
幕府の小役人が三人、いずれも篭手を落とされて斬殺された。同心の八尾半四郎から話を聞いた浅間三左衛門には、犯人の心当たりがあった。自分を兄・弓削琢馬の仇と狙う冬馬である。主君警護の立場上、朋輩だった琢馬を斬った自責の念から脱藩した三左衛門、その過去の縁に桜花が降りそそぐ。書き下ろし長編時代小説好評第7弾。---データベース---
ポジションは短編連作時代小説です。ひょんなことからこの本と出会い、シリーズ第7巻ということでしたがここから読み始めました。しかし、短編連作ですからどこから読んでも違和感が無いように書かれています。シリーズとしてのシュチュエーションは進んでいますが、登場人物は違和感無くそのポジションを確認出来ます。この巻には次のタイトルが収録されています。
・地獄で仏
・炭団坂
・鮫屋の女房
・仇だ桜
・炭団坂
・鮫屋の女房
・仇だ桜
主人公は、浅間三左衛門は富岡の小藩、七日市藩を脱藩した浪人です。こんな版があったのかと調べてみましたらちゃんと存在していました。今の群馬県の富岡市七日市です。1万石の小藩で、七日市藩の藩祖は、加賀藩祖の前田利家の5男の利孝でした。そんな関係で本家である加賀藩の財政的援助を受けてようやく存続するというような状況であったようです。史実はちゃんとふまえていて、時代考証もかなりしっかりしているのでそういう意味では安心して読むことが出来ます。なかなか読み応えがあり、このシリーズ14作まであるようですが、機会があったら前後に読み進めていこうと考えています。
基本パターンは浪人でありながら敵として狙われているという存在です。しかし、その設定は付け足しのようなもので、この巻でその敵と対峙することになりますが、最後の章の「仇だ桜」で結果的にはめでたし、めでたしで終わることになります。本来ならこの巻で一件落着な様な気がしますが、それは建前で、枝葉のストーリーの部分ではシリーズの「照れ降れ長屋風聞帖」という部分に関わる人情話が中心となっています。
ということで、登場人物の周辺には南町の同心の八尾半四郎、句会仲間の八尾半兵衛、夕月楼の主人の金兵衛、そして連合いの十分一屋(仲人稼業)のおまつというキャラクターが揃っています。それらにまつわる短編が絡んでなかなか骨太のストーリーが展開されます。時代考証がしっかりしていて、江戸の大火の折りの囚人の解き放ちとか、鮫皮職人や研ぎ師といった職業の登場など、江戸時代の風物がふんだんに取り込まれていて読んでいて新鮮です。