第71回院展 名古屋展 |

開催期間が短いので、休みの日に「第71回院展 名古屋展」へ出掛けて来ました。名古屋は札幌の6日に次いで9日間しか公開されないので休みの日があわないと見逃してしまいます。幸い天気が良かったので、自転車で出掛けることにしました。
院展はここ最近は毎年でかけています。まあ、日本画が好きということもありますけどね。ホームページで確認すると、今年から各地方展で公開される作品のリストが掲載されています。入選作は300を超えますから地方展ではその全容を公開されることはありませんからね。名古屋展では220作品の公開に留まっています。確認すると愛三岐の作品が大多数でした。パンフレットに印刷されているのは川瀬麿士氏の「梅樹」です。パンフレットに載るぐらいなのでさぞかし大作だろうと思ったのですが、意外や意外小さいのでびっくりしました。入り口そばに飾られています。

予習をしないで会場入りしました。それでもって自分の感性に合う作品だけをメモりました。川瀬氏の作品が小さいものだったので、同じ題材のこの作品が真っ先に目につきました。こちらは白梅で、月明かりの中に白梅の白がひときわ美しく輝楠型は幻想的ですらあります。

こちらも梅を描いた作品です。上の作品とは違いバックが黄色ということで、華やかさを感じます。日本人にとって梅は桜と共に春を代表する花で、最も好まれる花の一つで、飛鳥時代では、春の花といえばこの梅を指していました。春告草とも呼ばれていた万葉の時代では花は白梅花の事を詠んでいたのです。ここではさの白梅をメインに春らしい「ぐわい」と邪気払いの赤い「唐辛子」が 画面を惹き立てます。梅は菅原道真にも通じ、北野天満宮の梅園は有名です。そういえば、道真はこんな句を読んでいました。
東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ

万葉の世界といえば、こんな作品もありました。この作品には次の解説が書かれていました。
紫式部とは顔馴染み。私が道長卿の御前で伶人として楽奏し、テラ銭を頂戴して居た前世の折、彼女は情深さ故に、恋で失敗するタイプであり、かの陰陽師、安倍晴明公にぞっこん惚れて、都はずれのボロ屋敷に住む晴明様の元に通い婚であり、普通女性は待つ側でありましたが、逆ナンの彼女は清明公の摩訶不思議なる超能力に心底魅了されてしまっていたのです。晴明様に近づきたいというエネルギーと受けた感化によって源氏物語が生まれた事は確かです。そして、平成のこの御代にかつての友人であった私が、彼女をこうして顕彰して差し上げることが出来たのは、誠に幸いな事と言うべきでありましょう。
紫式部とは顔馴染み。私が道長卿の御前で伶人として楽奏し、テラ銭を頂戴して居た前世の折、彼女は情深さ故に、恋で失敗するタイプであり、かの陰陽師、安倍晴明公にぞっこん惚れて、都はずれのボロ屋敷に住む晴明様の元に通い婚であり、普通女性は待つ側でありましたが、逆ナンの彼女は清明公の摩訶不思議なる超能力に心底魅了されてしまっていたのです。晴明様に近づきたいというエネルギーと受けた感化によって源氏物語が生まれた事は確かです。そして、平成のこの御代にかつての友人であった私が、彼女をこうして顕彰して差し上げることが出来たのは、誠に幸いな事と言うべきでありましょう。

渚は波の打ちよせる所、波うちぎわのことですが、青い海と碧い空のを取り込むことで雄大なスケールの画面になっています。熊野灘の風景のようですが、黒く描かれた画面が太平洋の奥深さを感じさせてくれます。写真よりも実物の方が遥に引き寄せられます。

ここ最近奈良の風景を描き続けている田淵俊夫氏の作品です。今年は明日香村栢森(かやのもり)の光景が描かれています。栢森は飛鳥川の最上流に位置し、飛鳥時代には奈良から和歌山に抜ける交通の要衝として栄えた所です。現在では、時代に置き忘れられたような静かな佇まいの中にありますが、重厚な家並は歴史の重さを感じさせます。

こちらは不思議な感覚の作品で、夕方の彩りの時、三人の若い女性が小さく花開く線香花火を楽しんでいますが、着物を着ているというだけで鏑木清方や上村松園を思い出してしまいました。三者三様の着物ですが、白、藍、黒と色彩の変化が見事でその中で線香花火の儚さが生かされています。

水面に模様のように映る景色を描いた作品ですが、千鳥だけが実在性が強調され、影はうっすらとしか描かれていません。不思議です。

この作品のタイトルの「エリカ」はこの少女ではありません。背景に描き込まれている花の「エリカ」のことです。小粒の花をたわわに付けた花模様から「ジャノメエリカ」だと分りますが、そこに少女を配して人物の「エリカ」とダブらせています。暖色系の色合いで統一したのはさすがで、作者はこの少女に孫の姿を投影していますが、個人的には「エリカ」の語感から外国人の少女の方がイメージにあったのかなとも思います。

まあ、金魚を描けばこういうような作品になることは確かですが、以前出掛けた片岡鶴太郎の「還暦紅」展にも「遊魚」という作品があり、殆ど同じ構図だったのでびっくりしました。
以上は同人の作品でした。

ここからは入選作品で、モノトーンタッチの作品です。作品の前に立っていると引き込まれます。解説です。
この場所は伊勢神宮の古殿地です。私は伊勢さんが大好きです。朝、始発の新幹線を乗り継ぎこの地に降りると、日本人である事、今を生かされている事に、幸せと感謝を感じます。ご縁があり、前回のご遷宮の時に御白石持行事に両親と参加させて頂きました。白い装束に法被を付けて二日間だけ地元の旧領民にならせて頂きました。時が経ち御白石も割れたり苔で変化しましたが、又二十年後に新殿がこの地に建ちます。伊勢は再生の地であり、蘇りの地であります。私はその時を楽しみに待っています。
この場所は伊勢神宮の古殿地です。私は伊勢さんが大好きです。朝、始発の新幹線を乗り継ぎこの地に降りると、日本人である事、今を生かされている事に、幸せと感謝を感じます。ご縁があり、前回のご遷宮の時に御白石持行事に両親と参加させて頂きました。白い装束に法被を付けて二日間だけ地元の旧領民にならせて頂きました。時が経ち御白石も割れたり苔で変化しましたが、又二十年後に新殿がこの地に建ちます。伊勢は再生の地であり、蘇りの地であります。私はその時を楽しみに待っています。

こちらは初入選の作品です。同じくモノトーンの作品ですが、右端の横断歩道の信号だけが赤く書き込まれています。ショーウィンドー越しに見た風景で実在感が感じられない存在として人が描き込まれています。

初夏の千葉保田漁港から出た明けゆく海の上仕掛けた網を引く定置網漁船を描いています。人物をモノトーン調にして、銀箔の上に白を重ねた跳ね回る魚が活き活きと描き込まれています。背景の空に僅かなピンクが入り時間の変化が読取れます。
院展のホームページでは全作品が鑑賞出来ます。先ずは、会場に足を運び、実物をじっくり鑑賞してみては如何でしょうか。名古屋展は24日までです。
