アナログ穴太郎音盤記
著者 湯浅学
発行 音楽出版社

2010年以降の新しいアナログ盤を聴きまくり。ときにしみじみ、ときにあふれる音の豊かさ清らかさ雑味の楽しさ太さなどを考える随筆集。 『アナログ穴太郎』『アナログ穴次郎』『アナログ針太郎』~とタイトルを変えながら、月刊音楽雑誌『CDジャーナル』で2011年から続く連載に、『ミュージック・マガジン』誌の輸入盤レビュー(CDを紹介していたものはアナログ盤で買い直し)と、書き下ろし(約40本! )を加え1冊にまとめました。取り上げたアルバムは約120枚。再録分は加筆訂正しています。
また、自宅とその近所で著者自身が撮りおろした写真には湯浅家の猫たちも総出演!
読んで楽しい、眺めてかわいい本に仕上がりました。---データベース---
この本で取り上げているアナログ盤は、ボブ・ディラン、プリンス、ニック・ロウ、レナード・コーエン、デヴィッド・ボウイ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ジョン・ケージ、デレク・ベイリー、サン・ラー、ヒラリー・ハーン&ハウシュカ、Perfume、岡村靖幸、相対性理論、細野晴臣、ニール・ヤングの6inch、ブライアン・ウィルソンの78回転盤、キティ・デイジー・アンド・ルイスによる同楽曲の7inch(45回転, ステレオ)と10inch(78回転, モノラル)、様々なレコードの無音部を集めた珍品を含むアンビエントと実験音楽の諸作など。近年のリリースであってもすでに入手困難となっている作品もあり、盤の奥深い魅力に触れられる貴重な一夜となること必至です。この本では、CDジャーナルでの連載60回に、ミュージック・マガジンの輸入盤コーナーで取り上げた20枚と、書き下ろしの20枚を追加して構成されて計100枚のレコードを取り上げています。また、紹介するレコード盤を。全て著者が撮っており、一緒に生活するネコも登場したりして生活感が垣間見えつつもお洒落な写真集ともなっています。
目次
■針飛びの溝ゆきもどり午前四時
■真空管真冬のアンプに猫まるい
■透け盤を木蓮の散る夜に翳し
小生は手持ちの大半がクラシックですが、それでも、ポップス、イージーリスニング、ジャズといったアルバムも未だに所有しています。で、最近では中古レコード店めぐりの際はポップスも当時話題になったものであれば入手するようにしていますから、未だにレコードは増え続けています。てなことで、レコード趣味といえば中古レコードの方が正統というかエラく扱われているようなところがあります。しかし、これは一つの趣向でしかなく、改めて考えると過去のものを漁るという変な話でしかありません。しかし、ここで取り上げられているのは、ほぼ新作です。ほぼというのは過去の音源を新たにレコードで発売したものも含まれているからです。ここでは、著者の琴線に触れた新譜をCDではなくレコードとして取り上げています。
一例を挙げれば、ポール・マッカートニーの名盤「RAM」なんか、1971年の作品なんですが、何とその音源を全曲のモノラル・ミックスしたものが2012年に発売されています。ここではそのレコードを取り上げているんですなぁ。なんでもラジオ用に制作された音源だそうでこれが最高にいかしているというんですなぁ。文章を読んでいるだけで買いたい衝動に駆られます。
そして、唯一といってよいヒラリー・ハーンがハウシュカと組んだ「シルフラ」も取り上げられています。何とこの作品日本ではCDでしか発売されなかったのですが、ヨーロッパではLPも発売されて、そのLPにだけボーナストラックがあるという一時代前とは違うアプローチになっているんです。粋な事をしますなぁ。こういうものまで取り上げるということで、氏は評論家としてレコード買ってるんじゃなくて好きだから買ってるのがよくわかります。そして、レコードの魅力とレコード好きな気持ちが溢れている本に仕上がっています。ただ、難点はレコードというCD時代にあってはニッチな商品を取り扱っているという事で、かなりの作品が入手不可能となっている事です。ちなみに、このヒラリー・ハーンのレコードを検索したらタワレコは扱いなし、HMVは紹介していても購入不可のマークが出ています。トホホの世界ですな。
さて、この本で最後に紹介されているレコードはデヴィッド・ボウイの「★」でした。でも、ソニーは国内ではLPを発売していません。