに選曲者の思う壷です。当時は必死になってストラヴィンスキーの作品目録にあたり、漸くこの曲の原曲が「ヴァイオリンと木管四重奏のためのパストラーレ」と知った訳です。でも、暫くはこのオーケストラ演奏がオリジナルだと思い込んでいました。最近ではヤニック・ネゼ・セガンがこのストコフスキーの編曲による演奏を録音しています。
このアルバムにはチャイコフスキーが3曲収録されています。なかでも、この「スラヴ行進曲」はデモンストレーションとしては最高でしょう。最初の低弦のユニゾンはおもいっきり力が入っています。まあ、ストコフスキー特有の誇張ですが、曲を面白く聴かせるには効果的な手法です。音楽は楽しくなくちゃね。
レコードのB面になるワーグナーからはそのストコフスキー節が炸裂しています。「ワルキューレの騎行」では金管が炸裂し、白鳥の湖では独自の編曲でバレエそっちのけで名旋律がストコフスキーの10本の指から紡ぎだされます。最近では指揮棒を使わない指揮者が少しづつ増えてきていますが、元祖はこのストコフスキーでしょう。
最後は自身の編曲によるムソルグスキーの「展覧会の絵」からキエフの大門です。聴き慣れたラヴェル版はトランペットのソロから入りますが、ストコフスキーはストリングスから入りますからびっくりしてしまいます。どちらかというとラヴェルは大人目線、それに対してストコフスキー版は好奇心おう盛な子供目線、そんな違いのある編曲です。多分子供たちに二つの展覧会の絵を聴かせたら6対4でストコフスキーを選ぶのではないでしょうかね。
兎に角この一枚、ストコフスキーという指揮者を再発見した一枚でありました。