ハンス=ユルゲン・ワルター
チャイコフスキーのバレエ音楽
曲目/ チャイコフスキー
バレエ「白鳥の湖」組曲Op.20
1.情景
2.ワルツ
3.四羽の白鳥の踊り
4.情景
5.ハンガリア舞曲
6.第4幕-情景
バレエ「くるみ割り人形」組曲
1.小序曲
2.行進曲
3.こんぺいとうの踊り
4.トレパック
5.アラビアの踊り
6.中国の踊り
7.葦の踊り
8.花のワルツ
指揮/ハンス=ユルゲン・ワルター
演奏/ハンブルグ放送交響楽団
プロ・ムジカ交響楽団
演奏/ハンブルグ放送交響楽団
プロ・ムジカ交響楽団
録音/1950年代
日コロムビア MS1006AX

レコード時代にはお世話になった人が多かったのではないでしょうか。ただ、小生はどうも胡散臭い名前だなあと思い手にしなかった指揮者でもあります。あまりに通俗名曲の録音が多いので、どうせやっつけ仕事だろうと思ったわけですな。CD時代で言えば、アントン・ナヌートみたいな存在なんでしょう。でも、ナヌートは初めて聴いた時にビビット感じるものがあり、以後コレクションするようになりましたが、レコード時代はさっぱり手が出ず、これは所有するハンス=ユルゲン・ワルターの唯一のレコードです。
なにしろ、当時の指揮者名鑑なんかにはまったく名前が登場しない指揮者でしたから存在自体が怪しかったものです。レコ芸で初めて彼の名が紹介されたのは1996年に発売された「指揮者のすべて」が最初だったように思います。今は引退した?出谷啓氏が紹介記事を書いていました。以下その紹介文です。

「ドイツ、シュベーリン地方のメックレンブルクに1919年、生まれ、1945年からハンブルク高等音楽院で学んだ。50年からハンブルク室内管弦楽団の指揮者になる。その後、ロイトリンゲンのスワビア交響楽団の主席指揮者に就任した。LP初期からMGMとミュージック・サウンド・ブックのために、いわゆる通俗名曲の数々を録音し、日本でもさまざまな廉価盤レーベルを通して発売された。オーケストラはほとんどハンブルクフィルで、数曲の現代音楽も録音している。米ロイヤルには「道化師」「オテロ」などのオペラも録音している。」
あちこちで紹介されている内容もこれに基づくものが殆どです。まあ、こんな程度の内容です、しかし、調べてみるとなかなか幅広い活動をしていたことが伺えます。まず、ポップスの世界では良く知られていた101ストリングスですが、これも実態はあまり知られていないオーケストラでした。wikiでも結成は1957年ハンブルクということが記載されているだけですが、まさにこの頃からハンス=ユルゲン・ワルターがステレオ録音で活躍し始めた時期です。で、本人の話で、このオーケストラとの演奏の指揮に関わっていたことが分りました。まあ、その際はカール・ロイターという偽名を使っていたようですけどね。あのダイナミックな101サウンドを彼が指揮していたことが分って正直感動です。

色々録音を残していると思ったのですが、通俗名曲のレコーディングレパートリーは意外と少なく、ソンドラ・ビアンカとの協奏曲録音はありますが、オーケストラ曲としてはベートーヴェンの交響曲は2、5、9番、チャイコフスキーの悲愴、ブラームスは無し、ドヴォルザークは「新世界」のみ、モーツァルトは41番、シェエラザード、ローマの松、ガーシュインやルロイ・アンダーソンのアルバムなどです。
さて、このレコード小生の記憶の中では1973年に発売されたキングから発売されたカラヤンの1000円盤に含まれていた同企画のレコードがあまりにも素晴らしかったので、所有したいたことも忘れていたぐらい棚の肥やしになっていました。そんなことで、久しぶりに取り出して聴いてみました。最初、くるみ割り人形から聴き始めたのですが、こちらは確かにステレオ初期の録音で、不自然に音場が左右に分かれています。演奏はこちらの方が、プロ・ムジカ交響楽団となっていますが、多分室内オーケストラに毛が生えた程度の編成なんでしょう。木管のフルートなんかオンマイクで完全に右チャンネルに収録されていますし、音場が意外なほどデッドです。録音はこちらの方が古そうです。ですがアンサンブルはそれほど悪くありません。もともとがハンブルクの放送オーケストラですからが母体ですからそこそこの水準を持っています。下記はYouTubeにアップされているおそらくハンス=ユルゲン・ワルターの唯一の音源によるチャイコフスキーの「くるみ割り人形」です。
これに反してバランスは「白鳥の湖」の方が良いようです。こちらはやや大きなホールで収録したようで音場に広がりがあります。どちらかというとデルヴォーが指揮したハンブルグフィルのメンデルスゾーンの音色に似ています。ユルゲン・ワルターはかなり、シンフォニックなアプローチで基本的にコンサートピースの演奏をしています。これでバレエを踊ったらちょっと優雅さには欠けるでしょう。4曲目の情景でのヴァイオリン・ソロはやや危なっかしいものであまり色気はありませんし、今の水準からすると日本のオケの方が遥かに良い演奏をしています。「白鳥の湖」は情景のみ音源が見つかりました。
でも、当時はこういう演奏をむさぼるように聴いて、メロディラインを頭の中に叩き込んでいたんでしょうなぁ。このレコード、番号の末尾にAXというアルファベットが付いています。印刷レーベルでは原盤の表示が無いところを見ると一本買いしていたソースなんでしょうか。ちょっと元のレーベルは分りませんでした。