ビルボード年間チャート60年の記録 1955▶2014 | geezenstacの森

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ビルボード年間チャート60年の記録 1955▶2014

著者 佐藤 直人(あめりかん☆ぱい)
発行 共同通信社

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 ビルボード誌でシングルチャート100位までの集計が始まった1955年から2014年までの60年間分の年間チャートを掲載(1955年のシングルチャートは30位まで、アルバムチャートは1956年以降掲載、アルバムトップ100の掲載は1963年以降) ---データベース---

 共同通信社という会社は不思議な会社です。本来は名前の通り、通信社です。でも、同じ共同通信社でも2つ存在するんですなぁ。大元は社団法人の共同通信社」、その子会社として株式会社共同通信社が存在するという訳です。つまり、社団法人共同通信社の100%出資による総合情報サービス会社なんですな。で、この本も発行は(株)共同通信社です。1960年代はFMの情報誌「FMfan」何かを発行していましたし、今ではテレビ情報誌「BSfan」(2008年からは「TVfan」)も発行しています。韓流ブームを作ったのもここが発行したムックが源流といわれています。そうそう、プロ野球公式記録集「オフィシャル・ベースボール・ガイド」もここから出版されています。

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 そういうメディア情報を得意としている中で、こういうムックを発売してくれたんですなぁ。記事はほとんどありません。ひたすら年度事のデータが記載されているだけで、10年スパンで剃り時代にどういうものが流行したかを短くまとめた文章が掲載されているだけです。でも、こういうデータベースって今までありそうで無かったんですよね。ねっとでも、「ヒット洋楽ランキング/ビルボード・データベース」というものがありますが、これはただ1位を取った曲目のランキングでセールスのランキングではないんですなぁ。ですから、過去の年間チャートが俯瞰出来るのはこの本だけということです。ちなみに共同通信社は1996年に先に紹介したFMfanの別冊という形で、「ミュージック・データ・ブック」というものを発売していましたが、内容的にはそれのビルボードのチャートだけに絞った形での発売というのがこの本の特徴でしょう。この本の売り文句には下記の言葉が並びます。

【本書の特徴】
★世界的な音楽チャート誌「ビルボード」の年間チャート60年分を集計
★過去の年間チャートが1冊になっているのは世界で唯一
★過去のビルボード誌の表紙を詰め込んだ本書の表紙は一見の価値あり!

【本書の内容】
★各年のシングル、アルバム年間トップ100をそれぞれ掲載
★過去に1位になった曲、アルバムを時系列に一挙掲載
★曲、アルバムとも、日本語タイトル、英語タイトルを併記
★昨年末に発表された各年代のトップ20曲を掲載
★チャートにまつわるマニアックなコラムも掲載

 この本は、アメリカでヒットした楽曲・アルバムの年間チャートをほぼ60年間にわたってまとめた、一冊の本としてはたぶん世界で唯一のもの。ビルボード誌でシングルチャート100位までの集計が始まった1955年から2014年までの60年間分の総合年間チャート(1955年のシングルチャートは30位まで、アルバムチャートは1956年以降、アルバムTOP100の掲載は1963年以降)がすべて収められています。あの時代、どんな曲が流行っていたのか、ページを開くだけで一目瞭然です。

 個人的に学生時代はクラシックと供に洋楽もしっかりと聴いていました。まあ、特定のアーティストにのめり込むということは無かったのは主にNHKの番組を聴いていたからでしょう。名物アナの石田豊さんの番組はロックだろうがイージーリスニングだろうが分け隔てなく紹介していました。それこそ、エルビス・プレスリー、ザ・ビートルズ、カーペンターズ、イーグルス、シカゴ、フィフスディメンション、アンディ・ウィリアムスなどなどリアルタイムにヒット曲を追いかけていました。そんなことで、一番聴いた1960年代後半から70年代にかけてはいゃあ、懐かしい懐かしい。

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 この本でうれしいのは日本語のタイトルがきちんと記載されていることです。なにせ当時は原タイトルよりも日本語タイトルで慣れ親しんでいましたからねぇ。例えば1970年のNo.1ヒット曲「明日に架ける橋」は「Bridge over Troubled Water」ではちょっとピンと来ませんもんね。そういう世代なんです。1970年代はまさにサイモンとガーファンクル旋風が吹き荒れた年でした。この年はこの「明日に架ける橋」がシングルとアルバムの両方でNo.1に輝きました。これはビルボード史上初の快挙だったのです。そして、この70年代からブラスロックが台頭して来ています。BS&Tやシカゴが顔を出して来ています。それにも増した驚くのが、サントラの存在です。7位に「イージー・ライダー」8位に「明日に向かって撃て」がランクインしています。ニューシネマが台頭して来ているのが伺えます。

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 そして、翌年の1971年のアルバムランキングはMORの台頭でしょうか。デビッド・キャシディなんて名前は今ではほとんど知る人はいないでしょうが、この頃はテレビで「パートリッジファミリー」というドラマが放映されていて、そのドラマの登場人物で組まれたユニットがそのままレコードを出して売れていたのです。6位と23位にランクインしています。この年はスリー・ドッグナイトとシカゴが売れていたことが分ります。スリー・ドッグナイトは12位に「ナチュラリー」、14位に「ゴールデン・ビスケッツ」が入り、シカゴなど10位に「シカゴ3」、15位に「シカゴの奇跡」、19位に「シカゴ2」と発売されたアルバムすべてが20位までに入っています。しかも、どれもが2枚組のアルバムですからねぇ。映画では「ある愛の詩」が登場していますが、「ジーザス・クライスト・スーパースター」が1位に輝いていたのにはびっくりします。今ではミュージカル作品として知られていますが、全編にわたって語りのセリフはなく、音楽と歌曲のみで物語が進行するオペラ型のロックミュージカルです。そして、最初歌曲作品として1969年にシングル『Superstar』が発表され、翌年には『Jesus Christ Superstar』と題した2枚組LPレコードがリリースされます。ジーザス役には当時人気絶頂だったロックバンド・ディープ・パープルのリードボーカル・イアン・ギランを、マグダラのマリア役にはエリック・クラプトンのバックアップボーカルとして活動を共にし実力と名声を築いてきたイヴォンヌ・エリマンを、そしてユダ役にはそれまでほとんど無名ながらも歌えて演じられる実力俳優としてマーリー・ヘッドを迎えて製作されたものです。そして、この、1971年ビルボード年間アルバム部門で1位となる大ヒットとなったんですなぁ。ブロードウェイミュージカルとしては1971年10月12日が初日で1973年6月30日まで全711公演行なわれています。ですから、最初はミュージカルとしてではなくロックオペラとしてヒットしたんです。

 この2年を振り返るだけでも、青春時代の音楽体験が走馬灯のように蘇って来ます。そして、日本のチャートは決してビルボードだけに引っ張られるのではなくヨーロッパのサンレモ音楽祭とかユーロビジョンとか幅広い音楽シーンのヒット曲の良いとこ取りをしていたことがこのチャートから伺い知れます。