アバド/マーラー交響曲第9番 | geezenstacの森

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アバド/マーラー交響曲第9番

曲目/マーラー
交響曲 第9番 ニ長調
1. Andante Comodo 25:52
2. Im Tempo Eines Gemächlichen Ländlers. Etwas Täppisch Und Sehr Derb 14:56
3. Rondo-Burleske. Allegro Assai. Sehr Trotzig 12:21
4. Adagio, Sehr Langsam Und Noch Zurüekhaltend. 25:56
5.Applause 1:58

 

指揮:クラウディオ・アバド
演奏:ベルリンフィルハーモニー管弦楽団

 

録音:1999/09  ベルリン、フィルハーモニー
P:クリストファー・オールダー
E:クラウス=ペーター・グロス

 

DG 4792219(4791478)

 

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 この一枚も「ベルリンフィル/グレート・レコーディング」に含まれていた一枚です。しかし、このCDのみオリジナルジャケットとデザインが異なります。どういうことなんでしょうかね。もともとは、アバドの写真の部分が「MAHLER」の形に切り抜かれていました。

 

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 今回取り上げるのは「ベルリンフィル/グレート・レコーディング」ですが、うかつにもこの録音は以前発売されたアバドの「シンフォニーエディション」にも含まれていました。ボックスセットを購入しても聴いてい無いということが露見してしまいます。で、アバドのマーラーの9番は同じDGにウィーンフィルとのセッション録音もあるのですが、このベルリンフィルとの録音がセットに採用されたということはDGとしても、こちらの方が出来が良いと認めたんでしょうかね。

 

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 個人的には何の先入観も無くこのディスクを聴いたのですが、確かに心に染み入る演奏でした。マーラーの交響曲全集はテンシュテットやブリリアントの全集は所有していますし、他にもワルターとかバーンスタインとか色々聴いてきましたがですが、必ずしもマーラーという作曲家にあまり興味が無いのでこれまで、これまで交響曲第9番でここまで、注目して聴き入った演奏は有りませんでした。

 

 ここでのアバドは内省的な第1楽章を、実に柔らかく、しかも深遠さと荘厳さ持って、淡々と指揮を進めています。ライブ収録というのもアバドを後押ししているのでしょうか、第1楽章から何か熱にうなされたかのような気迫のこもった演奏を繰り広げています。9番というと因縁めいた作品で、マーラーが自らの死を予感して、過ぎ去リ日の追憶に耽っているような雰囲気に満ちた作品ですが、アバドは自身の癌という病魔を意識してか、マーラーの思いに自身の死期を悟ったのか深遠な演奏になっています。

 

 この第1楽章でぐっと聴衆を惹き付けておいて、第2楽章はさらに情念がそのまま反映されたような激しい演奏になっています。オーケストラもアバどとのコンビが10年に及ぶということで、阿吽の呼吸でテンポの揺れや止め、跳ねに柔軟に対応しています。これを聴いていると本当にベルリンフィルはうまいなぁと思ってしまいます。

 

 マーラーの音楽をあまり聴かないのは、第1番を除いて音楽が歌曲的で、基本的にテンポのメリハリがあまり無いことで、およそ交響曲らしく聴こえてこないその音楽です。まあ、この思いはブラームスの交響曲にもいえることですが、ブラームスの場合は構成ががっちりしているのでまだしも聴けるようになったという所です。学生時代は生涯ブラームスは聴くことが無いだろうなぁと思っていたほどです。

 

 さて、第3楽章はウィーンフィルの旧盤よりもかなり速いテンポで熱っぽく音楽を紡いでいます。特に終盤近くのオーケストラのパワー全開の部分は、アバドがオーケストラを煽ってグイグイ引っ張っていく様が目に浮かびます。

 

 白眉は第4楽章でしょう。アバドはこの第9番のライブでは第4楽章の進展に連れてホールの照明をだんだん落とし、最後にはほの暗さの中でこの楽章を終えるという演出を施したことがあるようですが、この演奏はまさにその情景を彷彿とさせる演奏で、ここでアバドは、あたかも息を止めて、天上から聴こえてくる音楽を聴き取ろうとするかのように指揮しています。Wiiフィル盤よりもこの楽章は演奏時間も長く、まさに「死に絶えるように」と書かれた最後の小節へと向かうに従い、静寂さが辺りを覆う演奏になっています。この演奏を聴くと、アバドがベルリンフィルと未完の第10番を録音しなかった意図が汲み取れます。素晴らしいのは血用集の拍手もまた然りで、静けさの中に消えた演奏を慈しむような形で、終演後暫くしてから拍手をはじめています。こういう演奏を聴くと、日本人のがっつくような先を争うように演奏後拍手する様が幼稚に見えてきます。

 

 それにしても、この録音はライブながらよくバランスの取れた音作りがなされています。エンジニアのクラウス=ペーター・グロスはこのシリーズで初めて目にした名前ですが、いい仕事しています。第1楽章だけ貼付けておきます。